“代役マイスター”笹原右京が語る苦労とその利点。SF23初乗りの印象は「マイルド」

2023年3月5日(日)7時50分 AUTOSPORT web

 三重県の鈴鹿サーキットで3月4日に始まった2023モータースポーツファン感謝デーと、3月6日から始まるスーパーフォーミュラ第1回公式合同テストで、山下健太の代役として笹原右京がKONDO RACINGの3号車をドライブする。今季はトヨタ陣営に移籍し、新たなチームメンバーとの仕事を始めた笹原は、今までとは違った刺激を受けているようだ。


■「人の顔と名前を覚えるので精一杯」


 今季もKONDO RACINGの3号車は山下健太がレギュラー参戦をすることにはなっているものの、1月に鈴鹿サーキットで行われたスーパーGTのメーカーテストで大クラッシュを喫し負傷。今回のファン感謝デー及びスーパフォーミュラ公式テストは怪我の回復を優先し、欠席することとなった。


 そこで急きょ空いた3号車のシートに白羽の矢が立ったのが、今季のスーパーフォーミュラではレギュラー参戦の予定がない笹原だった。2月にはSF NEXT50プロジェクトの開発テスト車両のドライバーとして召集されたが、それに加えて山下の代役としてテストに臨むことが先日発表された。


「山下選手がテスト中のアクシデントで怪我をしてしまったということで……代役の話が来たのも結構ギリギリではあったので、結構バタバタでした」とファン感謝デーに登場した笹原。新しくシートを作っている時間もなかったとのことで、昨年12月のルーキー/合同テストでトムスで走行した時と同様、2022シーズンにTEAM MUGENで使っていたシートを流用して、今回の走行に臨んでいるという。


 笹原といえば、これまで代役として参戦するケースが多く、2020年にユーリ・ヴィップスの代役としてTEAM MUGEN(当時の15号車はセルブスがメンテナンスを担当)、翌2021年は病気療養のため欠場することとなった牧野任祐の代役としてDOCOMO TEAM DANDELION RACINGで序盤2戦をドライブした。


 2022年はTEAM MUGENからレギュラー参戦を果たすも、トヨタ陣営へと移籍した今年はレギュラーシートを失い、スーパーフォーミュラに乗る予定がない状態だった。


「多分、歴代の代役記録をはるかに更新しつつあります。もしかすると、ギネスに登録できそうな勢いですね」と、笑いながら冗談まじりに話す笹原だが、周囲が思っているほど、代役で乗るということは簡単ではなく、相当な負担がかかるという。


「パッと見は『代役でとりあえず乗ればいいじゃない』と思っているかもしれないですけど、実際にはめっちゃ大変です。昨年レギュラーが決まった時は気持ちの持ちようや、準備することなども全然違いました。めちゃくちゃ大変です。いかにレギュラーと代役は違うのかを感じています」


「代役は限られたチャンスの中で、成績を出さなきゃいけないとかもありますが、それ以上にチームやメーカーから求められることなどがあるので……本当に大変です」

2023年スーパーGT岡山メーカーテスト TGR TEAM Deloitte TOM’Sの37号車でコンビを組むジュリアーノ・アレジと笹原右京


 特に笹原の場合は、今年トヨタ陣営に移籍し、スーパーGTでは初加入となるトムスのメンバーとなったことに加え、今回スーパーフォーミュラでも、初経験となるKONDO RACINGでドライブすることになる。


「まずは(メーカー)移籍をして、そもそも一緒に仕事をする人も変われば、さらに(テストで)別のチームに行って『はじめまして』という方ばかりだったので、今はいろいろな人の顔と名前を覚えるので精一杯です」という笹原だが、今までとは違うチームでテストをすることで、得られる経験も大きいようだ。


「いろいろなクルマに乗らせていただいているので、すごく自分のプラスになって、引き出しが増えている感じがあります。なので、何をどうすればこういうふうになるんだろうな、というのは想像がつくところがあります」


「あと、僕はホンダとトヨタの両方で経験をさせてもらっていますが(考え方などは)全然違いますね。それぞれのメーカーの特徴というか、スタイルがあるんだなというのは感じました。それこそ、12月のトムスさんのテストで乗せていただいた時から感じていました」


■SF23は「全然違うクルマ、とは感じない」


 そう語る笹原は、さまざまなチームでドライブをすることで、常に新たな発見や気づきがあると笑顔を見せた。


「いろいろな違いを知ることも、すごくプラスになっているなと思います。本当にネガティブなことはなく、ポジティブなことばかりです。それも、周りの皆さんのおかげだなと思っています」


「ある一定の環境でキャリアを重ねていって、そこで進化していくというのが、当たり前かもしれませんけど、今はこうして違う環境になって、そこからいろいろなものを得られて、本当に楽しいです」


「いろいろな発見と気づきがあって、以前は解決できなかったことが、急に『こういうことだったのか』とか、点と点がつながったりする瞬間もすごくあります。今はスーパーGTも含めて、すごく楽しいですね」


 そんな笹原はファン感謝デー初日に行われたSF23のシェイクダウンセッションで14周を走行し、1分37秒656のベストタイムで11番手につけた。


 新空力パッケージを搭載したSF23の印象について「寒い時期のテストなので、なんとも言えないところはありますが、特性としては以前よりはマイルドになったかなという印象です」と笹原。


「SF19の時は、ある意味トガっていて、ハマったら速いですけど、少しでもレンジから外れれば、ガラって印象が変わってしまいます。その辺が、SF23はマイルドになっているのかなと思います。ダウンフォースは確かに(SF19と比べて)減っていますけど、僕は“全然違うクルマ”というふうには感じないですね」と、SF19と比べても、大きな違和感は感じていない様子だった。


 初仕事となったKONDO RACINGのメンバーに対しても好印象を持っているようで、「チームの雰囲気はすごく良いですし、皆さん協力してくれる体制で感謝しています。逆に皆さんも僕が過去いろんなクルマを乗っているのを知っているので、『うちのクルマはどう』と意見を求められることは多いですね。この先どうなるかまったく分からないですけど、違うチームで走った経験を次に繋げられたらなと思います」と、現状をかなり前向きに捉えていた。


 ファン感謝デー2日目の走行はもちろん、3月6日から始まる公式テストで、笹原がどんな走りを見せるのか、目が離せない。

2023鈴鹿ファン感謝デー スーパーフォーミュラ『SF23』ジェイクダウン

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