偏差値50と偏差値60の高校の「評定4.0は同じ」説はウソ! 推薦入試の知られざる“格差”

2025年5月27日(火)21時50分 All About

推薦入試でよく耳にするのが、「評定平均値4.0なら、どこの高校出身でも同じ評価をもらえる」という話。でも、本当にそうなのでしょうか? 本記事では、大学入試における評定平均値の「知られざる実態」に迫ります。

「推薦入試では、高校の偏差値が低くても評定平均値が4.0あれば有利になる」——。そうした発信をしている塾もありますが、大学側は本当に全ての高校の「4.0」を同じように見ているのでしょうか?
『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(杉浦由美子 著)から一部抜粋し、偏差値50の高校と偏差値60の高校の評定平均値を大学側がどう評価しているのか、その「知られざる実態」を明らかにします。

偏差値50の高校の評定4.0と偏差値60の高校の評定4.0は同じなのか

中小や新興の塾がやっているYouTube番組を見ていると、よくこういう内容を話しています。
「評定平均値の扱いは高校の偏差値は関係ありません。偏差値60の高校の評定4.0と偏差値45の高校の評定4.0は同じと扱います」
なぜ、こう話すかというと彼らは情報を持っていないからと推測できます。
一方、ビックデータを保有しているだろう大手推薦塾、ルークス志塾の公式サイトにはこう書かれます。
「一般的には偏差値の高い高校の方が高い評定平均値を取得するのが難しいといえるため、こうした差異が生まれるのも致し方ないと言えます」
つまり、入学難易度の高い高校と中堅高校の評定は違うものと評価するというわけです。
私が取材しても、ルークス志塾がおっしゃる通りです。大学側は高校によって評定平均値の評価を変えている場合も多いです。

評定平均値が「日本一厳しい」高校の優遇事例

たとえば、ある最難関私立大学の総合型選抜でのこと。
その入試は基本的に評定平均値が相当高くないと合格しないのですが、偏差値70超えの高校の生徒だと、評定平均値が4.0未満で志望理由書は特別に優れていなくても合格するケースがしばしばあります。
なぜ、そうなるのでしょう。
最難関私立大学の総合型選抜であきらかに優遇されている高校があります。どうしてなのかなと思って調べていくと、その理由は「評定平均値が日本一厳しくつけられる」と評判でした。
同偏差値帯のほかの高校に比べても、特別に評定平均値がとりにくいのです。
個別指導塾の講師がその高校の生徒たちを指導していた感想をこう話します。
「定期テストも頑張って、提出物も真面目に出していても、4.0がなかなかとれないですよ。特に英語が地獄ですね、東京大学や医学部を狙うような同級生が多いから平均点がびっくりするくらい高いです。定期テストの問題も本当に高度な内容で、見たことのない単語も多くて、高校生にあんな問題を解かせるのはちょっと驚きますね」
そんな厳しい難関高校で評定平均値3.9や3.8ならば、一般選抜でも合格する学力があるはずです。
大学側もそういった事情を知っているので、「評定平均値を厳しくつけている難関高校」の生徒は評定が少し低めでもちゃんと評価をします。

大学が持つ「高校ごとの評定データベース」

つまり、大学は「この高校でこの評定平均値なら学力はこのくらい」というデータを持っています。
もちろん、全国の高校すべてのデータは持っていませんが、お得意さまの高校、つまり、推薦でたくさん受験してくる高校の評定平均値の価値は把握できるので、それを合否を決める段階で利用する場合があります。
お得意さまの難関高校の生徒が受験をすると、「この子は志望理由書が微妙だけどこの高校でこの評定平均値なら一般選抜で受かる学力だし悪くないか」というふうに評価して、合格させることがあるわけです。
実際、ある難関大学の教授はこう話します。
「評定平均値のつけ方がいい加減になっていて頭を抱えているけれど、A高校やB高校、C高校はしっかりとつけているよ」
A高校やB高校、C高校も伝統ある名門の難関私立高校で、中学受験や高校受験の偏差値も高く、都内の学力上位層が入学してくる学校です。
このように、どの高校も評定平均値は同じ扱いということはありません。

杉浦 由美子 プロフィール

受験ジャーナリスト ノンフィクションライター2005年に朝日新聞社でライター活動を始める。月刊誌や週刊誌で記事を書き、『女子校力』(PHP新書)のヒットをきっかけに教育関係を中心に取材と執筆をするようになる。現在は数多くのWEBニュースサイトで連載をし、週刊誌や月刊誌にも寄稿している。最新刊に『大学受験 活動実績はゼロでいい 推薦入試の合格法』(青春出版社)。
(文:杉浦 由美子)

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