「どうして新人が辞めるんでしょうか?」は頭の悪い質問。頭の良い人はどう考える?
2025年5月8日(木)7時5分 ダイヤモンドオンライン
「どうして新人が辞めるんでしょうか?」は頭の悪い質問。頭の良い人はどう考える?
「『なぜ、そう思うの?』は、絶対にNGです」「なぜなぜ分析」をはじめに「なぜ?」という問いは“論理的に考える”ための「良い質問」だと考えられている。しかし実は「なぜ?」「どうして?」は、致命的な「解釈のズレ」を生み、噛み合わない会話=「空中戦」を作り出してしまう元凶、「最悪の質問」なのだ。「事実と解釈の違い。これに気づけていない人は、まだ確実に“曇りガラス”の中にいます」——。話題の新刊『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』では、世界・国内の各地で実践・観察を積み重ねてきた著者による「賢い質問の方法」=事実質問術を紹介している。本書に掲載された衝撃の新事実の中から、今回は「ありがちなNG質問」について紹介する。(構成/ダイヤモンド社・榛村光哲)
Photo: Adobe Stock
「なぜ?」は最悪の質問
質問には、よい質問とよくない質問があります。
よくない質問の代表が「なぜ?」「どうして?」と聞く質問です。
では、それがよくないのはどうしてでしょうか。
まず第一に、相手の「思い込み」を引き出してしまい、それがコミュニケーションのねじれにつながるからです。
たとえば、次のような質問は良くない質問です。
今回はこの事象について、考えていきましょう。
「どうして?」では真の原因は出てこない
例えば、課内のリーダー会議で、課長が次のように問題提起したとします。
次長 そもそも、あんなにすぐ退職するのはなぜなのでしょうね?
中堅社員 売り手市場だからではないでしょうか?
ベテラン いや、私はそうは思いません。私が思うに……
意見と意見の応酬が始まりました。最初に誰かが「(事実に基づかないが)もっともらしく聞こえる考えや意見」などを語り始め、他の誰かがそれを受けて賛同したり反論したりするが、これまた自分の考えを語っているにすぎない……というパターンです。
このようなことが起きている現場は、多数あるのではないかと思います。
先に結論を言ってしまいましょう。「なぜ質問」は、原因や理由を聞いているようで、実は、「なぜだと思う?」というふうに相手の「考え」を聞いています。結局はこれに尽きます。
実りのない「空中戦」の会話の正体
会議の進行手法などを扱うことの多いビジネスファシリテーションの分野では、このような上滑りするやり取り、抽象的で観念的、実りのない議論のための議論を、「空中戦」と呼ぶことがあります。
それに対して、常に事実に基づいて進められる、地に足の着いたやりとりを「地上戦」と呼びます。戦争用語を使うのはなるべくなら避けたいのですが、対話の分析において最も重要な考え方をわかりやすくかつ覚えやすく示したパワフルな表現ですので敢えて使わせてもらいます。つまり今回であれば、「会話の空中戦」が始まったわけです。
こうなってしまうと、「なんか抽象的な議論が行き来していて、焦点がしぼれないなぁ」と感じている参加者をしり目に、空中戦が好きな数人が延々とやり取りをすることになります。会議のリーダーがこのタイプだと、絶望的ですよね。
聞いているほうも話しているほうも、それが自分の「思い込み」であることに気づけているかどうか、甚だ疑問です。こうして生まれるコミュニケーションのズレが、将来、重大な問題を引き起こすかもしれません。
賢い人は、事実に絞って聞くようにしています。本書で紹介する「事実質問」は、こういった場面での解決策になります。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』の一部を抜粋・調整・加筆した原稿です)