高校野球監督が抱える最大の苦悩...関東大会V健大高崎の青柳監督「情けを捨てる」覚悟

2025年5月25日(日)21時54分 スポーツニッポン

 第77回春季高校野球関東大会は25日にノーブルホーム水戸で決勝が開催され、健大高崎(群馬)が7—2で専大松戸(千葉)を下し、2年ぶり4度目の優勝を果たした。

 アマチュア野球を担当する記者は東北・関東エリアの高校、大学、社会人野球を取材する日々を送る。昨秋、心に引っかかるスローガンに出会った。東京六大学野球連盟のポスターに記された「これが最後かもしれない」。この言葉がこの春、高校野球取材で何度も心に響いた。

 高校野球取材を始めて7年目。監督の最大の悩みは夏のメンバー選考だと思っている。3年生選手の最後の夏に懸ける思いはとんでもなく強く、大会でミラクルを起こす力を持っている。ただ、それだけにベンチ入りを逃せば気持ちの糸が切れてしまうこともあり、チームの雰囲気に直結する。高校入学から2年半、努力してきた選手たちの姿は指導者の脳裏に焼き付いている。ただ、情で勝てるほど高校野球は甘くない。力のある下級生を適切にベンチ入りさせることは戦力アップ、チームの公平性につながる。このバランスを取ることは非常に難しい。勝利したチームの指揮官が「スタンドの応援が力になった」とコメントすることがしばしば、ある。それは本心だろう。

 関東大会は健大高崎の優勝で閉幕。群馬県大会初戦から追ってきた記者は「これが最後かもしれない」と何度も思った。県大会2回戦では岩田幸弥内野手(3年)が公式戦初打席で左越えアーチを架けた。「絶対に夏のメンバーに入ってやる」と全てを懸けた一振りだった。この試合、投げては2年時の学校成績が「オール5」だった文武両道の左腕・築山新(3年)も公式戦デビュー。2回を投げて5三振を奪うベストピッチを披露し「健大の背番号を背負って投げられてよかった」とかみしめていた。

 

 これが最後かもしれない。そんな選手たちが一球入魂。見守る保護者の気持ちは言葉にできない。それでも高校野球の監督は20人のベンチ入り選手を決断しなければならない。チームの中心となっている石垣元気(3年)、佐藤龍月(りゅうが=3年)は1年時からベンチ入りしたからこそ、経験値を得ることができた。1、2年選手のベンチ入りはチームの未来のためでもある。

 高校野球監督が抱える最大の苦悩。関東大会の試合後、青柳博文監督に質問した。

——いよいよ夏へのサバイバル感が増してきたかなと思います。

 「そうですね。大会を終えてからの練習試合の結果で20人を選びますけど、今度(夏)は(大会途中で)変更できませんからね。もう本当に一発勝負。非常にいい感じで競争ができています」

——この2年半見てきた3年生に情は湧かないでしょうか。

 「夏に関してはもう別の大会だと思ってやっています。もう情を捨てて、本当に自分の気持ちも捨ててね(メンバーを)選びたいと思いますね」

 これで夏前の公式戦は終了。残された練習試合が「情けを捨てる」青柳監督の判断材料になる。選手たちは「これが最後かもしれない」チャンスで悔いなくプレーできることを願っている。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)

スポーツニッポン

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