天気でも、趣味でも、仕事の話でもない…仕事ができる一流が「最初の10分」に話す"人に好かれる"雑談の中身
2025年3月14日(金)8時15分 プレジデント社
※本稿は、岡田庄生『博報堂のすごい雑談』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/arto_canon
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/arto_canon
■打ち合わせは「雑談」から始める
博報堂には、名刺交換や電話のかけ方などの基礎的なビジネスマナーを学ぶ新入社員向けの研修があります。その研修の最後に、ビジネスマナーに関するクイズがあります。「会議には遅刻してもかまわない」「SNSで業務の話題をつぶやいてもよい」といった項目に対して「○」か「×」をつける簡単な内容です。
その中に、「打ち合わせの最初は雑談から始めたほうがよい」という項目があります。この項目に対して、新入社員の多くが自信満々に「×」をつけますが、正解は「○」です。本書でお話しした議論やアイデアを拡散するための雑談は、おもに「打ち合わせ中盤」の場面で行われます。
それ以外に、もうひとつ私たちが大切にしているのが、社外の商談や社内の打ち合わせの冒頭10分で行う雑談です。一般的に、打ち合わせ冒頭の雑談は「いきなり本題に入らずに、ひとまず雑談をすることで場を温める」という、いわゆるウォーミングアップ的な意味合いで行うことが多いと思います。
もちろん、私たちの雑談にもウォーミングアップの意味合いはありますが、それ以上に重視していることがあります。それが、打ち合わせに参加している人たちの「自己開示」です。
■相手の本音を引き出す
「自己開示」について、博報堂の社員は「パンツを脱ぐ」という言い方をよくします。
自己開示とは、自分の考えや意見、価値観などを相手に正直に伝えることを指します。なぜ、打ち合わせ冒頭で雑談を通して「自己開示」する必要があるかというと、それは、「本音で話せるコミュニケーション」をつくるためです。
「新人の自分がこんなことを言ったら、怒られるかもしれない……」
「自分の意見は見当違いで、恥をかくかもしれない……」
このように、多くの人が本音にフタをしがちです。本書でお話しした通り、私たちは議論やアイデアを拡散させることを大切にしています。議論やアイデアの拡散には、自由な発想が欠かせません。そのため、打ち合わせに参加している人全員が、「建前」の態度や意見ではない、本音のコミュニケーションをする必要があるのです。
打ち合わせの場を含め、博報堂の職場は、「友人同士の集まり」のような雰囲気と、社外の人によく言われます。もちろん、社員全員が本当に「友人」というわけではありません。「友人同士」のような雰囲気は、お互いに「自己開示」をして、本音で話せるコミュニケーションを心がけている結果として、生まれているのです。
近年、オンラインの打ち合わせや商談が増えています。オンラインは、対面に比べると場の空気がつかみにくいので、雑談がしづらいという意見もあります。ただ、それでも博報堂の社員に聞いてみると、オンラインであってもできるだけ冒頭に雑談をするようにしている、という人が多いようです。私自身も、冒頭の雑談は良い仕事をするためには欠かせないもの、と考えているので、オンラインでも変わらずに行うようにしています。
■「立場」「役割」は捨てたほうがいい
自己開示の他に、もうひとつ「本音のコミュニケーション」に欠かせないことがあります。それは、自分の立場や役割を捨てることです。
社内の打ち合わせの場合、ベテラン社員は話すことに対する「緊張感」はなくなりますが、その分、「立場や役割」ができます。そのような立場や役割を冒頭の雑談を通じて捨て去ることで、本音のコミュニケーションがしやすくなるのです。
「マーケティングの立場から言うと……」
「マネージャーの立場から言わせてもらうと……」
このように、自分の立場や役割を踏まえた意見というのは、「べき論」になりがちです。 「○○としてはこうあるべきで……」と言った時点で、自由な発想とはかけ離れてしまうのです。また、若手の社員からすると、「マネージャーの立場から言わせてもらうと……」という発言に対して、異なる意見は言いにくくなってしまうでしょう。
そのため、打ち合わせの場では、自分が置かれている立場や役割から離れて、「ひとりの生活者」として「僕はこう思う」「私はこう思う」と、「僕」「私」を主語にして意見を言うことを私たちはとても大切にしています。
