認知症や介護予防へ自治体がスマホ活用、脳トレ・歩数記録…アプリ利用すれば店で使えるポイント付与も

2025年5月7日(水)16時57分 読売新聞

スマホを使い脳トレに挑戦する佐藤さん夫婦(4月24日、東京都足立区で)

 認知症や介護予防のため、スマホを活用する自治体が都内で増えている。手軽に脳トレに取り組んだり、ポイントをためながらウォーキングをしたり。高齢者に楽しみながら運動や脳トレの習慣を身につけてもらうのが狙いだ。(青木聡志)

コロナきっかけ

 足立区は今年3月から、主に65歳以上の区民を対象にした「あだち脳活ラボ」のサービスを開始した。無料通信アプリ「LINE」を使って、脳トレや認知症リスクの判定ができる。4月24日に同区の保塚地域学習センターで開かれた体力測定会では早速、区民らが登録をしていた。

 「けっこう頭使うね。最近人の名前を思い出せないことがあるから、夫婦で一緒に続けようかな」。同区の佐藤明彦さん(70)は妻と2人で脳トレ問題にチャレンジ。スマホに表示されたトランプの数字や絵柄などを記憶する問題などに正解すると笑顔をみせた。

 区が「あだち脳活ラボ」をリリースしたきっかけの一つは、コロナ禍だった。緊急事態宣言の期間中などに、各地で開かれていた体操教室などが中止に。自粛生活で、高齢者の運動や社会参加の機会が減り、体力などが低下する「コロナフレイル」が課題になった。区高齢者地域包括ケア推進課の担当者は「なんとか家でも手軽に活動に取り組める環境を作れないかと検討してきた」と話す。

 新しいサービスでは、1000を超える脳トレや、同時に複数の動きをする体操、感性を刺激する音楽、美術など400本以上の動画が視聴できる。高齢者もLINEで簡単に登録できることから、すでに登録者数は2900人を超えた。

 認知症のリスクも判定できる。「曜日や日にちがわからない」「ものの名前が出てこない」など13の質問に答えると、認知症のリスクを3段階で判定。50歳以上の利用者が最も高い判定になると、医療機関の検診案内をLINEで通知する仕組みだ。

 区内の高齢者は約17万人。区民の健康寿命が延びれば介護費の削減も期待できる。同課の担当者は「気軽に利用できるサービスなので多くの高齢者に取り組みに参加してもらいたい」と呼びかけている。

ポイントも

 八王子市は、ITサービス会社「ベスプラ」(渋谷区)が提供する「脳にいいアプリ」と連携し、アプリを利用すると市内の飲食店などで利用できるポイントを付与する事業を行っている。

 対象は、60歳以上の市民で、脳トレをしたり毎日の歩数や食べた品目を記録したりすることでポイントがたまる。市が始めたのは2021年10月で、事業の利用者は今年3月末時点で、1万2765人に上る。

 事業の利用者の半数が月に10回以上アプリを利用しているといい、市高齢者いきいき課の担当者は「ポイント付与が取り組みの継続につながっている。健康作りに関心をもっていただくきっかけにしたい」とした。渋谷区でも、同じアプリと連携した同様の取り組みを昨年1月に始めた。

 府中市では21年4月、高齢者同士の交流を図り、チームで歩数目標を設定して取り組むアプリ「みんチャレ」との連携を開始。アプリの利用でたまるコインは、被災地や福祉施設などに寄付できる。

 足立区のサービスを監修した筑波大の朝田隆名誉教授(70)(認知症学)は「高齢者が健康的な生活を送るには、運動や脳の活性化に加え、社会参加も必要。スマホを利用して習慣的に健康に気を使い、友達や家族で一緒に取り組むことが効果的だ」と指摘している。

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