「SDGs」へ表面的に取り組む日本、「サーキュラーエコノミー」へ抜本的な改革を進める欧州、日本に残された可能性とは?
2025年3月15日(土)6時0分 ダイヤモンドオンライン
Photo:Andriy Onufriyenko / iStock / Getty Images Plus
2015年12月に欧州委員会は「循環経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」を発表。「サーキュラーエコノミー(循環経済)」を新しい経済成長戦略として位置づけた。
循環経済とは、「生産段階から再利用などを視野に入れて設計し、新しい資源の使用や消費をできるだけ抑えるなど、あらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、サービスや製品に最大限の付加価値をつけていくシステム」(経済産業省資源エネルギー庁)をいう。こうした欧州の動きを踏まえて日本でも2020年5月に「循環経済ビジョン2020」を発表。「環境活動としての3R(リデュース、リユース、リサイクル)」から、「経済活動としての循環経済」への転換をはかるのが大きな特徴であり、これによって持続可能な社会をつくるとともに、経済的にも成長していくことをめざしていく。
国内外の循環経済の事例と実践の調査を続けるCircular Initiatives&Partners(株)代表の安居昭博氏は、循環経済のカギは「仕組みづくり」にあると断言する。また「自然界の循環が生命の多様性をもとに成り立っていることを鑑みると、人間社会における新しい仕組みづくりでも重要になるのは、ビジネスモデルや個人の生き方の多様性、そして社会全体の『共創』関係である言える」とも述べている。
これらを詳しく解説する安居氏の著書『サーキュラーエコノミー実践』から、循環経済の基礎を5回に分けて紹介する。第4回は、欧州のサーキュラーエコノミー政策に日本企業が適合せざるを得ない理由などを解説する。「サーキュラーエコノミー」へ抜本的な改革を進める欧州に対して、「SDGs」へ表面的に取り組む日本に残された可能性とは?
EUのサーキュラーエコノミー政策に日本企業が適合せざるを得ない理由
日本貿易振興機構(JETRO)が2016年にまとめた「EUのサーキュラー・エコノミーに関する調査報告書」では、次の見解が示されている(※)。※日本貿易振興機構(ジェトロ) 貿易制度課「EUのサーキュラー・エコノミーに関する調査報告書(2016)(最終閲覧2021/5/28)
安居昭博(やすい・あきひろ)1988年生まれ。Circular Initiatives&Partners 株式会社代表取締役。京都市委嘱 成長戦略推進アドバイザー。ドイツ・キール大学「Sustainability, Society and the Environment」修士課程卒業。2021年、日本各地でのサーキュラーエコノミー実践と理論の普及が高く評価され、「青年版国民栄誉賞(TOYP2021)」にて「内閣総理大臣奨励賞(グランプリ)」受賞。建築・食・ファッション・テクノロジー・イベント業界等、幅広い分野の企業にアドバイザーや企画プロデューサーとして関わる。著書に「サーキュラーエコノミー実践 オランダに探るビジネスモデル(学芸出版社)」。
「もはや『従来型のビジネス』は選択肢ではなく、産業界は積極的にサーキュラー・エコノミーに取り組まなければならないことは明らかである。(中略)企業がサーキュラー・エコノミーの採用に後れを取れば、最大の循環型のビジネスチャンスは他社に奪われ、徐々に姿を消すか、規制に適合せざるを得なくなるだろう」。
日本の貿易相手国・地域を輸出入総額順に並べると、上位には中国(21・6%)、ASEAN(15・0%)、アメリカ(14・9%)そして、EU(11・5%)が続いており(※)、EUは日本にとって重要な貿易相手であることが分かる。※財務省貿易統計「貿易相手国上位10カ国の推移(輸出入総額:年ベース)」(最終閲覧2021/5/28)
そのため、EUで実施されるサーキュラーエコノミー関連の新しい規制に対して、日本企業は適合せざるを得ない状況にあり、これは、アメリカや中国、インドも同じだ。
欧州委員会の決定を受けてこれらの国々では既に対応が進められ、サーキュラーエコノミー型社会への移行が行われている(※)。廃棄を出さずに資源を循環し続ける仕組みづくりは、もはや世界規模で進められているのだ。※【アメリカ】The U.S. Chamber of Commerce Foundation “Sustainability and Circular Economy”【中国】China Association of Circular Economy “14th Five-Year Plan for Development Plan on Urban and Rural Domestic Waste Classification and Treatment Facilities has been released”【インド】European Commission “EU and India partner for resource efficiency and circular economy”(いずれも最終閲覧2021/5/28)
EU加盟国と日本を比較してみると、国際的な外交関係や社会状況の多くの点で類似があり、お互いに学び合える好対象にあることが分かる。
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