「ズル休み」ができない人は、結局出世もできない…成果を出すためには「戦略的な妥協」が必要であるワケ【2025編集部セレクション】

2025年5月11日(日)8時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

これまでプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします——。(初出日:2024年5月8日)
要領よく仕事を進めるにはどうすればいいか。教育コンサルタントの塚本亮氏は「学校の試験と違って仕事に100点はない。完璧主義に陥らず、適度に手を抜いて妥協することがときには重要だ」という——。

※本稿は、塚本亮『要領よく成果を出す人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。


■「何もかも完璧にやろうとすると最終的に失望することになる」


完璧主義の人は、細部にまでこだわり、きちんと仕事をやり抜く「職人気質」な人が多いように感じます。テキトーな仕事をしない点において、完璧主義の人は非常に頼もしい存在と言えるでしょう。


一方で、多くのタスクが次々と発生し、同時に複数のプロジェクトを進める必要があるのに、なかなか仕事を手放せないという一面もあります。


完璧な100点を求めてしまうため、最適解の80点でOKを出せないのです。


なぜ、妥協できないのでしょうか?


写真=iStock.com/takasuu
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フェイスブックの元COOであるシェリル・サンドバーグの次の言葉には、完璧主義の人への深い洞察がうかがえます。


「何もかも完璧にやろうとしたり、すべてが正しく行われることを期待していると、最終的に失望することになる。完璧主義は敵である」


完璧主義者は、自分に高い目標を課し、他人の評価を過度に気にし、間違いを過剰に恐れる傾向があります。


だから、妥協できずに仕事を抱え込み、パフォーマンスが下がるのです。


このような性質は、完璧ではない自分を低く評価することにつながり、常に強いストレスにさらされ、結果として精神的健康を害することにつながります。


完璧主義の人は、こうした生きづらさを抱えているのです。


■自尊心を守るために挑戦をしなくなる


より悪い方向に働くと、自分の檻のなかに閉じこもるようになります。


アメリカの心理学者スティーブン・ベルグラスとエドワード・ジョーンズが提唱した「セルフ・ハンディキャッピング」という概念は、この点をよく示しています。


セルフ・ハンディキャッピングとは、「失敗しても仕方がない言い訳」をつくったり、「そもそも挑戦しない」という自己防衛が働く心理のことです。


完璧主義者はしばしば、「忙しいからできなかった」「最近体調が悪いから遠慮する」などと言って、自分を守ります。


写真=iStock.com/AH86
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これによって、自尊心を守ることはできますが、目標に挑戦するよりも、自分を守るための言い訳を探すことに力を注ぐようになるでしょう。


完璧を目指すことに固執すると、このような自己制限的な心理が働くようになり、結果的に自身の可能性を閉ざしてしまうのです。


■そもそも仕事における「100点」など存在しない


目指すべきは、理想的な100点よりも、実用的な80点です。


完璧でなくても、合格点にさえ達すれば仕事は進むのですから、戦略的に妥協することも必要です。


そもそも、仕事における100点なんてありません。学校の試験ではないので、正解は1つではないのです。


完璧主義の人が考える100点が、上司や取引先、市場が求めているものとも限りません。案外、完璧主義の人が「こんなんでいいの?」と首を傾かしげたくなる企画が通ったり、顧客に喜ばれたり、売れたりするケースはたくさんあります。


なお、勉強においても完璧主義は避けるべきです。


たとえば英語学習では、翻訳家でない限り、英単語の意味をざっくりと覚えるだけで十分です。文脈があれば、前後の言葉の流れから大体の意味が掴(つか)めます。


すべての意味を完璧に覚える必要はないのです。しかし、完璧を目指すあまり、しばしば1つの単語にこだわりすぎ、学習が進まない人をたくさん見てきました。


単語学習では「質よりも量」が重要で、多くの単語を覚えることが質の高い理解につながります。そのため、「文脈で意味が変わるので、70〜80%くらいの理解で大丈夫だよ」とアドバイスしています。


