藤野地域通貨「よろづ屋」事務局・池辺潤一さんの「買い方」

2023年9月27日(水)16時0分 ソトコト

買い方の3つのPOINT


円は消費者の立場で使うことが多いが、「萬」は消費者であると同時に、生産者としても使うことができる。
消費すると通帳にマイナスがつくが、それは誰かの価値を発掘する行為。生かし、生かされるのが大きな特徴。
登録するときに「give you」と「give me」を表明することで、地域の人とのコミュニケーションが始まる。


「give you」と「give me」で、つながりを生む地域通貨。


神奈川県相模原市緑区の藤野地域通貨「よろづ屋」がスタートして、14年が経ちました。約400世帯、メンバーがやり取りを行うメーリングリストには約700人が登録しています。長く続いている理由は、登録希望者は説明会に出席し、「よろづ屋」が扱う「萬」と法定通貨の円との違いを納得したうえで登録されているからだと思います。円は競争原理のなかで便利な暮らしをつくってきた半面、持つ人と持たない人の格差を生んでいるのも事実です。一方、「よろづ屋」が目指すのは「共生原理」。たとえば、メーリングリストに登録するとき、「give you(あなたにしてあげられること)」と「give me(私が必要としていること)」を表明します。すると、「では、500萬で手伝ってもらえますか?」や、「私できますよ。2000萬でいかが?」といった返事が届いたりするように、「萬」という独自の通貨のやり取りをしながら、地域でのつながりを生む手段でもあるのです


「give you」で提供することは、自分が「生産者」になるということ。植物に詳しい人が旅行中の家の花壇を世話することも、ある種の「生産」と考えられます。一方、「中古のベビー用品が欲しい」「イベントを手伝ってほしい」など、「give me」は「消費」です。「よろづ屋」の仕組みは、消費者であると同時に、自分が今できること(強み)を提供する生産者にもなれるのが特徴です。自分の強みが誰かの役に立てるのです。


なかには消費だけをされる方もおられます。「萬」のやりとりに必要な各自の持つ通帳には「−300萬」とマイナスの数字が記されますが、まったく問題ありません。なぜなら、誰かが消費するということは、誰かが生産しているということ。地域の眠っている人的資源が発掘され、その人の価値が生かされるのですから、地域にとって素晴らしいこと。大いに消費し、マイナスになってほしいです。顔が見える買い物とはこういうことだと考えますので。


かく言う私は買い物が不得意で、靴一足でも熟考し、納得しないと買えません。サスティナブルでエシカル。自分好みのデザイン。そして価格。この3つが購入の基準で、エシカルかどうかは調べてもわからない場合が多く、なかなかクリアできないのです。


ただ、それは大事なこと。地域の子どもも「よろづ屋」を使いますが、相手の顔が見える形でやり取りするので、商品の背景が一目瞭然。そんな、これからの買い物の仕方を身につけてほしいです。





text by Kentaro Matsui illustrations by Yuka Hashimoto


記事は雑誌ソトコト2023年8月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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