世界平均より10歳高い日本のF1ファン。東京・お台場のイベントなど、課題に向けた鈴鹿サーキットの取り組み
2025年3月6日(木)12時52分 AUTOSPORT web

F1日本グランプリの舞台である鈴鹿サーキットを運営するホンダモビリティランドの斎藤毅代表取締役社長は、3月4日に行われたホンダF1の3社合同取材会にて、日本F1ファン層の拡大と新たなビジネス機会を創出する取り組みについて説明した。
1950年に始まり、2025年に75周年を迎える四輪モータースポーツの最高峰たるF1。斎藤社長によると、現在のF1はリバティメディアによる運営や、Netflixで配信されているドキュメンタリー番組、新規グランプリの開催などで北米を中心に世界での関心が高まっているという。
こういった流れは鈴鹿サーキットでのF1日本GPも例外ではなく、近年は海外からの観客数が増加傾向で、2024年の日本GPは海外からの来場者が全体の22%にあたる5万人に達し、総来場者数は22万9000人と着実に増加している。
ただ、日本国内のF1人気は“過去のイメージ”が根強く、日本GP来場者の平均年齢は48歳と、F1シリーズ全体の平均ファン年齢の37歳に比べると10歳ほど高い。これは1980年代後半〜1990年代のF1ブームを経験した世代が現在もファン層の中心になっているとし、今後は若年層や家族層にもF1をアピールしていくことが大事だと説明した。
その一端を担うのが、今年は4月2日、4〜6日に東京お台場・青海で開催される『F1 TOKYO FAN FESTIVAL 2025』だ。同様のイベントはこれまで新宿歌舞伎町や六本木ヒルズで車両展示やトークショーを中心に行われていたが、今回のお台場会場では車両展示に加え、日本GPのパブリックビューイング、F1の魅力や興奮を身近に感じられるガレージ、グッズ販売、体験コンテンツ、アーティストのライブステージ、F1開催各国料理のキッチンカーが出展されるなど、規模が拡大される。
また、4月2日にはレッドブルとレーシングブルズのレギュラードライバー4名が参加するF1デモ走行イベント『Red Bull Showrun x Powered by Honda』がお台場・青海の特設コースで開催される。斎藤社長はこれら東京でのイベントは「初めての方でも、ご家族の方でも楽しめるコンテンツを数多く用意しています」とし、お台場を訪れている若者やファミリーといった、これまでF1への関心があまりなかった人たちとの接点を作っていきたいと語った。
「私たちは、これまでレースの運営と鈴鹿サーキットにご来場いただくお客様にご満足いただくことに力を注いでまいりましたが、それらに加え、鈴鹿までお越しいただくことができない方にも、東京でF1日本GPを楽しんでいただける場をホンダグループ一体となって作り上げていきます」
「ホンダのホームである日本・鈴鹿サーキットが将来にわたってF1日本GPを継続開催していくために、私たちはファンの皆さま、そしてこれからファンになっていただける皆さま、さらには一緒に日本のF1を盛り上げてくださる企業の皆さまとF1の魅力や価値を最大化させ、次世代に繋がる取り組みを加速させていきたいと考えています」


東京でのF1イベントに加え、2024年11月には歌舞伎座でラスベガスGPのパブリックビューイングイベントとF1マシン展示を行ったホンダ。今年のF1日本GPでは、公式アンバサダーに就任した歌舞伎俳優の市川團十郎さん、市川新之助さん親子が決勝レースのオープニングセレモニーで歌舞伎舞踊を披露する予定になっているなど、新規ファン層の開拓に力を注いでいる。
しかし、スポーツビジネスという部分では「グローバルでは多くの業界からF1に関わる企業が増加しているのに対し、日本企業の関与はまだ少ない」という問題点があると斎藤社長。また、鈴鹿サーキットにおけるF1日本GPでは交通渋滞緩和や観戦・通信環境改善、観客誘導オペレーション、施設老朽化の補修やホスピタリティ増設といった多くの課題があることは事実とし、これらを“ビジネスパートナーシップ”で解決していきたいという考えを示した。
現在のF1日本GPのBtoB(ビジネス・トゥ・ビジネス)分野では、一部企業とサステナビリティー分野で協業しているが、2025年F1日本GPでは、今後を含めた他企業との取り組みをさらに加速させるため、レースウイークの4月4日(金)にホンダモビリティランド主催の『F1日本GPビジネスカンファレンス』が鈴鹿サーキットで開催される。
日本国内企業向けに初開催となるカンファレンスでは、ビジネス視点での魅力や活用事例を紹介するとのこと。斎藤社長は「多くの可能性を含んでいる」としたうえで「F1日本GPをビジネスフィールドとして捉えていただく働きかけを行っていきます」と期待を寄せた。
「モビリティ文化の醸成、モータースポーツ振興の拡大をミッションに掲げている私たちは、世界的に多くの方に愛されているF1、そして日本GPという素晴らしいスポーツエンターテイメントの可能性を広げていくことが責務であり、F1に主体的に関わるホンダグループの一員として、日本のファンの皆さま、企業の皆さまに関心を持っていただけるように、また、モータースポーツの魅力をお伝えできるよう、新たなアプローチを推進してまいります」
さまざまな取り組みを通じて国内外のF1ファン拡大と日本GPの魅力を高めている鈴鹿サーキット。今後は世界で広がるスポーツビジネスの分野で新たな機会を作り、次世代に繋がるイベントを目指していることが感じられた。
