井上尚弥vsカルデナスは「本物の戦い」 米名物記者が指摘したベガス決戦の“成功”「イノウエは自分を危険にさらす覚悟があった」

2025年5月9日(金)5時30分 ココカラネクスト

試合後は笑顔で互いの健闘をたたえ合った井上とカルデナス。(C)Getty Images

 エキサイティングかつスリリングな一戦に対する評価は、まさに青天井だ。ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が、現地時間5月4日に米ネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナでWBA同級1位のラモン・カルデナス(米国)と繰り広げた激闘の声価が高まる一方なのである。

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 井上陣営にとっては緊張感のある試合だったかもしれない。なにせ2回にカルデナスが放ったカウンターの左フックを被弾。強烈な一打を顔面に受けた“絶対王者”がいきなりダウンを奪われる展開となった。

 しかし、そこから井上は格の違いを見せつけた。「映像で見ていたより、もっともっと強い選手」とカルデナスの勢いを見定めた“モンスター”は、アプローチを修正。手数を増やした4回以降は主導権を握り、7回にダウンを奪うと、続く8回には猛ラッシュでふたたびダウンを奪取。ここでレフェリーが試合を止めた。

 井上にとってラスベガスでは約4年ぶりの一戦だった。それも過去2戦は新型コロナの感染拡大の最中の無観客という状況。それだけに今回のマッチメイクは米国内の大衆に自身を証明するという意味合いは大きかった。

 そうした中で生まれたドラマチックな展開に大物識者の評価は上々だ。かつて米スポーツ専門局『ESPN』の記者を務めていたスティーブ・キム氏は、米メディア『Snac』に掲載したコラムにおいて「本物の戦いだった」と井上とカルデナスの激闘を評した。

 キム氏が井上の防衛劇を「本物」を評する理由は、同週末に大物選手たちが相次いで期待を裏切る内容に終始していたことに起因する。

 この一戦は、メキシコ最大級の休日で、業界内屈指のメガマッチが組まれる「シンコ・デ・マヨ」のメインイベントでもあったのだが、今年は5月2日にニューヨークで元WBC世界ライト級暫定王者ライアン・ガルシア(米国)が0-3判定負け、翌3日にはサウジアラビアでスーパーミドル級王者サウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)が「凡戦」と揶揄される内容で2度目の4団体王座統一成功。いずれも、賛否両論を呼んでいた。

「リスクを冒してまで大衆を楽しませるという大胆さも持ち合わせていた」

 そうした中で井上は“鬱憤”を吹き飛ばした。『CBS Sports Network』のアナリストでもあったキム氏は「期待外れの週末になりつつあったボクシング界だが、最後の最後に最高の試合が残されていた。『モンスター』は救世主となった」と激賞した。

「イノウエはただ勝つだけでなく、リスクを冒してまで大衆を楽しませるという大胆さも持ち合わせていた。他の選手が『安全第一』を最優先する一方で、彼は自らの使命を果たすために自らを危険にさらす覚悟があった。おそらくファンに啓蒙するためにそうしているわけではないだろうが、彼の仕事ぶりはファンを満足させている」

 井上のリスクを取っても、相手を倒しに行く戦い方を評価したキム氏は「自分自身に問いかけてみてほしい。自分の稼いだお金を費やしてでも、もう一度見たいボクサーは誰だろう?」と読者に問いかけ、こう続けている。

「いや、彼も完璧ではない。というよりも、現実世界に完璧なプロボクサーなど存在しない。しかし、イノウエは、そのパフォーマンスにおいて比類なき存在だ。リング上で効果的でありながら、なおかつ人を惹きつける魅力を持つ現代ボクサーは稀有だ。他のボクサーの大半は喜んでリスクの少ない道を選ぶだろうが、イノウエは違う。自ら進んで戦いに身を投じるだろう」

 魅力に溢れた内容で、戦いを終えた井上。その激闘は、“ボクシングの本場”の識者の感情を揺さぶった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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