プロの投資家の間で人気のエンハンスト・インデックス運用戦略を「S&P500 Pro」で日本の個人投資家に提供=ティー・ロウ・プライスの新戦略

2025年5月22日(木)10時30分 サーチナ

ティー・ロウ・プライスが新ファンド「ティー・ロウ・プライス 米国株式リサーチファンド(愛称:S&P500 Pro)」を新規に設定する。(写真は、ティー・ロウ・プライス・ジャパンの髙松浩二氏(写真:左)と永井基志氏(写真:右))

 米系の大手運用会社でアクティブ運用においてプロの投資家から高い評価を勝ち得ているティー・ロウ・プライスが新ファンド「ティー・ロウ・プライス 米国株式リサーチファンド(愛称:S&P500 Pro)」を新規に設定する。このファンドは、米国株インデックス「S&P500」をベンチマークとし、同指数を継続的に上回るパフォーマンスをめざす「エンハンスト・インデックス」という運用手法を使ったファンドだ。プロの投資家の間では、インデックスファンド投資と共にこの運用手法を用いたファンドをコア資産として保有し、インデックスに勝るパフォーマンス確保を目指すことが新たな定番になりつつあるという。ティー・ロウ・プライス・ジャパンの株式運用戦略部共同部長の永井基志氏(写真:右)と投信営業部ヴァイスプレジデントの髙松浩二氏(写真:左)に、新ファンドの設定の狙いや活用イメージについて聞いた。

 ——新ファンド設定の狙いは?

永井 プロの投資家の間で急速に広まっている長期的な投資手法によるメリットを、インデックスファンド投資の次の選択肢として、日本の個人投資家の方々にもご享受いただきたいという思いで新ファンドの設定に至りました。

 近年の株式市場を分析すると、過去とは異なる市場環境があります。たとえば、株式投資の運用スタイルとして成長性を重視する「グロース」、割安株に投資する「バリュー」、高品質な企業に投資する「クオリティ」などの分類がありますが、以前は一定期間の周期で市場の牽引役に明確な傾向があったものです。それが、近年は長年続いた低金利環境から金利が上昇し、いわゆる「金利のある世界」となったこともあって、市場のスタイル周期は短期間に目まぐるしく変わってしまうようになりました。成長・割安スタイルや規模別スタイルといった特定分野に傾斜する運用は通用しにくくなってきています。このため、「グロース」や「バリュー」などの投資スタイルの変化や相場環境に運用成績が比較的左右されにくい「コア」型の運用が求められるようになってきました。

 そこで近年、年金基金や銀行、保険会社などプロの投資家の間で採用が進んでいるのが、「エンハンスト・インデックス運用」です。リスクは代表的な株式インデックスから大きく乖離させず同等程度に抑えつつ、きめ細かく、少しのリスクを取りながら高い確率でインデックスを徐々にアウトパフォームする運用成績をめざす運用手法であり、その活用が進んでいます。たとえば、米国「S&P500」をベンチマークとした戦略では、インデックスを構成する500銘柄の中から、業績の良い銘柄の組み入れ比率を高め、相対的に業績の振るわない銘柄を除いてポートフォリオを組む。また、500銘柄の中で株価が割高な銘柄は組み入れ比率を落とし、割安な銘柄の組み入れ比率を上げるなど、きめ細かい調整を行って、異なる市場環境においても「S&P500」を継続的、安定的に上回ることをめざします。このように「インデックス+αのリターン」をめざす工夫された運用手法を「エンハンスト・インデックス」と呼び、近年ではその運用資産残高が拡大しています。

 「エンハンスト・インデックス」は、インデックスへの連動をめざす受動的なパッシブ運用とインデックスを上回る運用成績をめざす積極的なアクティブ運用の中間にあたる運用戦略といえます。ティー・ロウ・プライスではこの投資手法を用いた「米国ストラクチャード・リサーチ株式戦略」が旗艦戦略の一つですが、この度設定する「S&P500 Pro」はこの戦略を採用しています。この戦略は米国で1999年5月末に運用を開始し、2024年12月末時点において25年以上「S&P500」のパフォーマンスを継続的に上回りました。同戦略は、1999年の設定以来、月次で12カ月ローリングリターンが「S&P500」を約80%の確率で上回る成績を残しています。特に、2020年以降に残高を拡大し、2024年12月末には運用資産残高が約821億米ドル(約13兆円)に達しました。米国株式に投資を行なう米国籍「エンハンスト・インデックス・ファンド」としては米国で最も大きな運用資産残高となっています。プロの投資家の間では、「エンハンスト・インデックス」のようなコア型の戦略をポートフォリオの中核資産として長期で保有し、サテライトとしてより大きな収益をめざす「ハイパー・グロース」のような戦略を組み合わせて使うというアプローチが主流になってきています。

 日本では新NISAが2年目に入りました。まずは、インデックスファンドを使ったつみたて投資が多くの方々によって始められましたが、2025年に入り米国株市場では相場の急落を経験されたことなどによって、インデックスファンド投資の次のステップを考えておられる方もいらっしゃると思います。インデックスファンドに投資することと同程度のリスクでプラスαのリターンをめざす「S&P500 Pro」は、インデックス運用とアクティブ運用の優位性を併せ持つ長期投資にふさわしいファンドとして、広く投資家の皆様に認知いただけることを希望しています。

 ——「インデックス+α」のリターンを実現する仕組みは?