適当に力を抜くことも、効率的かつ健康的な生活を送るうえでは、重要なスキルです。


この考え方は、特に現代社会において重要でしょう。


多くの人が成果に対するプレッシャーにさらされている現代、より高いパフォーマンスを求める完璧主義の人は増えているように感じます。


しかし、完璧主義を求めすぎると、ストレスなどで、かえってパフォーマンスが下がるのは先に説明した通りです。


それよりも、戦略的に妥協したほうが、仕事もプライベートもより充実したものになるでしょう。


■仕事も勉強も、要領がいい人はズル休みがうまい


仕事の目標は、一朝一夕で達成できるものではありません。


勉強やダイエットのような目標も同様で、数カ月以上の時間をかけてじっくりと取り組む必要があります。


そこで重要なのは、目標達成のための継続です。適度に休息を取りながら、適度な緊張感を持って続ける習慣が重要です。


しかし、真面目すぎる人は、「サボることはダメ」という意識が強すぎて、疲れていても休まずに続けようとしてしまいます。


息切れしてモチベーションが一気にダウンするのも時間の問題です。


これでは、成果を上げるどころか、目標達成前に倒れてしまいます。


一方で、要領のいい人は息抜きが上手です。私がこれまで出会ってきた要領のいい人は、いい意味で「ズル休み」が上手な印象でした。


いわゆる「チート・デイ(cheat day)」、直訳すると「反則の日」「ズルの日」を設けていたのです。


たとえば、ダイエットではカロリーを制限したり、糖質を控えるため、ストレスが溜まりやすい傾向にあります。ここでストレスを上手に解消できなければ、モチベーションが低下し、継続が困難になります。


■ダイエットを継続させるためのチート・デイ


また、ダイエットではその過程で体重が上下することは普通であり、「あんなにがんばっているのに、うまくいかない」と言って挫折する人も少なくありません。


そこで、ダイエット中でも「好きなものを食べていい日」を週に1回設けてあげます。ケーキやラーメンなど、普段は制限している食べ物を楽しむことで、何カ月もの減量生活のなかで生じるストレスやモチベーションの低下を軽減できるのです。


特に、体重が落ちていない期間でも、チート・デイを上手に活用することで、モチベーションの維持ややる気の再燃につながり、ダイエットの継続が容易になります。


アムステルダム自由大学の研究によると、「チート・デイ」を設けた人と設けなかった人とでは、「チート・デイ」を設けたグループのほうが、目標に向けて継続的に取り組むことができたそうです。


また、この研究から、チート・デイを設けることによって次の3つの効果が得られることがわかったそうです。


第一に、セルフコントロール(自制心を働かせること)力を回復できること。


第二に、モチベーションを維持しやすくなること。


第三に、感情が安定することです。


■プロのアスリートも「好きなものを食べる日」を設けている


実際に、私の友人であるプロアスリートの一人は、週に一度チート・デイを設けて、好きなものを好きなだけ食べる日をつくっています。


その他の日は、食事管理を徹底していますが、このチート・デイを毎週の楽しみの1つとすることで、感情が安定して、モチベーションを落とさずに済み、自制できると言います。


ダイエットを例にチート・デイの効用を説明しましたが、これは仕事も勉強も、何かを続けるという意味で重要です。


何事にも、物事が思い通りに進む時期と停滞する時期の波が訪れます。


物事が思い通りに進む時期は気持ちが乗っているため、疲れを感じにくいのですが、停滞する時期が来ると「疲れが溜まってきた」と感じることがあります。


そうしたときこそ、チート・デイの出番です。


■仕事もプライベートもリフレッシュと切り替えが重要


重要なのは、この時期に自分をさらに追い込まないことです。


チート・デイを利用してリフレッシュすることで、気持ちを切り替え、エネルギーを回復させることができます。



塚本亮『要領よく成果を出す人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)

これは、長期的な継続と目標達成のための効果的な戦略と言えるでしょう。


当たり前な話ですが、仕事もプライベートも、心身が資本となります。


心身が健康であれば、仕事の効率やクリエイティビティも向上し、プライベートの時間もより充実したものになります。


逆に、健康を害すれば、仕事の生産性は低下し、プライベートの楽しみも減少してしまいます。


日々の生活のなかで体調を整え、健康を維持することは、仕事の成功とプライベートな幸福の両方にとって非常に重要な要素です。


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塚本 亮(つかもと・りょう)
トモニツクル京都山城代表取締役、ジーエルアカデミア代表取締役
1984年、京都生まれ。同志社大学経済学部卒業後、ケンブリッジ大学で心理学を学び、修士課程修了。帰国後、京都にてグローバル人材育成「ジーエルアカデミア」を設立。主な著書に、『ネイティブなら12歳までに覚える 80パターンで英語が止まらない!』(高橋書店)、『頭が冴える! 毎日が充実する! スゴい早起き』(すばる舍)、『「すぐやる人」と「やれない人」の習慣』(明日香出版社)などがある。
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(トモニツクル京都山城代表取締役、ジーエルアカデミア代表取締役 塚本 亮)

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