心機一転、伸び伸び快勝! 斎藤八段が伊藤叡王攻略で決着は最終局へ 第10期叡王戦五番勝負第4局
2025年5月27日(火)11時30分 マイナビニュース
伊藤匠叡王に斎藤慎太郎八段が挑む第10期叡王戦五番勝負(主催:株式会社不二家)は、第4局が5月26日(月)に千葉県浦安市の「ハイアットリージェンシー東京ベイ」で行われました。対局の結果、角換わり相早繰り銀のねじり合いから抜け出した斎藤八段が125手で勝利。タイトルの行方は最終局に持ち越されました。
○心機一転の大一番
相掛かりの熱戦を伊藤叡王が制してから約3週、心機一転して迎えたカド番に挑戦者の斎藤八段が用意したのは角換わり早繰り銀でした。本シリーズでは初となる戦型で、相早繰り銀に進んだ局面は早くも定跡を外れます。類型的な形とはいえ細かな違いが形勢差につながりかねないだけに両者慎重に時間を投入。やがて盤上は穏やかな第二次駒組みに入りました。
後手の伊藤叡王が歩得を主張すれば先手の斎藤八段は自陣に引き付けた馬の厚みをアピール。穏やかな模様合戦が続くと思われたところで斎藤八段に意表の好手が出ます。詰められていた玉側の端歩を突き上げるのは専門用語で「地獄突き」と呼ばれる手法で、放っておけば着実な歩の前進があるだけに伊藤叡王も焦らされる形です。この手を境に戦いは先手ペースに。
○攻め切って快勝
斎藤八段の攻めはとどまるところを知りません。歩の手筋を駆使して銀桂交換の駒得を果たしたのち、それを元手に手にした金で今度は飛車を捕獲。緩急自在の構想でわらしべ長者式に駒得を積み上げ優勢を確立しました。これを見た伊藤叡王は局後「左辺を開拓されたときに対抗策が見えず自信のない展開になった」と認めるよりありませんでした。
終局時刻は19時54分、最後は形勢の開きを認めた伊藤叡王が投了。一度も形勢の針を相手に譲ることなく押し切る斎藤八段の快勝譜となりました。斎藤八段はこの日の作戦選択について「黒星先行だったので気分を変えた」ことを明かしました。防衛か奪取か、注目の最終局は6月14日(土)に千葉県柏市の「柏の葉カンファレンスセンター」で行われます。
水留啓(将棋情報局)