【記者の目】横浜M、ホーランド監督解任劇のポイントだった“言葉の力” フロントの責任は軽くない
2025年4月18日(金)23時25分 スポーツニッポン
横浜F・マリノスは18日、スティーブ・ホーランド監督(54)の解任を発表した。就任から約3カ月、アルナスル(サウジアラビア)とのACLE準々決勝8日前の電撃解任。この日からパトリック・キスノーボ・ヘッドコーチ(HC、44)が暫定的に指揮した。
【記者の目】ホーランド氏は最後までチーム全体と意思疎通できなかった。実は開幕節・新潟戦からその兆候はあった。就任直後から着手し“肝いり施策”のはずだった新戦術3バックを同戦途中から急きょ4バックに変更。だが、その重要な指示や意図がピッチ内へうまく伝わらずドロー。戦術変更が伝達されたタイミングもピッチ内で差があり、ある選手は「4バックは練習でやってなかったので、守備の距離感や攻撃も最初から最後まで戸惑いがあった」と困惑していた。
選手起用を巡っては、試合途中の交代カードを投入するタイミングが疑問視されていた。16日の清水戦では2点リードしながら後半26分に同点とされるまで1度も交代せず、同36、39分に1人ずつ代えただけ。ホーランド氏は「代えれば良いというわけではない」と語っていたが、チーム内部からは「もうちょっと早く選手交代した方がいいのでは」と不信感が募っていた。
関係者によると、練習内容やミーティングでも「何がしたいのか分からない」と現場が混乱することもあったという。さらに清水戦後の監督会見では「(9日の)川崎F戦が30秒早く終わっていれば勝利、今日の試合も前半で終わっていれば勝利で(2試合で計)勝ち点6で上位にいたと思うけど、現実はそうはさせてくれなかった」とコメント。“たられば”を繰り返す発言は指揮官の言葉として適切とは言えず、迷走しているのは明らかだった。
西野努スポーティングダイレクター(SD、54)は10日、報道陣を集め、指揮官交代のボーダーラインを「監督の言葉が力を失った時」と説明していた。この発言からわずか8日での解任劇。就任3カ月でのスピード解任ではあるが、求心力はかなり前から失われており、西野氏の言葉の意味からすれば、決断が遅かったと言わざるを得ない。
ACLE準々決勝アルナスル(サウジアラビア)戦は26日。このタイミングでの指揮官交代により、新体制は20日の浦和戦を経て、ほぼぶっつけ本番で決戦の地サウジアアラビアへ乗り込むことになった。昨季のハリー・キューウェル氏に続くシーズン途中の指揮官交代劇。フロントの責任は軽くない。(横浜M担当・滝本 雄大)