下ネタを展開し、身体を触る、キスを迫り、中居正広や“大物タレント”とのメールを消去…フジテレビ第三者委員会が認定した編成幹部A氏の“常習性”

2025年5月3日(土)12時0分 文春オンライン

〈 「オマエ、手コキしたことないんか?」中居正広と“大物タレント”が高級ホテルでX子さんに聞いていた“普通の会社ではありえない内容” 〉から続く


「業務の延長線上」で起きた「性暴力による重大な人権侵害」。第三者委員会が認定した中居と編成幹部A氏の罪とはいかなるものか。そしてフジテレビの行方は——。週刊文春4月10日号が報じた内容を抜粋してお届けする。(全2回の後編/ 最初から読む )


◆◆◆


A氏をよく知る制作スタッフが語った


「僕たちの場合、数十万円の経費は前もって上長の稟議を通さないと経費計上できない。それなのにA氏は稟議を通さず計上している。彼のやり方を見ていると、上長の許可を得るのが馬鹿馬鹿しくなってしまう」


 また、第三者委はA氏の「置き去り」の常習性を炙り出す証言を得ている。ある日、A氏は、フジの番組には欠かせない番組出演者との飲み会に女性社員を勧誘。深夜、女性がトイレに行っている間に脱出し、初対面の番組出演者と2人になる状況を作り出し、「置き去り」にしたという。


下ネタ、身体を触る、キス


 さらにA氏は証拠隠滅まで図っている。第三者委の調査によれば、小誌報道後の25年1月9日から2月1日にかけて、A氏は前出の大物タレント、中居、弁護士との325件のメールなどを削除していたのである。


 第三者委はA氏自身による「類似事案」も指摘している。20年頃、後輩の女性社員を食事に誘い、身体を触り、キスをしようとするなどのセクハラ行為を行ったと認定。また、23年には、後輩の女性社員から仕事の相談を受けたことをきっかけに食事に誘い、食事中には下ネタの会話を展開し、身体を触る、キスをするなどのセクハラ行為を行ったという。


 いずれのケースについてもA氏は第三者委にセクハラ行為を概ね認めているが、今年2月、小誌の取材には事実関係を否定し、悪びれもせず、こんなことまで口にしていた。


「彼女(23年の被害者)は日頃から下ネタが好きというか。みんなから反感を買っていたぐらいの感じだったんですよ」


フジの迷走


 調査結果が公表される4日前の3月27日。フジと親会社のフジ・メディア・ホールディングス(フジHD)は、40年近くグループを率いてきた“フジの天皇”日枝久取締役相談役の退任を発表した。だが、その裏ではフジの迷走を表す出来事が起こっていた。



清水社長の会見は3時間余り


「1月28日、清水賢治氏が社長に就任してからHDに外部のプロ経営者を招聘する動きがありました。白羽の矢が立ったのは、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏。一時期、フジ上層部は真剣に検討したものの、最終的に断念しています」(前出・フジ幹部)


反町氏のハラスメントも認定


 そして、今回、日枝氏の寵愛を受けてきた取締役のハラスメントも認定されている。


 その1人が、報道番組「BSフジLIVEプライムニュース」のメインキャスターを務める反町理氏だ。


 小誌は18年4月、夕方のニュース番組「プライムニュース イブニング」のメインキャスターに就任した反町氏のハラスメントについて報じている。


 反町氏は後輩の女性記者を休日にドライブに連れ回した後、拒絶されると、逆恨みして彼女を政治部内の一斉メールで罵倒するといったパワハラに走ったのだ。調査報告書では、別の女性社員にもプライベートな写真を送るように求め、拒否されると同様のパワハラを行っていたことが判明し、「セクハラ・パワハラに該当する」とされた。BSフジ社員が反町氏の落胆ぶりを明かす。


「調査が大詰めを迎える中、反町さんはBSフジの役員室に立て籠もり、『番組を降ろされるのか。どうなっちゃうのか』と頭を抱えていた。実際、降板は免れないでしょう」


「どうなるか楽しみですよ」


 反町氏という側近の一掃は、日枝体制からの脱却を意味するのか。


「一方で、フジは日枝氏の盟友で“精神安定剤”と言われる関西テレビ放送の福井澄郎会長を社外取締役として続投させています」(カンテレ社員)


 福井氏の元を訪ねると、玄関口で「どうなるか楽しみですよ」と破顔する。


「やってみないと分からないですね。私も社外役員ですし、社外から言うべき事は言って、応援すべきところは応援するという形じゃないですかね。日枝さんは今まで、あれだけのキャリアを積まれていて、放送界のことをよく分かっていて、先もちゃんと読める人ですから。いろいろ考えてのことだと思いますよ」


