阪神の通訳がブラジルのWBC出場になぜ貢献? 春季キャンプを離れて続けた“異例の挑戦”「とても規律正しいキーマン」

2025年3月9日(日)6時0分 ココカラネクスト

ブラジル代表の一員としてWBC出場をかけた戦いに挑んだ伊藤。(C)Getty Images

 意外な背景を持つ“名手”の存在が球界でにわかに話題となった。

 現地時間3月6日、米アリゾナ州トゥーソンで来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)予選の米国ラウンドが開催。6-4でドイツを下したブラジルが、第3回以来3大会ぶりの本戦出場を決めた。

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 世界的に「サッカー王国」の印象が強い大国が野球の本場で快哉を叫んだ。ヤクルト外野守備走塁コーチの松元ユウイチ氏に率いられたブラジルは、初回に1点を先制されるも、直後に元メジャーリーガーのダンテ氏を父に持つ、4番ダンテ・ビシェットJr.の適時打などで逆転。さらに2-2で迎えた3回には再びビシェットの中前適時打で勝ち越しに成功。その後は元広島の仲尾次オスカルらの継投で逃げ切った。

 3年ぶりの世界大会への切符を勝ち取った精鋭たち。その快進撃に小さくない貢献を果たしたのが、日系ブラジル3世の伊藤ヴィットル。阪神で務めている通訳業との掛け持ちで挑んだ大会だった。

 野球の才覚は折り紙付きだ。生まれてから中学までをブラジルで過ごした伊藤氏は、父親や兄弟の影響で幼い頃からサッカーではなく野球に没頭。実力はめきめきと伸び、来日後に進学した共栄大4年時の16年のWBC予選でブラジル代表に初選出されていた。

 プロ入りの夢こそ果たせなかったが、共栄大を卒業後も社会人野球の名門・日本生命で5年間プレー。23年1月に日本生命硬式野球部を退団してからは同社での業務を続けていたが、昨年4月に通訳として阪神に入団。スペイン語と英語を駆使しながら助っ人陣をサポートしてきた。

 迎えた今予選では、打率.385、OPS.770を記録。守備でも遊撃手として堅実なプレーを披露し、日本で培った野球の実力を遺憾なく発揮した。

 現役引退のブランクを感じさせない伊藤の貢献には、指揮を執る松本氏も舌を巻く。MLB公式サイトのインタビューに応じた際に「ゲームプランに従うという点でとても規律正しい。そしてディフェンスも非常に優れていて、イトウはこのチームのキープレーヤーの一人だと思う」と絶賛した。

 通訳業を兼ねる中での異例の挑戦を続ける29歳は、「自分は日本に行ってからは、100%日本のスタイルでプレーしてきた」と強調。日本でのキャリアで得たインスピレーションが大きな自信になっていることを語っている。

 大会後はふたたび阪神に合流する伊藤。日頃は黒子役に徹する男が、来春のWBCで表舞台に立つ姿が見てみたい。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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