一般的に、ビジネスの場で発言するときは、データなどの根拠をもとにすることが求められると思います。「こう思う」という発言は「キミの個人的な感想はどうでもいい!」と怒られてしまいそうですが、博報堂では、いち生活者としての立場からの「こう思う」という「主観」は、むしろ大切にされています。
写真=iStock.com/maroke
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■お互いに“心の内”を出し合う
打ち合わせ冒頭の雑談で、自分の立場や役割を捨てる方法として、人材開発部門所属のある男性社員は「チェックイン」をしていると言います。
チェックインとは、打ち合わせの本題に入る前に、「自分の今の心の状態」を次のようなイメージで「ひと言」で伝え合うことです。
「土曜日にやろうと思っていた仕事が残ってしまい、気分的に重たい月曜日を迎えています」
「今朝、自分のデスクにたくさんの書類があって、緊張感がマックスです」
このように、役割や立場から離れてお互いに心の内を出し合うため、「安心して何でも話せる雰囲気」をつくることができます。私たちの社内の打ち合わせには、「営業」「プロデューサー」「デザイナー」といったそれぞれの立場や役割を持った人が参加します。長くその商品に関わっていれば、様々な知識を持っている社員も少なくありません。
ですが、立場や知識にとらわれていると、生活者の本音を探ることができません。「人の心を動かすアイデア」を見つけるためには、いったん立場を忘れ、「ひとりの生活者の自分」に戻る必要があります。打ち合わせの冒頭の雑談を通じて、「ああでもない、こうでもない」と会話のやりとりをすることで、「僕はこう思う」「私はこう思う」と、生活者としての視点を手に入れることができるようになるのです。
■「天気」では自己開示につながらない
「今週末は、ずっと雨の予報ですね」
「今年の冬は、例年よりも暖かいですね」
このように、打ち合わせ冒頭の雑談で天気について話す人がよくいます。けっして、天気について話すこと自体が悪いわけではありません。ただ、天気のような「当たり障りのない話題」だと、自己開示につなげるのは難しくなります。
前述の通り、「自己開示」とは、自分の考えや意見、価値観などを相手に正直に伝えることです。したがって、冒頭の雑談で取り上げる話題は、自分の意見や考え、人となりを相手に伝えることができる内容にすることが大切です。
「自己開示」につながる話題の中で取り上げやすいのは、やはり趣味についてでしょう。趣味には、その人の好き嫌いや価値観、ライフスタイルなどが表れます。ただ、中には趣味がないという人もいます。そこでオススメなのが、相手に「最近、ハマっているもの」を聞くことです。一見、「趣味」と「最近、ハマっているもの」は同じことのように思えますが、けっこう違います。
■「趣味」より「ハマっているもの」がいいワケ
趣味を聞かれたら、ある程度、長期間にわたって行っていることの中から答えを選ぶ人が多いと思います。たとえば、映画鑑賞やサイクリング、読書、フットサルや草野球などのスポーツ、釣り、旅行などです。
一方、「最近、ハマっているものは?」と聞かれれば、「最近」なので、ここ1~2週間くらいで行っていることも含められるので答えの幅が広がるうえに、個人的には具体的な内容で答えてくれる人が多くなるように思います。
たとえば、「趣味」だと「海外旅行に行くことです」と答えるところを「最近、ハマっているもの」については「1泊2日の弾丸旅行で韓国に行くことです」などと答えてくれるのです。具体的な内容のほうが、その場は断然盛り上がりやすくなります。
写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat
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また、ハマっているものを話すことでポジティブな感情になるので、その後に続く打ち合わせや商談も、前向きで明るい雰囲気になるという効果もあります。
■「休暇の予定」や「最近初めてやったこと」もいい
雑談で取り上げる話題について、1つ気をつけたいことがあります。それは、「全員が話せそうな身近な話題」にすることです。参加者が複数の打ち合わせや商談の場合、雑談で特定の人たちだけが盛り上がってしまうことがよくあります。冒頭の雑談で重要なのは、「全員が、公平に、発言できるようにすること」です。
