北海道コンサドーレ札幌の“新たな心臓”田中克幸とは?ファンタジスタの魅力に迫る

2025年4月22日(火)18時0分 FOOTBALL TRIBE

田中克幸 写真:Getty Images

北海道コンサドーレ札幌に新たなファンタジスタが誕生しようとしている(※)。新潟県の帝京長岡高校から明治大学を経て2024シーズンに入団したMF田中克幸である。昨シーズンはルーキーイヤーながら明治安田J1リーグで17試合に出場し1ゴールをマーク。数字だけを見るとそれほど活躍したようには感じられないかもしれないが、田中のボールタッチシーンは球離れの良さや視野の広さ、足元の技術の高さなど高度な技術が隠れている。ほかにもチャンスクリエイトの起点となるシーンが多いなど札幌サポーターからの期待は大きい。


J2降格となった今シーズン。これまで7シーズンボランチとして活躍していたMF駒井善成が昨年12月に契約満了となったこともあり、当然ながら田中には主力としてプレーする事が期待された。開幕から2試合連続で出場を果たすも、その後は左膝外側側副靱帯損傷で戦列を離れており、今シーズンはここまでわずか5試合の出場となっていた。しかし、第8節の徳島ヴォルティス戦(1-0)から復帰するとチームに攻撃のリズムが見え始め、田中は間違いなく今シーズンのキーマンと言えるだろう。


チームはこれよりRB大宮アルディージャ、V・ファーレン長崎、モンテディオ山形、ジュビロ磐田といった強豪チームとの直接対戦を控えており、結果次第では上位進出もまだまだ狙える位置につけている。ここでは、日本人では希少になりつつある“ファンタジスタ”の素質を持つ田中のパフォーマンスについて紹介する。


※驚異的なテクニックや創造性で観客を魅了する、技巧に富んだ選手のこと。




北海道コンサドーレ札幌 写真:Getty Images

個で打開、田中の力が光った2戦


今シーズンのJ2第9節水戸ホーリーホック戦(1-3)や第10節の藤枝MYFC戦(2-1)は、田中の良さが凝縮された試合だった。大学時代まではボランチを主戦場としていたが、プロ入り後はトップ下でも起用され藤枝戦ではトップでも起用されている。田中の持ち味はなんといっても視野の広さやハイレベルな足元の技術で、ボールを持つとチームの攻撃にスイッチを入れることが出来る。ほかにも長短のパスを使い分けたりタッチの細かいドリブルや強烈なミドルシュートと抜群の存在感を放っている。


水戸戦では試合開始早々、ドリブルでアタッキングサードに侵入したMF青木亮太からのパスを受けた田中が強烈なミドルシュートを放ち右ポストを直撃。惜しくもゴールとはならなかったが、仮にこれが決まっていたら試合は真逆の展開となっていたかもしれない。続く第10節の藤枝戦では1点ビハインドで迎えた30分、わずかにペナルティエリア外の位置で直接フリーキックを得ると、田中が蹴ったボールが相手GKの手を掠めゴールネットを揺らし同点に追いついた。札幌がフリーキックに成功したのは、2024年7月に開催されたJ1第23節のヴィッセル神戸戦以来である。その後は後半開始早々にFWアマドゥ・バカヨコがゴールを決めて逆転に成功。56分には最終ラインに位置していたMF高嶺朋樹の縦パスを、プレッシングに来ていた藤枝の選手をワントラップで剥がし田中が縦へ推進したシーンには度肝を抜かされた。このように、個の力で状況を一変できる選手は今の札幌にはいないため、その価値は極めて高いと言える。




福森晃斗 写真:Getty Images

田中が新キッカーに名乗り


近年、札幌のプレースキッカー(※)は左足の精度の高さを誇るDF福森晃斗が務めていたが、その福森は現在横浜FCに期限付き移籍中だ。そのため札幌は、昨シーズンから絶対的なプレースキッカーが不在。コーナーキックやフリーキックの場面でも中々ゴールの雰囲気が漂ってこなかった。しかし、そんな心配を晴らしたのが田中である。


ピッチ上空に強風が吹きつけた第9節の水戸戦では、田中がコーナーキックで風をうまく利用。インスイングでのキックが起点となり、MF近藤友喜の一時同点ゴールを演出した。第10節でもフリーキックを見事に突き刺すなど、札幌は徐々にセットプレーからの得点の匂いが漂い始めている。


※試合が一時中断された後、地面に置かれたボールを蹴る選手のこと。




北海道コンサドーレ札幌 サポーター 写真:Getty Images

土壇場で魅せた衝撃のJ1初ゴール


昨シーズン8月に行われたJ1第26節のアビスパ福岡戦(2-2)。田中は1-1の場面で83分に投入された。90分+6分にDF亀川諒史の勝ち越しゴールが決まり誰もが福岡の勝利を確信したが、そんな逆境の中でも大卒ルーキーの田中は落ち着いていた。90分+9分にMF中村桐耶のヒールパスを受けた田中がペナルティエリア付近から強烈なシュートを放つと、ボールはニアサイドに突き刺さり劇的な同点弾となった。田中のJ1初ゴールがチームに貴重な勝ち点1をもたらした。


1点ビハインドで迎える終盤の場面では、サイドに展開してからセンタリングへと転じることが多いが、田中はボールをフリーで受けると迷わずゴールを狙った。この並外れた度胸や強靭なメンタルは、近年の日本人選手の中でも突出しており、今後の活躍が非常に楽しみな選手である。




今回は札幌の“新たな心臓”として君臨するMF田中克幸の魅力やプレーについて紹介した。今後もチームをJ1へ導く活躍はもちろん、意外性のあるワンプレーで日本サッカーを盛り上げる姿に期待したい。

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