太陽光発電 優良事業者への集約進めたい
2025年5月28日(水)5時0分 読売新聞
政府が、乱立する太陽光発電事業者の再編に乗り出している。安全対策の面で地域住民が信頼できる大手の事業者に集約し、脱炭素を着実に進めていくことが大切だ。
政府は、東日本大震災後の2012年に、太陽光発電を含め、再生可能エネルギーで作った電気を高値で買い取る制度を始めた。
事業者は発電の開始から原則20年の間は、決まった価格で電気を買い取ってもらえる。当初の価格は、現在の4倍となる1キロ・ワット時あたり40円と高かったため、小規模の事業者が大量に参入した。
その結果、日本では太陽光パネルの設置面積がテニスコート1面分程度といった事業者が多い。
この高値での買い取りは32年度以降に順次、終了していく。それに伴い採算が悪化した事業者が設備を放置したまま撤退することが相次ぐ、と懸念されている。
すでに全国各地で、故障したパネルが放置される事例が続出している。山間部に作られた太陽光発電所が土砂災害を引き起こす危険性が指摘されている。そうした事態は防がねばならない。
政府は対応策として、4月から発電能力が5万キロ・ワット以上などの条件を満たした大規模業者に「適格」という認定を行い、事業承継で優遇する制度を導入した。
これにより、事業を引き継ぐ際に必要な地元自治体への説明会が免除され、事業の進展状況を自社のホームページで公表することなどで済むようになる。
また、設備の故障が発生した場合の、2時間以内に技術者の到着を義務づける要件も緩和した。
JR九州は、新制度を踏まえ、三菱UFJ信託銀行などと組み、九州にある中小規模の太陽光発電施設を買い取る計画だ。こうした動きの広がりを期待したい。
政府は今年策定したエネルギー基本計画で、40年度の電源構成に占める太陽光発電の割合を、23年度の9・8%から23〜29%まで増やすことを目指している。
だが、国内には太陽光発電に適した土地は年々、少なくなっており、実現へのハードルは高い。適地を放置することなく、活用していくことが必要になる。
政府が適格事業者の認定を厳正に行うことも重要だ。太陽光発電パネルの放置による地域住民とのトラブルは後を絶たない。
事業を引き継ぐ大手事業者側の責任も重い。地域住民との信頼関係づくりを絶やさずに、長期的に事業を安定して行っていくことが求められよう。