ドイツ新首相選出は予想外の展開、メルツ氏は1回目投票で過半数獲得できず…求心力低下を露呈

2025年5月7日(水)0時58分 読売新聞

連邦議会での1回目の投票で首相に選ばれなかったメルツ氏(中央)(6日)=ロイター

 【ベルリン=工藤彩香】ドイツの中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首が6日、連邦議会(下院)での1回目の投票で首相に選ばれなかったことは、国内外に衝撃を与えた。防衛力強化や経済再建など、ドイツが抱える課題は欧州の行方も左右する。早期の政権安定に向け、メルツ氏の手腕が問われる。

 「メルツ議員は選出に必要な過半数の316票を獲得できなかった。彼は首相に選出されない」

 連邦議会で新たな首相を選出するための投票が行われた6日午前。ユリア・クレックナー議長が結果を読み上げると、議会はざわめきにつつまれた。傍聴席で家族らが見守る中、約6時間後に2回目の投票で選出が決まると、メルツ氏は安堵あんどの表情を浮かべた。

 今回、328議席を有する連立与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派・社会民主党(SPD)から造反者が出たことで、1回目の投票では議会定数の過半数を得ることができなかった。2回目の投票で首相に選出されたものの、予想外の展開はメルツ氏の求心力低下を露呈した。

 メルツ氏はアンゲラ・メルケル元首相の政敵で、2009年に政界を離脱。その後、企業の役員を歴任するなど経済的に成功した。18年にメルケル氏の政界引退表明を受けて政界に復帰し、党首選に2度落選するなどの挫折を乗り越え、首相の座を射止めた。

 経済界で企業弁護士を務めた経歴から経済通として知られる一方、閣僚経験がなく、失言癖があるとされる。2日に公共放送ZDFが公表した世論調査によると、メルツ氏を「悪い首相」と考える人は56%で、「良い」の38%を大幅に上回っていた。

 国民の信頼回復に加え、外交でもメルツ新政権の課題は山積する。ロシアによるウクライナ侵略を巡る停戦協議は米露主導で進み、トランプ米政権は欧州に防衛力強化を求めている。経済大国ドイツへの期待や責任は大きく、軍備増強に向け、低迷する経済の再建を通じた長期的な財源の確保が急務となっている。

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