三度の婚姻期間は72→55→14日…芸能史上"最速離婚"の朝ドラ女優が告白「あれは婚活アプリ依存の"自傷行為"」
2024年6月16日(日)10時16分 プレジデント社
写真=事務所提供
遠野なぎこさん - 写真=事務所提供
■略奪婚した再々婚の相手を追って自死した母
「食べたら吐けばいい。そうすれば太らない」
母親から悪魔のささやきのようなアドバイスを受け、それをそのまま実行して以来、摂食障害に苦しんでいる女優の遠野なぎこさん(44)。
幼い頃から母にひどい虐待を受け、さらには前述のような母からのすすめで摂食障害に陥り、現在まで過食、拒食、過食嘔吐を繰り替えしている。
それとリンクするように、強迫性障害(強い不安やこだわりによって日常に支障をきたす病)、醜形恐怖症(実際には存在しない外見上の欠点や些細な欠点にとらわれ、多大な苦痛が生じたりする病)、鬱病、アルコール依存症、男性依存症も引き起こしていた。
これらすべては母から受けた虐待に起因していると考えられる。
「実の母親に虐待をされて愛してもらえない、そのうえ『お前は醜い』と言われ続けて育っているので、自分に全く自信が持てません。自己肯定感が異常に低いんです。さらには他者を心の底から信用できないし甘えられない。だから人と良好で継続的な信頼関係を結ぶのが難しく、恋人や配偶者とも関係が長続きしないんです」と遠野さんは自身を分析する。寂しさや空虚さを埋めるように、アルコールや不特定多数の男性に依存をしてしまうのだ。
一方、仕事は女優業に加え、2010年ごろからテレビのバラエティ番組で新たな活路を見出し、順調だった。プライベートで疲弊していようとも、オファーを受けた仕事は責任をもってきっちりこなしていた。
特にバラエティでは、望まれる以上に過激な発言をして爪痕を残したので、出演依頼がどんどん舞い込んだ。さらには理解のある医師とも巡り会うことができ、病は完治せずとも心身の調子はそれなりに安定していた。
同じような病に苦しむ人々の心の支えになろうと、電話相談を行ったり、メールで悩み相談を受けつけていたりした。
数々の病の原因となった母は、3度目の結婚をした。不倫相手と正式に籍を入れる略奪婚だった。
母は、遠野さんを含む4人の子供の育児放棄をしていた。第1子の遠野さんが下の3人の食事の世話などしていたにもかかわらず、遠野さんが母と絶縁した際、3人は母についていった。その弟妹たちとも20代後半で絶縁した。それでも「心から愛してやまない2匹の猫、仲間や友人たちに支えられているので一人ではない」と気を張って毎日を送った。
母親の顔も忘れかけた頃に、突然音信不通の弟から所属事務所経由で連絡が入る。
「母が自死をしたと……。再々婚した夫がガンで亡くなり、どうやらその後を追ったようなのです。それを聞いて、悲しみよりも強い憤りを感じました」
母は亡くなった夫が所有する梨畑の中で命を絶ったが、その姿を長男(遠野さんの弟)が発見したのだ。
「弟は母を見つけたせいで、その後吃音に悩むことになります。彼に自分の亡骸を発見させるなんて、なんて身勝手な行為をするのかと許せません。また、私が虐待を受けていたことを嘘だと思う人もいたのですが、『ほら、こういう人だから。虐待をしかねないでしょ』と証のようにも思えて。結局、母ではなく、女として生きた人で、後に残された子供のことなど考えもしない。つくづく母らしい最期です」
遠野さんの母方の曽祖母もまた自死をし、やはり息子が発見したと聞いていた。因縁めいたものを感じる、と遠野さんは言う。しかし、母は厳格な父親にコンプレックスを植え付けられるような育てられ方をしたが、虐待はされていない。虐待された人間は子どもに同じことをするなど負の連鎖を生むともいうが……。
■子供を愛せない、愛さない親は確実にいる
虐待されている時、その時間だけは弟妹たちではなく自分をかまってくれていると嬉しかったとか、子役を続けたのも母から褒めてもらいたかったからなど、愛を渇望していた時期があった。だが、もうきっぱりと思いは絶っていたので、母の葬儀には出なかった。
“子どもを愛さない親はいない”と世間は言うが、そうではないと遠野さんは断言する。
「子どもを愛さない、愛せない親は確実にいます。だから、それで苦しむくらいだったら、関係性を絶って距離を置いたり、縁を切ったりしてもいいと私は思います。子どもは決して悪くないんです」
写真=本人提供
遠野さんのインスタから - 写真=本人提供
しかし、縁を切ったとしても、すべてがうまくいくというわけではない。
■マッチングアプリにハマって結婚。芸能界最速で離婚
虐待や育児放棄が遠野さんに与えた影響は相当に根深い。
ここ数年は、婚活マッチングアプリにどハマりして、会った男性は約100人。単に会っただけの男性も多いが、その中には、遠野さんが3度目の結婚や婚約をした相手も含まれる。しかも、すぐ付き合って、すぐ別れるというのを繰り返し、自身3度の婚姻期間は72日、55日、14日で「芸能界史上最速」を自らどんどん更新した、と報じる芸能メディアも。
「マッチングアプリでの出会いが悪いわけではありません。いい相手と出会えれば、こんないいツールはありません」
しかし、アプリは簡単に出会いがある半面、別れるのも簡単だ。つまり、自分が望めば次から次へと違う異性に出会うことができる仕組みなので、互いに深く信頼関係を築こうという気持ちが乏しくなってしまう。
■20歳年下の男には食い逃げ。アプリに依存していた
遠野さんはアプリの自分のトップ画像は口元だけ出していたが、「なぎ」というニックネームを使った。根が生真面目な彼女は嘘をつくのが嫌なので、生年月日などのプロフィールも正直に登録していた。だから見る人が見れば、遠野さん本人とわかってしまう。女優と交際できるならと、邪な気持ちでアプローチしてきた男たちは少なくなかっただろう。
