そもそも漢方薬とは?医師「西洋医学での新薬の成分は基本的に1種類。しかし漢方薬には3000種ほど含まれるものも…」

2025年4月18日(金)6時30分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

漢方薬に対して「飲んでみたが効かなかった」「エビデンスがないしあやしい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。しかし「漢方薬にはエビデンスが数多く存在し、漢方薬の効き方が一定でない背景には、腸内環境の乱れが深く関わっている可能性がある」と指摘するのは、サイエンス漢方処方研究会の理事長で医師の井齋偉矢先生。そこで今回は井齋先生の著書『漢方で腸から体を整える』から一部抜粋・再編集してお届けします。

* * * * * * *

漢方薬とはどういうクスリなのか


漢方薬について正しい知識を持っていただくために、漢方薬とはどういうクスリなのかという基本的なことからお話ししたいと思います。

漢方薬というのは、自然界に存在する植物・動物・鉱物などを原料とした「生薬」を組み合わせて作られたクスリです。

生薬にはそれぞれ異なる薬効があり、それらを組み合わせることで、さまざまな症状や体質に合わせた治療が可能となります。

西洋医学で一般的に使われている新薬は、基本的に1種類の成分で構成されているのに対し、漢方薬は2種類以上の生薬でできています。18種類の生薬で構成されているものもあります。

しかも、生薬の中にも複数の微量成分が存在することから、一つの漢方薬に含まれる成分は膨大な数に上ります。

「微量の多成分の集合体」であることが漢方薬の特徴


例えば「芍薬甘草湯」という漢方薬は、その名前が示すとおり、芍薬と甘草という二つの生薬で構成されています。たった二つの生薬にもかかわらず、その中には約3000種類の成分が含まれていることがわかっています。これを明らかにしたのは、英国オックスフォード大学のデニス・ノーブル名誉教授です。

ノーブル名誉教授は心筋電気生理学の世界的権威ですが、ある時期から西洋医学に限界を感じ、東洋医学の中でも特に日本の漢方薬に注目して、最新の技術を使って芍薬甘草湯の成分の数を算出したのです。

わずか二つの生薬で構成されている漢方薬の中に約3000種類もの微量成分が存在するということは、一般的な漢方薬に含まれる成分は最低でも数千種類、多いものでは1万種類をゆうに超えると考えられます。

実はこうした「微量の多成分」で構成されていることが、漢方薬の最大の特徴であり、漢方薬特有の効果を生み出す原動力となっています。

新薬・漢方薬を問わず、そもそも薬には……


漢方薬に含まれる一つひとつの成分はごく微量です。そのため、個々の成分には現代薬理学で言うところのクスリとしての作用はないと考えられます。

ところが、クスリとしての働きのない微量成分が、ひとたび数千種類、数万種類と集まって混ぜ合わさると、さまざまな病気や病態に対して大きな効果を発揮する。これが新薬とまったく異なる漢方薬ならではの特性です。


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

西洋医学的な思考から離れられない人にとっては納得しがたい話でしょう。薬に含まれているどの成分が、体の中でどのように作用するのかを明らかにするのが現代薬理学だからです。私も最初は不思議でなりませんでした。

しかし、患者さんの診療を長く続けるうちに、新薬・漢方薬を問わず、そもそも薬には病気を直接的に治す力などないのではないかと考えるようになりました。

薬が体を治すのではなく、体が薬に反応して「治す力」を起動する


その証拠に、どれほど優秀な新薬であれ、亡くなる前日に投与しても何の効果もありません。なぜなら、患者さんの体が薬に反応しなくなるためです。

当たり前のように思うかもしれませんが、これはつまり、体にもともと備わっている「生命力」が働かない限り、薬は無力だということを示しています。

そこで私は次のような考えに至りました。

「薬が体を治しているのではなく、体が薬に反応して治す力が引き出されるのだ」

そう考えると、すべてが腑に落ちます。

※本稿は、『漢方で腸から体を整える』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

「漢方薬」をもっと詳しく

「漢方薬」のニュース

「漢方薬」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