脳トレの第一人者が教える「脳に良い習慣」。頭の回転が速くなる<朝の過ごし方>とは?脳は<いい刺激>を与えれば、何歳からでも底上げできる

2025年3月4日(火)12時30分 婦人公論.jp


日常生活の中で脳のトレーニング(写真提供:Photo AC)

仕事も子育てもひと段落し、時間や心理的な余裕が生まれる65歳からは、いわば人生のゴールデンタイム。脳を鍛えるのにも絶好のタイミングだと、脳トレの第一人者・川島隆太さんは言います。川島隆太さんの著書『脳を鍛える!人生は65歳からが面白い』より、食事、運動、睡眠、人間関係など、認知症にならずに《上手に老いる》ための習慣を紹介します。

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「脳の刺激になっているか」で行動を見直す


一度脳が衰えてしまっても、トレーニングをすることによって、再び脳の機能を向上させることができます。

情報を処理し記憶する能力は、脳に軽い負荷がかかるトレーニングをすれば、誰でも、何歳からでも底上げすることができるのです。

この底上げのための「脳トレ」のひとつとして、私は特殊な道具や準備がなくてもできる、新聞などを使った「読み(音読)」「書き(筆写)」と複雑すぎない「計算」を紹介しています。

しかし、脳を鍛える方法はこの3つに限ったことではなく、日常生活のなかには、ほかにも脳のトレーニングになる事柄がたくさんあります。

と同時に、ずっと続けていると脳の機能を衰えさせてしまう習慣や行為も多くあるのです。まずは、日々のちょっとした行動を「脳の刺激になっているか」という観点で捉え直してみましょう。

脳を使うように意識しながら生活すると、1週間、1か月と過ごすうちに大きな差がつきます。

まずは自分の日々の過ごし方を見直してみる


逆に脳によくないことを日々続けていると、残念なことに脳の老化が進んでしまいます。脳はよい影響も、悪い影響も受けてしまうのです。まずは自分の日々の過ごし方を見直してみてください。

そもそも、どのような生活が脳にいい影響をもたらすのでしょうか?

端的にいえば、それは「身体(健康)にいい」と言われる生活です。脳は身体の一部ですから、当たり前といえば当たり前ですね。

栄養バランスのよい食事をとり、適度な睡眠をとり、定期的に運動をする。「食事」「睡眠」「運動」に留意して基本的な生活習慣を整えると、脳にもよい結果になるということが、さまざまな研究から明らかになっています。

具体的な「脳にいい習慣」を見ていきましょう。

頭の回転を速くするカギは朝にある


日本には「早起きは三文の徳」ということわざがありますが、西洋にも「朝の時間は、口に金(きん)をくわえている」(ドイツ)、「早起き鳥は虫を捕まえる」(イギリス)という言葉があります。

朝早く起きて活動を始めると、心身ともにいい結果をもたらすということを、先人たちは科学的に証明されていなくても経験として感じていたのでしょうか。

一般的に、脳がいちばん働くのは朝と言われています。目覚めたのち、朝食をとってエネルギーを得ると、脳はとてもコンディションが良好になり、よく働くようになるのです。

そして、1日のスタートとなる朝に脳を積極的に働かせることには、2つのメリットがあります。

ひとつ目は、短期的なメリットで、1日しか行わなくても効果があります。1日の始まりに脳を積極的に働かせると、特に午前中は処理速度や記憶力が上がった状態を保つことができます。

この効果を狙って、学校教育の現場では「0時間目の読書」「朝の計算小テスト」など、始業時間前の時間を活用する例が多く見られます。

即効性があるので、「始業後すぐに集中したい」「今日はここいちばんの正念場で、朝からトップギアの状態で議論したい」という日には、朝食後に意識して脳を働かせてみるといいでしょう。

継続しないと効果が得られない長期的なメリット


2つ目は、中、長期的なメリットで、こちらは継続しないと効果が得られません。毎日脳を積極的に働かせていると、認知能力が高まりますし、脳の体積が増えることも確認されています。

とはいえ、何事も習慣になるまでが大変で、新たなことを始めても三日坊主に終わってしまうことも多いですよね。

その点、朝は突発的、偶発的な事態が起こりにくいので、ルーティンとして続けやすいのです。また、朝は朝刊やニュース番組など、脳トレの教材に触れる機会が多いので、忘れずに「やらなきゃ」と思えるのです。

習慣化するためには、できるだけ具体的な目標を設定しましょう。目標が「毎朝なるべく新聞を音読する」などと漠然としたものだと、人はすぐ怠けてしまいます。

例えば「朝は7時に起きて音読する」「5分間計算ドリルをやる」とイメージしやすく、達成したときに評価しやすい目標にしておくと、脳の報酬系の神経回路が働いて、「明日もやりたい」と意欲が高まります。

毎朝頭を使うことで、会話のテンポが軽快になり、アイデアもどんどん出てきます。質問にも的確に答えられる、いわゆる「頭の回転が速い」と評される人になるカギは、朝の時間の使い方が握っているのです。


朝のルーティンは続けやすい(写真提供:Photo AC)

予期せぬ出会いが脳を活性化させる


「朝に脳を働かせるのがいいことはわかったけれど、寝起きにそんなにがんばれない」という方もいるかもしれません。

そんな人は、朝のボーナスタイムを散歩に充ててみてはどうでしょう?人間の身体には年齢に関係なく平均で24.2時間の体内時計が備わっています。

放っておくと少しずつ、地球の周期に対し体内時計が遅れていくので生活時間とずれが生じます。

ですが、朝に太陽の光を浴びると、この体内時計がリセットされます。太陽光には「セロトニン」という神経伝達物質の分泌を促す力があり、日光を浴びてセロトニンが分泌されることで身体はシャキッと目覚めた状態になります。

また、セロトニンには気持ちを明るくし、幸せな気分にする役割もあるので、心地よく1日のスタートを切れるのです。目覚めを促す物質がセロトニンなら、眠りを促す神経物質は「メラトニン」です。

セロトニンとメラトニンの分泌はセットとなっていて、日中にセロトニンが活発に分泌されると、その15〜16時間後にメラトニンが分泌され、眠気を誘います。

加齢によって分泌量が減ってくる「セロトニン」


ところが、残念なことにセロトニンは加齢によって分泌量が減っていきます。同時にメラトニンも減ってしまうので、ベッドに入ってもなかなか眠れない、目は早く覚めるけれどシャッキリしないという日が増えていきます。

起床後にカーテンを開けるだけでも太陽の光を浴びることはできますが、光を浴びる時間が多ければ多いほど、セロトニンの分泌量が増えることがわかっています。

積極的に散歩に出かけることで、太陽光を浴びる時間を増やしてみてはどうでしょうか?脳の活性化には、「予期せぬ出会い」も効果的です。脳は新しい経験や知識を入れると刺激されます。

見たことのない景色や思いがけない人やモノと遭遇し、うれしい驚きや喜びがあると脳機能が向上するのです。よく知っている生活圏内でも、1本違う路地に入ってみるとそこは新しい世界です。

いつもは電車に乗ってしまう区間を歩いてみるだけでも、「こっちでいいのかな?」「こんな家があるのか」と未知との遭遇の連続です。

朝の散歩は脳にとっての思いがけない幸運(セレンディピティ)をもたらしてくれるかもしれません。

※本稿は『脳を鍛える!人生は65歳からが面白い』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

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