井上尚弥を“苦しめた”カルデナスは「勝者だ」 敵陣営の名参謀が送った言葉「本気でイノウエに勝ちに行った姿が人の心を打った」
2025年5月9日(金)7時0分 ココカラネクスト

井上と試合後に2ショットを撮るカルデナス。(C)Getty Images
舞台となった米国のみならず、日本はもちろん、世界で注目された激闘だった。だからこそ、敗者にも光は当たる。
日本でも存在が小さくない話題となったのは、ボクシングのスーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)と打ち合いを見せたWBA同級1位のラモン・カルデナス(米国)だ。
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最終的には8回45秒TKOで敗れた29歳だったが、“爪痕”はしっかりとモンスターに刻み込んでいた。とりわけ衝撃的だったのは2回だ。終盤に接近戦となった際、井上の放った左のパンチをスッと身体を落として交わした刹那、左フックを炸裂。これが見事に直撃し、ダウンを奪ったのだ。
本人曰く「見えていなかった」だったという一撃だが、井上が「映像の2、3倍強かった」と語ったように衝撃は間違いなくあった。このダウンがあったからこそ、「イノウエの圧倒的優位」という下馬評があった試合は白熱し、人々の間で娯楽の尽きないものとなった。
井上からのアップセットには至らなかった。それでも持てる力を尽くしたカルデナスを、名トレーナーは褒めちぎった。
試合後に更新されたカルデナスのYouTubeチャンネル『Dinamita Cardenas』の動画内で、井上との激闘直後に関係者からねぎらいの言葉をかけられる挑戦者の様子が公開。そこで、陣営の参謀役で、トレーナーを務めるジョエル・ディアス氏が「お前は真の戦士だ。誇りに思う。こうして一緒に戦えて幸せだ」と賛辞を贈った。
数多の名手を手塩にかけてきたディアス氏は、傷だらけのカルデナスを目の前にし、「戦うと決めたら、どんなやつが相手でも戦い抜くのが俺たちだ。それをお前が証明してくれた」と強調。あらためて井上に挑んだ雄姿を称えた。
「いいか? お前が本気でイノウエに勝ちに行った姿が人の心を打ったんだぞ。それはお前の勝利でもあるんだ。勝っても嫌われる選手よりも、負けてなお人に愛されるやつのほうが凄いんだ。だから今日のお前は『勝者』だ」
何よりも欲した勝利は手にできなかった。それでも最後の最後までリスペクトを持って、井上に挑み続けたカルデナス。勇ましい試合後の振る舞いも含めて戦いぶりは見事という他にない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]