 腰椎圧迫骨折で入院中の日枝氏の体調を気遣い、「日枝さんの電話の声はハリがあって元気でしたよ」と話すのだった。


日枝氏がこの状況下でも“手放さない肩書”


 社長、会長、相談役と肩書を変えながらフジを掌握してきた日枝氏だが、この状況下でも手放さない肩書がある。それがフジサンケイグループの一角である日本美術協会の代表理事だ。


 常陸宮が総裁を務める公益財団法人で「高松宮殿下記念世界文化賞」を主宰するなど、皇室との縁が深い。日枝氏は代表理事という立場を利用し、世界各国の要人とパイプを構築してきた。


「一昨年くらいから世界文化賞について『当日特番を作れ』と日枝氏に忖度した石原正人常務(当時)の指示が届くようになった」(制作スタッフ)


 つまりこの日本美術協会の代表理事というポストは日枝氏の影響力の源泉なのである。


「体制に変更はありません。」


 同協会の理事で鹿島建設の押味至一会長が明かす。


「日枝さんと最後に話したのは今年1月上旬。フジの役員室で、日枝さんを含むフジの幹部らに鹿島の幹部の人間として新年の挨拶をしました。私たちはフジの建物の建て替えをさせていただいたり、昔から付き合いがあって、毎年挨拶に行っています。今年はトランプさんの話など、米国の話が中心でした」


 日枝氏は代表理事で居続けるのか。同協会の担当者が言う。


「現在のところ、日枝さんが代表理事であるという体制に変更はありません。日枝さんは世界文化賞が作られた1988年から役員を務め、07年に元代表理事の瀬島龍三さんが亡くなられた後に代表理事に就任しました。その功績は、世界文化賞を35回にわたって続けられたことです」


「日枝に対する嫌がらせ」


 会見翌日の4月1日。日枝氏の盟友で、フジ監査役を退いたばかりの尾上(おのえ)規喜氏が日枝氏の胸中を明かす。


——日枝さんと話した?


「まあ、電話はしたけどね。(第三者委については)心穏やかではないだろうね」


——なぜ退任した?


「やっぱり日枝に対する嫌がらせみたいなこともあったかなという気はするよね。(役員刷新で)人数も減らして、年齢も下げて若返っているのに、87歳がポンって1人入っていたらおかしいでしょ?」


——居残りづらくなった?


「それは否定できないと思う。僕は『世界文化賞に専任するって、宣言すれば?』って言ってきたんだけど、それも本人は納得してなかった。それなりにプライドもあるだろうしね」


——決定に怒っている?


「まあ怒ったってしょうがない。年も年だし、自分の身体も思うように動かないみたいだから」


中居の番組を継続させた戦犯


 目下、その進退に注目が集まっているのが、「東京ラブストーリー」など数々の人気ドラマを世に送り出してきた関西テレビ社長の大多亮氏だ。中居の事件当時はフジの専務取締役という要職にあったが、港浩一前社長、編成制作局長の3人で中居の番組を継続させた戦犯とされている。


 さらに第三者委は大多氏が有力出演者の求めに応じ、05年頃から年1、2回女性アナ接待を繰り返しており、参加した女性アナは19人に上ったと発表した。


 3月28日夜8時、東京の下町にある自宅近くに黒塗りのハイヤーが停まると、スーツにマスク姿の大多氏が降り立った。


——役員が大量に辞任した。大多さんはどうするのか。


「まだ第三者委員会のあれも出てないし、何にも今日お答えすることはないわ」


——連日、厳しい調査を?


「そんなことないですよ。連日受けることはないです(笑)。粛々として」


テレビ業界の「真っ当な理由で評価されない風潮」


 X子さんは小誌の取材に次のように語っていた。


「テレビ業界には『そういうのを乗り越えてこそアナウンサーだから』みたいな風潮がある。『セクハラをうまくかわせるのが売れる子だから』みたいな。フジはそういう社風だから我慢するしかない。でも、本来そこで戦うべきじゃないじゃないですか。ちゃんと仕事に向き合っているとか、真っ当な理由で評価されない。そういう場にちゃんと来て積極的にコミュニケーションを取って好かれるか好かれないかみたいな感じだから」


「業界が変わっていかないと」というX子さんの思いは届くのか。第三者委は、かつてない重い課題をフジに突きつけている。


◆ ◆ ◆


 3月31日、フジテレビが設置した第三者委員会によってタレント・中居正広の女性トラブルについて「『業務の延長線上』における性暴力であった」ことが認定された。一体、フジテレビで何が起きていたのか。中居正広は何をしたのか。「 週刊文春 電子版 」では、一連の問題を報じてきた週刊文春の記事を購読できる。


(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年4月10日号)

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