ACLEでの“サウジ勢優遇”は「無視できない」 公平性欠くアジアの戦いに英紙が苦言「圧倒的支配が懸念を呼んでいる」
2025年5月11日(日)11時0分 ココカラネクスト

川崎を破り、快哉を叫んだアル・アハリの面々。(C)Getty Images
アジアの戦いで薄れる「公平性」
公平性とは何か——。アジアの頂点を極める戦いで“ある課題”が浮き彫りになった。
今シーズンのAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)は、サウジアラビアの名門アル・アハリの優勝で幕を閉じた。現地時間5月3日に行われた決勝では、ベスト4の中で唯一東アジアから勝ち上がってきた川崎フロンターレを圧倒。2-0の完勝で1937年のクラブ創設以来、史上初となる大陸制覇をやってのけた。
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中東の雄が快哉を叫んだ今大会だったが、誤解を恐れずに言えば、異質さが際立つトーナメントでもあった。というのも、準々決勝からの7試合は「ACLEファイナルズ」と銘打たれ、サウジアラビア第2の都市ジェッダで集中開催。強力な“ホームアドバンテージ”を受けた同国勢は力を発揮し、ベスト4にはなんと3チームが勝ち上がった。
ヨーロッパの覇権を争うチャンピオンズリーグに代表されるように、こうしたクラブ間の国際コンペティションはホーム&アウェー方式が常。それが公平性を保つ最善策とも言える。しかし、「選手の負担を考慮した」というAFCは、23年から政府系ファンド「PIF」が巨額投資を繰り返し、サッカー界全体でも存在感を強めるサウジアラビア勢が有利となる方式を取った。
実際、長距離移動を強いられた東アジア勢の不利は明らかだった。準々決勝の一発勝負で、これまたサウジアラビアのタレント軍団アル・ヒラルと激突したKリーグの光州FCは20時間もの移動の末に試合に臨んでいた。時差ぼけの調整もままならない状況下では、相手との地力を考えても相当な負担があったのは想像に難くない。
こうしたAFCで生じた違和感は、国際的にも疑義が向けられている。英紙『The Guardian』は「サウジアラビアによる圧倒的支配が懸念を呼んでもいる。その意味でも、5度のJリーグ王者である川崎が、『勇敢な挑戦者』として扱われながら、実際に試合ではほとんど相手にならなかったという事実は象徴的だった」と指摘。準々決勝以降の全試合をジェッダで集中開催するというAFCの判断を痛烈に断じている。
苦境の東アジア勢
いわゆる「サッカーの母国」とされるイングランドから見ても今のACLEの在り方は異質だ。PIFの後押しを受けたアル・ナスルがクリスティアーノ・ロナウドを獲得して以来、8億ポンド以上のメガマネーを費やしてきたサウジアラビア・サッカー界を「アジアサッカー界を一変させた」とする同紙は、こう続けている。
「不思議なことに——いや、正確にはアジアサッカーにおける政治的権力が長らく東から西へと移動していることを考えれば不思議でもないが——ジェッタでの集中開催という決定は、あまり大きな議論はなかった。しかし、ベスト8の試合で、地元3クラブが東アジアのチームに合計スコア14-1で勝利した時、この決定の問題点は無視できないものとなった」
さらに同紙は、「新たなフォーマットは、東アジア勢が栄光を掴む可能性をほぼゼロにしてしまった」と断じた上で、その不平さを皮肉っている。
「アジアで明らかに最強であるサウジのクラブに、ノックアウトステージで自動的なホームアドバンテージは必要ないし、大会にも必要ない。以前のホーム&アウェー方式には何の問題もなかった。それは公平だったし、ジェッダやリヤドのチームが勝ち進めば壮大な舞台でビッグゲームを開催できるが、それは他の全ての都市にも平等に与えられるべきチャンスだった」
国際的な批判は強まって入るものの、今後もサウジもしくは中東での集中開催が見込まれるACLE。この異様なトーナメントでJリーグ勢がいかに食い下がっていくのかは、国内サッカーの発展を推し進める上での小さくない課題ともなりそうだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]