「完璧を出せた」V10内村航平以来5連覇の橋本大輝 パリ五輪後休養予定を覆した仲間の存在
2025年4月21日(月)5時30分 スポーツ報知
男子個人総合で5連覇を果たした橋本(カメラ・岡野 将大)
◆体操 全日本個人総合選手権 第4日(20日、高崎アリーナ)
個人総合で争う男子決勝が行われ、21年東京五輪の男子個人総合金メダルの橋本大輝(23)=日本生命・セントラルスポーツ=が、予選との合計169・695点で内村航平以来、大会史上5人目となる5連覇を達成した。4月にプロ転向した初戦で、昨夏のパリ五輪3冠の岡慎之助(21)=徳洲会=との新旧五輪王者同士の白熱の争いを制し、世界選手権(10月、インドネシア・ジャカルタ)代表入りに大きく前進した。
王者の顔は充実感に満ちていた。橋本は歴代最多10連覇の内村以来の5連覇の偉業を、史上初となる新旧の五輪個人総合王者対決を制して成し遂げた。「5回目が一番大変でした。東京(五輪王者)が意地を見せたいなと思っていた。完璧にやらないと勝てないと思ったけど完璧を出せた。大きな一歩」と言葉が弾んだ。
岡と0・633点差で迎えた決勝。4種目目の跳馬で一時は逆転したものの、5種目目の平行棒で今大会から取り入れたE難度の技でミスが出て再逆転され、その差は0・667点差に開いたが、ハイライトは得意の最終種目・鉄棒だった。G難度「リューキン」(伸身トカチェフ1回ひねり」を前半で決めると勢いをつけ、終末技の伸身の新月面を完璧に決めて着地もピタリ。
今大会唯一の15点台となる15・033点の高得点で会場を沸かせた。最後の岡は序盤にミスが出て土壇場で再逆転。「気持ちのいい演技ができた。新ルールの中で15点台を出せたのは良い経験。見ている人は面白い試合だったのでは」と笑顔で手応えを口にした。
ルールが大幅に改正され、他選手が安定感を重視する中、橋本は高難度の演技構成を追求する強気な姿勢を貫いた。4月に内村さんの背中を追ってプロに転向して迎えた今季初戦。「下の世代は僕たちを目標にレベルを上げている」と責任感が背中を突き動かした。
個人総合6位、個人種目のメダルなしで終わったパリ五輪後、1年休養することを考えていたと明かしたが、翻意したのは仲間の存在だった。「五輪の1か月後くらいに多分、(岡)慎之助だと思うんですが『この5人でもう一回五輪に出たくないですか』と言われた。世界一になりたいという火がまた付きました」と橋本。28年ロサンゼルス五輪に“忘れ物”を取りにいくために、3年で土台を作り上げる。「常に先を見据えて戦いたい」。自信と自覚を手にした23歳は世界の頂点へ目を向けた。(松末 守司)
◆橋本 大輝(はしもと・だいき)2001年8月7日、千葉・成田市出身。23歳。市船橋—順大。6歳から佐原ジュニアで競技を始める。高3だった19年の世界選手権に白井健三以来、史上2人目の現役高校生で出場し、団体銅メダル。21年東京五輪は個人総合で史上最年少金、種目別鉄棒で金、団体で銀。22、23年世界選手権個人総合で金メダル。パリ五輪では団体総合で金メダル。167センチ、58キロ。
◆世界選手権代表 男子は最大6枠。全日本選手権の予選、決勝の平均得点を持ち点に争う5月のNHK杯で個人総合2枠を決定する。種目別枠は、全日本とNHK杯の各種目の最上位者を代表候補に選び、日本協会が7月までの国際大会の内容、結果を考慮して最大4人に絞る。