【U20W杯注目選手③】“パリの韋駄天”スター軍団に囲まれ飛躍/ムサ・ディアビ
2019年5月20日(月)19時42分 サッカーキング
一方で、攻撃のキーマンとなるのが、ムサ・ディアビ。マリにルーツを持つパリ生まれの19歳で、パリ・サンジェルマンの下部組織で育ったウインガーだ。
ディアビの持ち味は、全身バネと言えるような、しなやかな身のこなしと、爆発的な加速力。スルーパスに反応する瞬発力、ワンタッチ、またはワンステップで相手DFを置き去りにするような初速の速さ、またトップスピードの中でもブレないボールタッチは、この年代の選手で右に出る者がいない。サイドから相手をちぎってゴールへ突進していくプレーは、たとえるならリヴァプールのサディオ・マネのようだ。
彼は13歳でPSGのユースに参加し、小柄な体格をハンデとしながらも持ち前のスピードとアシストのセンスで着実に階段を上がり、2017−18シーズン後半にはイタリアのクロトーネにレンタル移籍し、プロデビューを飾った。そして今シーズンは、キャリアにおけるターニングポイントとなった。開幕前は再度のレンタルが計画されていたが、プレシーズンマッチのアトレティコ・マドリード戦でゴールを決めると、トーマス・トゥヘル新監督は彼をチームに残すことを決断。カーンとのリーグ・アン開幕戦で彼に途中出場のチャンスを与え、PSGでのデビュー機会を手渡したのだ。
ディアビはすぐにトゥヘルの期待に応える。出場3試合目となった9月の第5節サンテティエンヌ戦で得意の左足を振り抜き、プロ初ゴールを挙げたのだ。これで自信を掴むと、以降はコンスタントに出場機会を得て、チームの名だたる一流選手たちにアシストを量産。スター軍団PSGのなかでもすっかりトゥヘルの信頼を勝ち取って、うち20試合が交代出場ながら、今季は公式戦33試合出場で4ゴール7アシストという10代にしては十分すぎる結果を出した。
そんな飛躍のシーズンの総決算となるのが、今回のU−20W杯だ。ディアビはフランスがベスト4に進出した昨年のU−19欧州選手権で大会ベストイレブンに選ばれているが、この1年でさらに大きく成長しており、W杯の舞台ではさらにひと回りもふた回りも大きな姿を見せるはず。フランスの次代を担うパリが生んだ韋駄天の活躍は、ぜひチェックしておこう。
文=寺沢薫