積極的な人は、放っておいても発言してくれるので問題ありませんが、ケアすべきは引っ込み思案な性格の人や若手の社員です。
「こんなことを言うと水を差すかな」などと気を回しすぎて、結局、ひと言も発せずにいる人がよくいます。そこで、全員がひと言ずつ発言できるようなお題を考えて、ひとりずつ振るというのもひとつの方法です。
お題としては、たとえば、前項の「最近、ハマっているもの」以外にも、夏季休暇の予定や、最近ふるさと納税で買って良かった商品、「最近初めてやってみたこと」などが挙げられるでしょう。
「最初の発言」のタイミングが後ろになればなるほど、発言をすることへのハードルがどんどんと上がってしまいます。打ち合わせ中にまったく発言をしない人がひとりでもいると、場の空気が重くなってしまいます。冒頭の雑談は、盛り上がることも大事ですが、全員が必ずひと言でも発言するようにすることがとても重要なのです。
写真=iStock.com/koumaru
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■人から聞いた話より「自分の体験談」
朝刊や朝のTV番組で取り上げられていたニュースについて話をする人がよくいます。しかし、「具体的な言葉」や「具体的なエピソード」を交えた雑談のほうが、話は断然広がりやすくなります。そのため、「〜らしいですよ」「〜とニュースで聞きました」という「人から聞いた話」よりも、「自分の体験談」を話すほうがオススメです。
初めて行った、初めて食べた、などの「初めて~を体験した」というエピソードは、聞く側も新たな気づきや視点を得やすいので盛り上がります。基本的には、仕事よりもプライベートの話題のほうがよいのですが、ただ、新入社員やキャリアが浅い若い社員の場合は、日常業務に関連した体験談を話すのも、ベテラン社員からすれば興味深いエピソードになるので、オススメです。
博報堂では、やはり新商品や新サービス、流行のものの体験談を話す人が多いように思います。実際、そういったエピソードにはみんな食いつきます。
ただ、その場合も、商品やサービスのコスト構造や業界のウラ話などの「つくり手側」の視点で話すのではなく、あくまで「ユーザー側」の視点に立って体験談を話すようにすることが大切です。
■「ちょっとした失敗談」は共感を得やすい
「くだらね〜」
「バカだな〜」
岡田庄生『博報堂のすごい雑談』(SBクリエイティブ)
雑談をしているとき、このように言いながら、私たちはよくゲラゲラと笑います。博報堂の社員にとって、「くだらね〜」も「バカだな〜」も、最高の褒め言葉です。なぜかと言うと、「真面目くさっていては、想定外のアイデアは出ない」と考えているからです。
「真面目」なのはいい。けれど、「真面目くさる」のはダメということです。「真面目に考えすぎる」と、思考が固まり、発想が縮こまってしまいます。
私たちの打ち合わせに笑いが多いのは、「真面目くさる」のを防ぐためなのです。冒頭の雑談でも、「スゴイ成功体験」を真面目に語るよりも、「ちょっとした失敗談」を披露するのがオススメです。成功体験よりも失敗談のほうが共感を得やすいですし、親近感を持ってもらいやすくなります。
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岡田 庄生(おかだ・しょうお)
博報堂ブランドコンサルティング局部長
1981年東京都生まれ。国際基督教大学卒業後、2004年株式会社博報堂入社。コーポレート・コミュニケーション局、ブランド・イノベーションデザイン局を経て、企業のブランド戦略・マーケティング戦略の立案を支援するブランドコンサルティング局に所属。著書に『買わせる発想 相手の心を動かす3つの習慣』(講談社)、『博報堂のすごい打ち合わせ』(SBクリエイティブ)、『プロが教えるアイデア練習帳』(日経文庫:日本経済新聞出版社)、『ユーザー発案者効果』(碩学舎)など。武蔵野大学客員教授。法政大学イノベーション・マネジメント研究センター客員研究員。日本マーケティング学会常任理事。
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(博報堂ブランドコンサルティング局部長 岡田 庄生)
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