ガザ情勢悪化 これ以上の殺戮は放置できぬ
2025年5月27日(火)5時0分 読売新聞
パレスチナ自治区ガザをめぐる情勢が重大な局面を迎えている。イスラエルが新たな大規模攻撃を始めたからだ。
すでに廃虚と化した街で、逃げ場を失った民間人が大量に
イスラエルのネタニヤフ首相は今月、「ガザ全域を支配する」と宣言し、軍事作戦を拡大した。連日の空爆や地上軍の無差別攻撃で病院や避難所が破壊され、多くの住民が死亡した。
イスラエルとイスラム主義組織ハマスは、2期目のトランプ米政権発足直前の1月に停戦に合意したが、イスラエルは3月に戦火を再燃させた。ドーハでの両者の停戦交渉は崩壊状態にある。
戦闘の直接の発端は2023年10月、ハマスがイスラエルを攻撃したことだ。ネタニヤフ政権は自衛権の発動としてガザ攻撃に踏み切り、ハマスが隠れているとして病院など民間施設を破壊した。
死者累計は5万3000人を超えた。イスラエルは2か月半にわたって食料や医薬品の搬入を遮断し、200万人超の住民の多くが飢餓に苦しんでいる。
ハマスの攻撃がいかに卑劣だったとしても、民間人にこれほどの被害をもたらすイスラエルの行動を自衛権行使として正当化することはできない。
イスラエルが軍事支援を依存する米国が圧力を加え、ガザ攻撃をやめさせなければならない。
にもかかわらず、トランプ大統領は今月、サウジアラビアなど中東3か国を訪問しながらイスラエルには寄らず、ガザ情勢についても触れなかった。
トランプ氏は停戦を守らぬネタニヤフ氏へのいら立ちを強めているように見える。イスラエルと敵対するイランとの新たな核合意に意欲を示し、イランが支援するイエメンの反政府勢力フーシへの攻撃を停止すると表明した。
だが、米国がガザでの戦闘停止に真剣に取り組まない限り、中東全体の安定は実現せず、米国自身の利益をも脅かし続けることを、トランプ氏は認識すべきだ。
欧州連合(EU)はイスラエルとの貿易協定を見直すことを決め、英国も貿易協定を巡るイスラエルとの協議を停止した。
日本も国際的な圧力を高める取り組みに力を入れる必要がある。まずは国連安全保障理事会の常任理事国の米英仏中露に対し、ガザでの人道支援の円滑な実施と戦闘停止を求める決議の採択を強く働きかけるべきだ。