なぜ「活動実績ゼロ」で!? 早慶上智ICUの推薦入試に合格した学生の知られざる共通点
2025年5月26日(月)20時55分 All About
「活動実績がなければ総合型選抜は無理」そう考えていませんか? 実は、早慶上智ICUの推薦入試で、華々しい実績がなくても合格した学生は存在します。彼らは一体何が違ったのか? 合格を掴んだ学生たちの共通点を解説します。
推薦入試合格者57人への調査を実施した結果、驚くべき事実が判明しました。早慶上智ICUやMARCHに合格した学生の中には、活動実績が全くない人が数多く存在していたのです。
では、彼らはどのようにして難関大学の推薦入試を突破したのでしょうか。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(杉浦由美子 著)から一部抜粋し、ご紹介します。
活動実績ゼロでも早慶上智ICUに合格する!?
推薦入試に対して、身も蓋もないことをいいます。実は活動実績はなくても平気です。
推薦入試合格者57人をインタビューしましたが、活動実績ゼロの学生でも早慶上智ICUやMARCHに合格しています。
ある高校生はアメリカに1年間留学をし、帰国して総合型選抜で難関大学を受験しようとしたところ、推薦対策の老舗塾で「活動実績はいらないんですよ」といわれたそうです。
また、慶應や立教、成城などに合格した学生は高校の授業で探究学習をやったり、部活動に取り組んだりしていましたが、やはり、大手推薦塾の講師に「活動実績は志望理由と結びついてないと書けないよ」といわれ、どうしても結びつかないので、志望理由書に活動実績は一切書きませんでした。
慶應のSFCは活動実績を重要視するといわれますが、実際には「活動実績なし」で合格している学生もしばしばいます。
文献読解で差をつける! 「活動実績なし」合格者の共通点
「活動実績なし」で合格している学生の共通点は「文献を読みこんで志望理由書を書いている」という点です。『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』では、合格者が実際に提出した志望理由書(課題レポート)を掲載していますが、数多くの文献を読んで勉強をし、それをもとに書いていることが分かる点が評価されています。
この学生は「文章を読むのが得意」であり、論文に載っている実験の仕方も興味を持って読み込んでいったそうです。
文献を読解することが得意ならば、短期間で多くの情報が得られ、テーマを見つけ、それを調べて考察をすることができます。
ある学生は高校3年のときに『社会学入門』(筒井淳也、前田泰樹・有斐閣)を読んでいて、「女性が外に出て働くと出生率が下がる」という旨の記述に違和感を持ちました。
過去にフェミニストの研究者のエッセイで「最も子どもを産む職種は学校の女性教諭」と読んだことがあり、「激務である女性教諭がたくさん子どもを産むという事実と、女性の社会進出が少子化の原因というのは整合性がない。調べよう」と思い、「女性の社会進出が少子化の原因になっているという言説を検証していく」というテーマを見つけました。
ネットで論文を探したり、本を読んだりし、志望理由書を作っていき、第一志望の慶應義塾大学は不合格でしたが、第二志望の難関大学には合格しました。
この学生は文献を読むのが得意だったので、活動実績なしでも、総合型選抜には受かりましたが、皆がそれができるわけではありません。
プロの研究の世界を見ていても、大御所は文献やデータを読み論文を書きますが、若手研究者はフィールドワーク……リアルの場に出て行き調査をする手法でデータを集めて論文を書くケースも目立ちます。若手のうちは自分の足を使って、調査をした方が面白い論文が書けるからでしょう。
活動実績で合格しやすくなる本当の理由
中には被災所でボランティア活動をしたり、老人介護施設で介護をしたりして論文を書く研究者もいます。フィールドに出て、経験をし、自分の目で見て触って、話を聞けば自分の「情報」が増えていきます。
活動実績がある学生の方が、総合型選抜で合格しやすいのは、活動をしたことが評価されるのではなく、活動をしたことで情報を得ているからです。
総合型選抜を検討する高校生が集まるイベントを取材していても、話していて面白いのは課外活動をしている高校生でした。
「家庭で居場所がない子が子ども食堂に集まっているから、メンタルケアもしなきゃいけなくなっている」と話をし、具体的なエピソードも語っている高校生がいて、「そういう情報をどこで得たのか」と尋ねると「学童ボランティアをしていて、そこで聞いた」といいます。
学童ボランティアを通して、大人と交流し、学童の外の情報も得ていくわけです。
また、ある高校生はバスケ部の試合で、名門私立校の顧問が部員を過剰に厳しく叱責しているのを目撃しました。
「偏差値も高くて、雲の上の名門校なので驚いた」とのこと。自分が見たことを帰り道に顧問に話すと、「名門校は学校の立場が強いから、そういうことをしても許されると思っている先生がいるんだ」と説明してくれたとのこと。
この経験により「恵まれているように見える名門校の生徒たちは、実は自分たちより大変なんじゃないか」と感じたそうです。
これらの経験を通して得た情報をもとに、志望理由のテーマを作ることもできますよね。
外に出て活動をするといろんな情報が入ってきます。それが視野を広め、情報を増やしていきます。
杉浦 由美子 プロフィール
受験ジャーナリスト ノンフィクションライター2005年に朝日新聞社でライター活動を始める。月刊誌や週刊誌で記事を書き、『女子校力』(PHP新書)のヒットをきっかけに教育関係を中心に取材と執筆をするようになる。現在は数多くのWEBニュースサイトで連載をし、週刊誌や月刊誌にも寄稿している。最新刊に『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)。(文:杉浦 由美子)