もちろん、遠野さんはそういう男性は「お断り」とばかりにスルーしたそうだが、男たちとの出会いや別れの顚末(てんまつ)をブログやレギュラー番組でも赤裸々に公表。交際が破局しても、実にあっけらかんとしていた。およそ女優らしからぬエピソードに驚いてしまう。
「20歳も下の子と付き合って以来、年下としか付き合えなくなりました。でも、それだけ若いと行儀の悪い相手もいて、食事をした後に食い逃げをされたこともありました」
「相手がいい人だなと思ってもすぐ関係を持つのではなく、ちゃんと告白をしてからお付き合いをスタートして、その後にアプリを退会しました。一応筋を通したつもりで、相手と別れたらすぐにアプリに舞い戻り、また新たな相手を見つけての繰り返しです。今思うとマッチングアプリに完全に依存した“自傷行為”だったと思います」
破局した後、表面上は“自分は大丈夫”と何事もなかったかのように装っていた。しかし当然のことながら深く傷ついていたのだ。
ある男性とは、「LINEは必ず1日に1回はすることを約束したのに、相手が破った。それが耐えられなくて別れた」こともあった。
いい大人が一体何をしているのか? と非難するのは簡単だ。
しかし、いい大人になったとしても、幼少期に受けた虐待や育児放棄による愛情不足は、何をしても埋められないことがある。なぜなら、遠野さんの心の奥深くに、いつも小学生の青木秋美(本名)がひとりぼっちで立っている。
もちろん同じ不幸な境遇にいても、他者と継続的で深い関係性を築くことができる人もいる。そして、いつまでもこの飢餓状態から脱却できないわけでもない。
■愛猫・愁くんとの生活で、満たされた毎日を送る
アプリの沼から脱却できたのは、男性ではない。愛猫・愁くんの存在だ。もともと動物が大好きで、劣悪な家庭環境にいたときでも、ペットたちに深い愛情を注いだ。
数年前に共に暮らした愛猫たちを次々に亡くし、ペットロスになったこともあり、しばらく飼っていなかった。しかし、遠野さん曰く「猫ではなく、人間に見えた」という猫の愁くんとの出会いで、また共同生活がはじまった。
そのおかげで毎日の生活に張りが出た。彼の最期をみとるまでは、自分は元気で働いて、面倒を見なくてはならないと責任感に燃えている。
写真=本人提供
遠野さんのインスタから - 写真=本人提供
愁くんに絶対的に必要とされている、という思いが彼女に生きる希望を与えている。母性が過剰なほど溢れでる遠野さんは、愁くんを本当の息子のように愛情を注ぐことで、安心感を得ている。自分はこういうふうに育てられなかったが、これは自分の“育て直し”だとも。
■同じ病に苦しむ人に“あなたは一人ではない”と伝えたい
元気でいるためには、美味しいご飯を作り、少しでもいいから口に運ぶ。補えないカロリーは栄養ドリンクをきちんと飲む。
信頼できる医師にかかり、処方された薬を服用して不安な気持ちを抑える。自分のことを醜いと思っていたので、小さい手鏡でしか自分の顔を見られなかった。
しかしSNSにアップするために自撮りをして、「かわいい、かわいい」と自分に言い聞かせることで、以前より自分の顔を見られるようになった。
摂食障害など同じ悩みを持つ人々に少しでも寄り添いたいと、自身のインスタグラムのダイレクトメッセージで、相談やコメントを受け付けている。
すべてのメッセージに目を通し、時間がある限り返信している。
「私のインスタを苦しい気持ちを吐き出す場所にしてもらっていいのです。『あなたは一人ではない』というメッセージを地道に発信していきたい」
そのための講演なども増やしていきたいと願う。根底にあるのは、必要とされたい、役に立ちたいという気持ち。それは揺るぎがない。
写真=本人提供
愛猫と2ショット - 写真=本人提供
過剰なバラエティ番組の発言などにより、世間的には、すっかりお騒がせ女優・タレントのイメージがついてしまった。そのせいか芝居のオファーも少なくなりつつあるという。しかし、6歳から馴染んだ世界なので、何歳になってもオファーに応じられる自信がある。
あまり先のことは考えず、今は目の前にある愁くんや信頼できる友人たちとの時間をたのしみたい。与えられた仕事を誠実に粛々とこなすことで、ちゃんと仕事は巡ってくると思っている。
「世の中には、私の活動に対して『お前など早く死んでしまえばいい』などと、恐ろしい言葉を投稿してくる人もいます。まあ、エゴサーチはほとんどしませんし、あったとしても放っておきますから凹むことは少ないです。どうせ匿名で投稿するような人物ですから、相手にすることはないです」
その一方で、遠野さんは取材などで自分の過去を語るとき、思わず涙ぐんでしまうことがある。それほど、苦しい過去と向き合わなくてはならないのに、積極的にメディアに出ているのは、同じ病や親の愛情不足で苦しんでいる人に寄り添いたいからだ。
「母と違って自分を客観視できているのは、強いと思います」
繊細だけど芯は強い。それもまた遠野なぎこの一部分だ。
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東野 りか
フリーランスライター・エディター
ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。
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(フリーランスライター・エディター 東野 りか)
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