「通過には135分を要する見込み」の場合“下道”を走るのが正解? 不正解? 渋滞に見舞われたときの“正しい対応”とは
2025年5月3日(土)7時0分 文春オンライン
〈 《GWの大渋滞》あなたの対策は大間違いかも…? 本当に意味のある“渋滞対策”3つのポイントとは 〉から続く
高速道路の渋滞中、進まぬ車列に苛立つなか、ふと頭をよぎる「下道に降りた方が早いのでは?」という発想。次のインターまでの距離を見やりつつ、迷った経験がある人も多いだろう。
だが実際のところ、「高速を降りた方が早く着ける」というケースはどのくらい現実的なのだろう。ここでは、渋滞時の高速道路と一般道の平均車速を比較しながら、「下道の方が早い説」を検証していく。
渋滞中の高速道路、実際どのくらい進んでいる?
2025年のゴールデンウィーク期間中、「もっともひどい渋滞」はどの程度だろうか。 NEXCOの予想 では、5月3日および4日に、中央道下りの相模湖IC付近で最大45kmの渋滞が生じるとされ、両日とも通過には135分を要する見込みとなっている。
「45km」「135分」という数字だけで気が滅入りそうになるが、平均車速にしてみると20km/hは出ている計算だ。
もちろん、高速道路という「速さ」を前提としたインフラにおいて、平均20km/hというのは遅すぎるように感じられる。しかし数字だけを見てみると、これは東京都の23区外の一般道を非混雑時に走る速度(20.5km/h)と同等であることがわかる。

つまり「ひどい渋滞でも、一般道程度には進んでいる」というわけである。さらに、これは決して特殊なケースではなく、むしろ多くの渋滞に当てはまる傾向のようだ。
たとえば5月2日には、東名下りの秦野中井ICで最大40kmの渋滞が発生し、通過に100分を要する予測が示されている。これは平均車速にして24km/hであり、神奈川県の一般道を非混雑時に走る速度(23.4km/h)とほぼ同等だ。
もちろん東京湾アクアラインや神戸淡路鳴門道など、ほとんど迂回路が存在しないルートでは、平均車速が15km/hを下回り、都市部の通勤時間帯の一般道と変わらないようなペースになることもある。
とはいえ基本的には、かなり長い渋滞にハマってしまったとしても、「そのエリアの一般道程度には進めている」と考えてよいだろう。
休暇シーズンの下道は“罠”だらけ
ただ、どちらにせよ似たような速度しか出せないのなら、わざわざお金を払って高速に乗りつづける意味は薄いかもしれない。下道なら景色の変化もあるし、コンビニや道の駅といった施設にも立ち寄りやすい。
しかし注意したいのは、「降りた先が必ずしも快適な道であるとは限らない」という点だ。とくにゴールデンウィークともなれば、インター出口や観光地周辺の下道も大規模な混雑に見舞われる。
普段ならスムーズに進むはずの県道が、大型ショッピングモールや観光施設の大行列で詰まっていた……といったケースも、行楽シーズンにはありがちな話である。
通行量の比較的少ない山道などは、迂回路として役立つこともあるだろう。しかし、実際には道を一本間違えるだけでかなりのタイムロスになったり、離合のたびにヒヤヒヤするような狭い道を案内されたりと、思わぬ苦労が生じることもある。
とくに夜間や悪天候時は、判断ミスや操作ミスが起きやすく、疲労やストレスが事故リスクにも直結する。不慣れな道を長いこと進みつづけるのは、思いのほか神経を使うものなのだ。
「歩いた方が早いレベル」のときは…
このように、到着時刻や安全上のリスクを考えると、高速が渋滞しているからといって闇雲に下道に降りてしまうのは望ましくない。
それでも下道へ降りるべきケースがあるとすれば、「事故による車線規制」といったイレギュラーが生じている状況である。
渋滞の7割は車両集中を原因とする「自然渋滞」だが、不測の事態に起因する「事故渋滞」の場合には、しばしば通行帯が塞がれてしまうことがある。事故直後のタイミングにかち合ってしまうと、ほとんど車列が動かず、「歩いた方が早い」と思えるような状況も少なくない。
もちろんこうした場合でも、「進まないから降りる」のではなく、なるべく情報を集めてから判断するようにしたい。道路情報板やハイウェイラジオ、スマホを使える同乗者がいればNEXCOの「iHighway」などを活用し、前方の混雑状況や事故処理の進行具合をこまめに確認するとよいだろう。
事前に「下道に降りる可能性」を考えておく
もうひとつ、下道に降りる選択が功を奏するとしたら、周辺に興味を惹かれる施設などがある場合である。到着時刻をあまり気にせず、寄り道ができる状況であれば、気分転換に下道に降りてみるのも大いにアリだろう。
本来の目的地よりも、そうして偶然立ち寄ったスポットの方がかえって思い出に残る、というのも珍しい話ではない。
ただ理想を言えば、渋滞が発生しそうな地点については、あらかじめ「降りる場合に立ち寄りたいスポット」をリストアップしておくと安心である。
柔軟かつ冷静な判断が旅を充実させる
以上のように、まず「渋滞している高速と一般道ではどちらが早いか」という疑問に対しては、データから見た傾向として「高速の方が早い」と答えることができる。ただし、事故による車線規制などの特殊ケースでは、下道の方が早くなるケースもあるだろう。
もちろん旅行や帰省で重要なのは、効率や合理性ばかりではない。下道に降りてみなければ触れることのなかった光景や体験もあるかもしれない。
重要なのは、「なんとなく」で降りないことだ。降りた先の混雑状況に、経路の複雑さ、運転者の疲労など、複数の要素を見越しつつ、冷静に判断することが大切である。
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(鹿間 羊市)