負傷棄権に今もショック拭えず…グッドマン陣営は井上尚弥との三度目の正直を狙うのか「怪我が原因というのは難しい」
2025年1月18日(土)6時0分 ココカラネクスト

練習中のアクシデントで井上戦が中止に。その事実にグッドマン本人と陣営は「打ちひしがれている」。(C)Getty Images
「最悪の事態になった」——ローズCEOが無念さを吐露
周囲の関係者たちにとってもショッキングな棄権であった。来る1月24日にボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)との対戦を予定していたIBF、WBO世界同級1位サム・グッドマン(オーストラリア)のそれである。
【動画】痛々しい左目の裂傷…井上戦を控えたグッドマンの負傷シーン
またしても試合を目前にした中での必至の練習でアクシデントは起きてしまった。そもそもグッドマンは昨年12月のクリスマス・イブに予定されていた井上戦を来日前日に左目上をカット。裂傷箇所を4針も縫う大怪我を負ったために1か月の延期をしていた。
そうした背景があり、本人も、陣営も、「もう井上戦は流せない」と慎重に調整を続けてきた。だが、試合まで約2週間と迫った今月11日にふたたび左目上をカット。縫い付けていた箇所が開き、整形手術を要する怪我を負ってしまったのだ。もはや「世界最強」とも言われる絶対王者と渡り合える状態ではなかった。
2度目の怪我を負う直前に母国のYouTubeチャンネル『Bloke In A Bar』で「1度目の怪我の後は本当に泣きそうになった」と漏らした本人の悲痛さは想像に難くない。トレーナーたちによる負傷箇所のケアに落ち度があったとはいえ、練習中のアクシデントは不可抗力とも言える。
そして、何より井上というボクシング界のスターとの大一番中止の決定は、グッドマンの世界進出を目論んできた陣営にとっても不測な事態であった。挑戦者をプロモートしてきた豪興行大手『No Limit Boxing』のマット・ローズCEOは、母国の格闘技系YouTubeチャンネル『Jai McAllister Boxing&MMA』に出演。沈痛な面持ちで「全員が打ちひしがれている」と語った。
延期が決まってから努力を重ねてきたグッドマンを間近で見つめてきた。だからこそ「本当に心が痛む。最悪の事態になったと思っている」と論じるローズCEOは、こう続けている。
「日本で大きな報酬を得るという機会に我々は幸運にも恵まれた。しかし、今回の怪我でそれを逃してしまった。サムのことを思うと本当に辛いね。こういうことが起きるのもボクシングの一部ではあるけど……、サムの夢は打ち砕かれてしまったという感じがする」
「今の地位を維持できるようにサポートしていく」
気になるのは今後だ。すでに自身が1位に君臨するWBOのグスタボ・オリビエリ会長に向け、暫定的な診断書を送ったというグッドマン陣営。6か月以内の復帰を目論んでいる彼らはIBFを含めた指名挑戦権の保持を画策。将来的な井上との“三度目の正直”を狙うとも伝えられている。
グッドマンの復帰プランについて「今まさに調整している」と語るローズCEOは「怪我が原因で試合が変更となったのは難しい問題なんだ」と明言。その上で無敗の挑戦者の優位性を強調した。
「我々は怪我さえなければ、試合に向けて全力を傾けていたところだ。だから、今はサムが今の地位を維持できるようにサポートしていくつもりだ。そして完全に回復してから、できるだけ早くリングに戻したい。
とにかく大きなチャンスを得られるように目指していく。彼は長く世界タイトルのために努力をしてきた。そしてチャンスを勝ち取った。指名挑戦者として待っている間もアクティブに戦い続けてきたんだ」
もっとも、井上側にも別の世界進出の計画があるとされている。すでに複数の米メディアでは、24日の代役となったキム・イェジョンに勝利した後、WBCスーパーバンタム級1位のアラン・ピカソ(メキシコ)と、WBA同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と、それぞれ米ラスベガスとサウジアラビアで対戦する可能性が報じられている。ゆえに回復を図ったところで、グッドマン側が望む対戦が現実的と言い難い情勢ではある。
何はともあれ、全てはグッドマンの回復状況次第なところではある。彼が6か月以内にリングに返り咲き、ライバルたちとのタイミングさえ合えば、「人生で一番」と位置付ける井上戦が日の目を見るかもしれないが……。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]