日本を明るく照らすだけでなく誤施工・落下を防ぐ自社設計を追求。普段は見えない部品「カチット」とは。
2025年4月17日(木)10時0分 PR TIMES STORY
「カチッ」。この音に聞き覚えのある人は、意外と多いかもしれない。家庭でシーリングライトを取り付ける際に聞こえる、あの小さな音だ。実はこの音から名づけられた部品がある。
シーリングライト本体取り付け用アダプタの「カチット」だ。この「カチット」、取り付けてしまえば長い間見ることはない部品だが、実は、シーリングライト本体(以下、本体)と共に長年にわたって磨き続けられた技術の結晶。パナソニックが掲げる「落下ゼロを目指した施工性と安全性」を実現するまさに要。隠れた裏の主役なのだ。
※写真は本体取り付け途中の1枚。中央が「カチット」
パナソニックは、1936年に白熱電球第1号「ナショナル電球」発売からあかりの事業を発足。そこから電気スタンドや蛍光灯、現在のLEDに至るまでさまざまな照明に関する製品、部品づくりを続けている。
1991年、家庭用照明器具の主流がペンダントライトからシーリングライトへと移り変わる中で誕生したのが、今回の主役「カチット」だ。以来、パナソニック社製のシーリングライトに幅広く採用されているが、現在の形になるまでには試行錯誤の連続があった。
今回は、カチットをはじめとした電源端子台などの給電部品開発に携わる、器具技術部 接続部品開発課の平野晶裕(ひらの・あきひろ)にその裏側を聞いた。
誰でも簡単かつ安全にシーリングライトを取り付けられるように。「カチット」が誕生するまで
「カチット」は、天井に設置された配線器具にはめ込むことで本体を簡単かつ安全に取り付けできる部品だ。
それまでのシーリングライトは、天井に木ねじで取り付け専用金具を施工する方式だったため、今のように個人が簡単に取り付けすることは難しく、電気工事業者に依頼して取り付けてもらうのが主流だった。
パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社 ライティング事業部 技術開発センター器具技術部 接続部品開発課に所属する平野晶裕
一般の人が、自分でシーリングライトを取り付けられるようにしたい。その想いから生まれたのが、アダプタ型の部品「カチット」方式のシーリングライトだ。以降、パナソニックではカチットを自社開発し続けている。
「まさかこんな取り付け方はしないだろう」と想起できるなら、それは起こり得る。カチット安全性向上の歩み
カチットは、誕生から現在に至るまで何度も改良を重ねてきた。初代カチットは、「個人で簡単にシーリングライトを設置できるようにする」という目標は達成したものの、その大きなサイズ感が課題として残った。そのため、後継モデルでは、安全性を維持しながら小型化に注力。カチット内にあった電源回路を電源コードとして外に出すことで、初代の約半分までサイズを小さくすることに成功した。
その後も、カチットの進化は止まらない。「誤った取り付けによる落下を防ぎ、お客様の安全を守りたい」という想いから、2007年には、従来カチット側から伸びていた電源コードを、本体から伸びる構造に変更し、カチット側にコネクタの差し込み口をもってきた。そして、カチットに本体をきちんと取り付けできていない誤った設置状態では、ストッパーが差し込み口にぶつかりコネクタを差せず、通電もさせられない仕組みを実現。今のカチットに通じる形が、ここで生まれた。
その後も、カチットの安全性を高める改良はさまざまな部分で続けられている。平野は語る。
「照明器具は、誤った手順で設置すると落下や感電、火災などの事故につながる恐れがあります。だからこそ、メーカーとして品質に細心の注意を払いながら、『想定外の1件』が発生する可能性をゼロにすることを目指しています。『どう考えてもこんな取り付け方はしないだろう』と思えることでも、思いついたのなら、起こりうる前提で改善に乗り出す。それが開発チームの信念です。『どう使えば落ちるのか、破損するのか、危険が生じるのか』という視点で検証に検証を重ね、改良を続けています」
一度完成したと思った後も、「こうしたら落ちる」「こうしたら壊れる」と自分たちが作ったものに対して、とことん意地悪に考え抜く。この姿勢が、より安全なカチットへの進化を後押ししてきた。誰もが、正しい順番で、正しい取り付けができる構造へ。パナソニックのシーリングライトが点灯するのは、正しい取り付けができた安心の証なのだ。
さらに、安全性へのこだわりは、その形状だけにとどまらない。カチットは火災リスクへの対策として、パーツごとに異なる樹脂を使い分ける時期を経て、現在では、選び抜かれた高い難燃性を持つ樹脂を全体に使用している。
「実際に、この素材選びが功を奏したケースがありました。ある時、『製品が正常に作動しない』というお問い合わせがあり、調査を進めたところ、天井裏に忍び込んだネズミの尿がかかっていたことが原因だと判明しました。通常の製品開発では想定しづらいケースですが、カチットが難燃性の素材で作られていたため、火災には至りませんでした」
