産婦人科医・高尾美穂が、毎日<空を眺めること>を習慣にするワケ。「空一つを取ってみても、何通りもの考え方をすることができる。つまり…」
2025年5月28日(水)6時30分 婦人公論.jp
(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
人間関係や生き方・働き方などに、悩みや不安を抱えて生きている人は多いことでしょう。産婦人科医の高尾美穂さんは、長年さまざまな患者の心と体に向き合ってきた経験から、「ひとりひとりが自分の人生をよりよく生きられるヒント」をアドバイスしています。今回は、そんな高尾さんの著書『人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉』から一部を抜粋しお届けします。
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移り変わる空を眺めながら思うこと
私は空を眺めるのが好きです。あるとき、なぜ空を眺めるのが好きなのかと考えてみました。
昼の空と夜の空、どちらが好きかというと、夜の空のほうが好きです。夜の空といえば月ですが、月は毎日見え方が変わります。14日くらいのサイクルで新月から満月へ、そしてまた満月から新月へと変わっていきますよね。月の形も、太くなったり細くなったりして、少しずつ変わっていく。この様子が楽しいのです。
天気によっては雲に隠れて見えない日もありますから、たとえば3日見られないと、久しぶりに見る月はずいぶん変わっている。細かったのがラグビーボールぐらいになっていたりするのです。星も移り変わっていきます。夏の大三角や冬のオリオン座など、季節によって見える星が違います。
こう考えてみると、私は夜の空が「移り変わっていくものだから」好きなんだという理由にたどり着きました。
雲がある空のほうが好き
もちろん、昼間の空も好きです。
私はどんな空が好きなんだろう、と考えて気づいたのは、真っ青な雲一つない空よりも、雲がある空のほうが好きだということ。
『人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉』(著:高尾美穂/扶桑社)
台風の通り過ぎた後や、雨上がりの空は、雲の流れが速く、空模様がどんどん移り変わっていく。そしてその雲によって太陽の見え方も変わる。そんな様子を眺めているのが、すごく好きです。
もちろん太陽が見えない曇天の日もありますよね。そんな日のグレーの空も好きなんです。グレーの空の上にさらにグレーの雲がかかっている、濃淡で表された風景は、いわば水墨画の世界。これも楽しいですね。
私自身の人生にも同じことがいえる
私は「移り変わっていく」ことに興味をもち、空を眺めている。そう考えたときに、私自身の人生にも同じことがいえるのではないか、という思いにたどり着きました。
どういうことかといいますと、私が携わっている医師という仕事は、来られた方にアドバイスをして、その方がよい方向へと変わっていくのを眺めていられる仕事なんです。
こういった仕事は、医師以外にもあると思います。たとえば、運動指導者のみなさんや栄養士さん、学校の先生たち。どのような分野で関わるかによってそれぞれ役割は違いますが、どの仕事も、目の前にいる誰かがよい方向に変わっていくのを眺めていられる仕事です。やりがいを直接的に感じられるありがたい仕事だと、私はいつも思っています。
そして、その方がよく変わっていくために、自分になにができるのかといつも考えます。私たちの仕事は、その方の生活や人生に、よい影響を及ぼすこともできれば、悪い影響を及ぼす可能性もあります。それならば、やはり目の前におられる方の人生をよくすることに貢献したい。
もちろん、私にできることは提案であり、その方ご自身が自分の心で決めてそれを続けることによって、自分の力で自分を変えていきます。医師は、その変化をそばで眺めていられる仕事。幸せな仕事だと思っています。
物事はすべてとらえ方次第
また、空を眺めていると、物事は多面的にとらえることができると気づかされます。雲は水蒸気がまとまった状態で水からできており、これが見えていない状態が晴天の空、見えている状態が曇天です。さらに天気が崩れると、そこから雨粒が落ちてきます。
つまり空というのは、バックは青い空で、その手前にいつも水蒸気などの水分がある状態。私たちが快晴だと思っている空も、曇天のグレーの空も、どちらも自分と空の間には水分が存在していて、それが見えているか、見えてないかだけの違いだということに気がつきます。
青空をありがたいと考えることもできますし、曇天のグレーの空であっても、その向こうには青い空が広がっているはずと考えることもできます。そして、このグレーの部分は、いつもの青い空には見えていなかった水分が見えているだけだ、というとらえ方もできると思います。
空一つを取ってみても、何通りもの考え方をすることができます。これは、私たちの社会でも同じことがいえるのではないでしょうか。
つまり、物事はすべてとらえ方次第、というわけです。見えている側面だけでなく、見えていない側面に思いを向けてみることで、物事を多面的にとらえることができる。そんなことに気づかされるのも、空を眺めるのが好きな理由かもしれません。
私は空を、毎日毎日、一日の中で少なくとも5分や10分、もしかしたら20分くらいは眺めています。みなさんも、空を眺めてみませんか。
調子がよいとき、幸せなときにはなんとも感じない空も、つらいとき、泣きたいときには心を温めてくれる、心を洗い流してくれる、そんな空だったりするものです。みなさんの好きな空はどんな空ですか。
※本稿は、『人生たいていのことはどうにかなる あなたをご機嫌にする78の言葉』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
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