漢方薬の効果が<ない><時間がかかる>と感じる人の意外な共通点とは?医師「疑うべきは薬効でなく、あなたの…」

2025年4月17日(木)6時30分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

漢方薬に対して「飲んでみたが効かなかった」「エビデンスがないしあやしい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。しかし「漢方薬にはエビデンスが数多く存在し、漢方薬の効き方が一定でない背景には、腸内環境の乱れが深く関わっている可能性がある」と指摘するのは、サイエンス漢方処方研究会の理事長で医師の井齋偉矢先生。そこで今回は井齋先生の著書『漢方で腸から体を整える』から一部抜粋・再編集してお届けします。

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クスリとしての性質


西洋医学で一般的に使われている新薬と漢方薬は、薬理学的な観点から見ると“クスリ”としての性質がまったく異なります。

新薬はいつでも(always)クスリです。例えば、高い血圧を下げる作用のある降圧薬は、患者さんの血圧が高くても低くても関係なしに、いつでも血圧を下げるように働きます。つまり、新薬は患者さんを選びません。体に入る前から薬効が決まったクスリなのです。

これに対して「漢方薬」の薬効はいつでも同じではありません(not always)。

例えば、こむら返りを起こしたときに使われる芍薬甘草湯は、こむら返りを起こしている人が服用したときには迅速に薬効を示します。激しい痛みがわずか5分でウソみたいに治まります。

ところが、こむら返りを起こしていない人が飲んでも何も起こりません。病気によって起こる体の変化に対し、ちょうどぴったりの病態を示した人が飲んだときだけ、決まった反応を体から引き出すのが漢方薬の特徴です。降圧薬のように体に入る前から決まった薬効を示すクスリではないのです。

漢方薬の効き方が一定でない背景


また、こむら返りに対する芍薬甘草湯の速効性は誰でも必ず実感できますが、例えば月経痛に対して芍薬甘草湯を頓服で使用したような場合は、効果を示す人(レスポンダー)と、効果を示さない人(ノンレスポンダー)がいます。

これは芍薬甘草湯に限ったことではなく、「ちょうどぴったりの病態を示した人」に処方しても、漢方薬は人によって効き目が異なったり、同じ人でも効くときと効かないときがあったりします。さらに、漢方薬の多くは速効性があるにもかかわらず、3か月、6か月経ってからやっと効果が出てくるケースもあります。

そのため、新薬(西洋薬)の“いつでもクスリ”に慣れている現代の人たちにとっては、「こんなあいまいな効き方をするのはクスリではない」「やっぱり漢方なんてダメだ」と思われがちです。

しかし実は、漢方薬の効き方が一定でない背景には、腸内環境の乱れが深く関わっている可能性が浮上しています。

「自分の腸を疑う」ための重要な目安


どういうことかと言いますと、漢方薬を構成している生薬のいくつかは、それぞれ特定の腸内細菌に分解されてから体内に吸収され、薬効を発揮します。したがって、腸内環境が乱れていると、漢方薬の本来の薬効が得られなかったり、薬効が得られるまでに時間がかかったりすることが考えられるのです。

ちなみに、芍薬甘草湯がこむら返りに対して“いつでもクスリ”なのは、多くの薬効成分が腸内細菌を介さずに直接吸収されるからだと推測されます。


(写真提供:Photo AC)

いずれにしても、漢方薬をうまく分解できないような腸内環境は、あらゆる病気を誘発する温床と言っても過言ではありません。腸は脳に匹敵する「人体の司令塔」とも言われるほど、私たちの体と心の健康、さらには思考法に至るまで、大きな影響を与える存在であることが、近年の研究で次々と明らかになっているからです。

ですから、漢方薬の効果が得られなかったり、効果が出るまでに時間がかかったりすることは、クスリとして否定すべきものではなく、むしろ「自分の腸を疑う」ための重要な目安となり得ます。そして、あきらめずに漢方薬を飲み続けていると、腸内環境が少しずつ回復することで薬効成分の吸収が高まり、遅れて効果が表れてくると考えられます。

漢方薬の腸活効果のしくみ


漢方薬の腸活効果のしくみは、まだ研究途上ではありますが、次のように推測されています。

漢方薬は腸内細菌に分解されたあと、その一部が腸内細菌のエサとなることが知られています。そのため、腸内の善玉菌を増やす「プレバイオティクス」として腸内環境の改善に貢献する可能性が十分にあります。加えて、漢方薬は腸管の機能を本来の状態に戻す反応を引き出す“クスリ”としての薬効も備えていることから、いわば二刀流の腸活作用により、その人にとって一番いい腸の状態に根本から戻していく力を発揮します。

しかも、新薬と違って漢方薬は、必要に応じて体の「治す力」を引き出すことから“効きすぎる”心配もなく、自分に合った漢方薬を見つけることができれば、長年悩み続けた腸の不調に終止符を打つことも可能です。それは結果的に、さまざまな病気の発症を未然に防ぐことにもつながるはずです。

※本稿は、『漢方で腸から体を整える』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

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