カチットの進化は、長年にわたる安全性へのこだわりと細やかな改良の積み重ねによって支えられているのだ。
改良、刷新、耐久試験—— カチット開発の舞台裏
新しいカチットが生まれるまでには、開発部門だけでなく、品質部門や企画部門など、複数の部門が連携して取り組んでいる。
カチットは、新モデルの登場に伴い、「カチットF」「カチットT」など名称が変更される。一方で、実は同じ名称のモデルであっても、より高い安全性を実現するため、細やかな改良も継続的に行われている。
通常、カチットの新モデル開発には1〜2年ほどの期間を要するが、安全性を高めるための改良は半年ほどで対応することが多いという。平野は「問題が発生した際には、なるべく早く対処できるようスピード感を意識している」と語る。
例えば、「照明を取り外す際に、本来外す必要のないカチットのネジをドライバーで外してしまった」という想定外のケースが発生したこともあるという。こうした場合でも、「数百万件の内のたった1件の出来事」と見過ごすことは決してない。即座にネジ穴の形状を特殊なものに変更し、一般的なドライバーでは取り外せないように改良。誤施工を防ぎ、人の安全を守る対策を施している。
こうした細かな改良や新規開発について、平野は「それぞれに異なる難しさがある」と話す。
「改良の場合は、既存の本体で使えることが前提なので、大きな変更ができません。その制約の中で、どうやって新たに発見した課題を解決するかが難しいところです。一方、新規開発では、一つの見落としやミスが重大事故につながる部品なので、詳細な構造検討ができていない状態で、これでいこうと決断する難しさがあり、過去から得た知見と何よりチャレンジ精神が必要になります。例えば、『ランプのようにシーリングライトを簡単に取り付けられるようにしたい』という構想があったとしても、大前提として『落下させない』という条件を満たす必要があります。さらに、実際にお客様がどのように使用するかを想定しながら、企画と開発と品質の間で調整を重ねていくのが難しいです。でも、それが開発の楽しいところでもあります」
「落下させない」ものづくりは、あらゆる使い方を想定する配慮だけにとどまらない。パナソニックでは自社に専用の実験施設を設け、あらゆる面からカチットの性能を厳しくチェック。耐地震性試験や耐荷重試験など、公的規格だけでない、高い自社基準での試験を実施している。日本は地震大国であるからこそ、「地震が発生しても落ちにくい」ことや長い間天井で本体の重量を支え続けられるかどうかなどにも徹底的にこだわっているのだ。
このようにどの段階でも、徹底的に検証を重ね、常に最善の形を追求している。
耐地震性試験:水平方向・垂直方向(動画は水平方向)
震度6 強(計測震度6.0 〜 6.4)レベルの負荷で実験。阪神淡路大震災クラスの地震
を想定した安全基準の試験です。
落下報告0件を目指して。LED主流時代も安全へのこだわりを持った開発を
家庭用照明器具の主流がペンダントライトからシーリングライトになり、光源も現在はLEDが主流となった。
パナソニックは、2011年にLEDシーリングライト1号機を発売してからこれまで2200万台以上のシーリングライトを出荷*している。この間、想定しきれなかった落下報告を2件発生させてしまったと反省を語る平野の目には、開発チームとしての真摯な責任感が宿る。いずれも、購入者による不完全な取り付けが原因と推測されるものだったが、その不完全な取り付けが起こらないよう、ヒューマンエラーを防止するエラープルーフ構造のさらなる改良に取り組んだという。その甲斐もあり、2019年以来、落下報告は0件となっている。
*2013年1月1日〜2023年12月31日出荷実績による
平野は、「2200万分の2件であったとしても、1人のお客様が買ったもので事故や不具合が起きてしまうと、それは1分の1。これからも落下ゼロを目指し続けるべきだというのが私たちの想いです。何をどうやっても不完全な取り付けが起こらないような状態を、作り手側の工夫で実現させたい。今後も『どうやったら落ちるのか』『どうやったら危険性が高くなるのか』をとことん考え、落下ゼロにこだわり続けた開発を続けていきたいです」とまっすぐ語る。
私たちが何気なく使っている製品の裏側には、メーカーの細やかな配慮と技術者のこだわりが詰まっている。「カチッ」と音がした瞬間、そこにはパナソニックが掲げる「より良いくらし」の哲学が息づいている。
カチット webサイト
https://panasonic.jp/light/contents/adapter.html
[カチット誕生から今までの変遷]
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