永井 ティー・ロウ・プライスのアクティブ運用を支えている約170名のアナリストのうち、トップクラスの実績を持つ30人のアナリストが選抜されて銘柄の調査・分析に当たっています。「S&P500」を11の業種分類で区分し、さらに細かく30のパーツに分割し、そのひとつひとつのパートを選任のアナリストが担当しています。各アナリストは、受け持ったパーツについてそれぞれ最適と考える投資尺度で企業を分析し、組み入れ比率を決定します。たとえば、アナリストが強気の投資判断をした銘柄は「S&P500」の構成比率よりも高い配分率で組み入れ、弱気と判断した銘柄は組み入れ比率を低位に保ちます。このような細かな調整を積み重ねることによって、「S&P500」を継続的に上回ることができる成果を追求しています。また、業種分散を「S&P500」と近い形に維持すること等を通じ、ポートフォリオ特性が「S&P500」と近似的であることも、もう一つの大きな特徴です。調整後の投資銘柄数は約300銘柄になっています。

 米国でティー・ロウ・プライスが運用する「米国ストラクチャード・リサーチ株式戦略」のコンポジットで見て「S&P500」に対する超過リターン実績は、この度日本で設定する「S&P500 Pro」の信託報酬である年0.6105%(税込み)を差し引いたベースで、2024年12月末現在、過去5年で年率プラス0.76%、過去10年では年率プラス0.59%、1999年5月末の運用開始来では年率プラス0.86%になります。運用開始来で0.8%程度の超過リターンはさほどでもないと感じられるかもしれませんが、超過リターンを累積すると200%を超えます。大きな利益をめざすのではなく、相場環境に左右されずに着実に利益を重ねていくことによって、1年あたりの超過リターンは小さくとも大きな収益の差になり得ます。

 ——インデックスファンドで投資している方々は、年0.1%を下回る信託報酬で投資をされています。その方々が年0.6%の信託報酬の商品に移行するでしょうか?

髙松 信託報酬の水準自体を比べると「S&P500 Pro」の魅力は限定的に思えるかもしれませんが、インデックスファンド以外との比較ではかなりコストは低く設定していると思います。また、「S&P500」のインデックスファンドに投資している方の中には、指数を構成する500銘柄全てが成長する銘柄ばかりではないということを感じておられる方も少なくないと思います。「S&P500」のインデックスファンドに投資すれば、本来投資したくないと思うような銘柄にも投資せざるを得なくなります。その点で「S&P500 Pro」は30人もの優れたアナリストが対象銘柄を吟味してポートフォリオを組んでいます。さらに、市場環境や企業の業績などに応じて組み入れ比率を機動的に調節することで常にポートフォリオを最適な状態にメンテナンスします。ここに、インデックスファンドよりも高い信託報酬をいただくだけの付加価値があると考えています。

 また、超過リターンの水準はより高い方が良いですけれども、その分ハイリスクになってしまっては元も子もありません。あらゆる相場環境において、継続的にインデックスを上回り続ける実績を重ねることで、25年間では累計200%もの超過収益につながっています。もちろんこの年率0.86%、累積200%を超える超過収益率は、この度国内で設定する「S&P500 Pro」の信託報酬率を差し引いて計算したリターンです。インデックスファンドを購入されている投資家の方々は、長期での資産形成を目指しておられると思いますので、「S&P500」と同程度のリスクで、「S&P500」をリターンで上回る「S&P500 Pro」は十分にご検討いただけるのではないかと思っています。

 ファンドの愛称に「Pro」を付けたのは、プロの投資家が活用している投資戦略であるということもありますが、スマートフォンの上位スペックの機種が「Pro」と名付けられているようなイメージで選んでいただきたいという思いもあります。同じシリーズのスマートフォンでも「Pro」はカメラの性能が良いなどプラスαの機能が付加されています。「S&P500 Pro」も運用のプロの目線というプラスαの機能が付加されたファンドとして定着することを期待しています。

 今回、「S&P500 Pro」の設定にあたり、私どもとしては初めて楽天証券にお取り扱いいただくことになりました。私どもは「ティー・ロウ・プライス米国成長株式ファンド (愛称:アメリカン・ロイヤルロード)」などアクティブファンドの運用で国内の大手販売会社の皆様に対面でお取り扱いいただく商品を専門にご提供してきました。オンラインでお取引される投資家の皆さま向けの商品の提供は初めてになりますが、プロの投資家の間では「新定番」と言われるような存在になってきた「エンハンスト・インデックス」の魅力を「S&P500 Pro」を通じしっかりお伝えできるよう尽力してまいります。

サーチナ

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