ドジャース・大谷 笑顔の二刀流試運転!早くも出た術後最速156キロ “魔球”ツーシームも投げた
2025年5月27日(火)1時30分 スポーツニッポン
笑顔の22球だ。ドジャース・大谷翔平投手(30)が25日(日本時間26日)、敵地でのメッツ戦前に23年9月の右肘手術後、初めてのライブBP(実戦形式の打撃練習)に登板。打者5人に安打性1本、2奪三振で、最速97マイル(約156キロ)を計測した。動きの大きなツーシームを披露するなど、球宴後の投手復帰へ大きな一歩。その後の試合では、初回先頭で両リーグトップタイの18号ソロを放つなど、上々の“二刀流試運転”だった。
無邪気な笑顔が全てを物語っていた。大谷が、右打席のJ・T・ワトキンス戦略コーチを内角低めに食い込むスプリットで空振り三振。大リーグ公式SNSが「Absurd movement(不条理な動き)」と反応した一球に、球審の三振コールのようなガッツポーズを見せ、笑いながら左胸を叩いた。投手復帰へ大きなステップの22球。うれしくて仕方なかった。
「自分がピッチャーをやってるっていうのを若干、思い出した感じもあるんじゃないかな」
メッツ戦開始4時間40分前の午後2時31分。左打席の金慧成(キム・ヘソン)に、深くお辞儀してからライブBPが始まった。エンゼルス時代の23年8月23日、レッズ戦以来641日ぶりの打者との対戦。これまでのセットポジションからノーワインドアップに変えた新フォームから、4球目の直球での投ゴロでは、大げさに一塁に投げるふりをして笑った。右打者想定で急きょ打席に立ったワトキンスコーチ、左打者のラッシングはスプリットで連続空振り三振。直球、ツーシーム、スプリット、カットボール、スイーパーの5球種での1安打2奪三振1四球に「ステップを踏めた意味では凄く良かった。納得できる内容だった」と喜びがあふれた。
「1回目なので(球速を)あまり上げ過ぎないよう」としつつ直球は右肘手術後最速の97マイル(約156キロ)を計測。そして6球投じたツーシームが光った。金慧成、ラッシングの左打者2人に、膝元のボールゾーンからのフロントドアで見逃しを2球、右打者には懐に食い込ませてファウルと、計3球でカウントを稼いだ。23年に直球の33・2%を上回る最多35・1%だった“魔球”スイーパーはこの日、2球のみ。23年に5・7%だったツーシームは、肘への負担が大きいスイーパーに代わり負担減、球数減につながる球種で、曲がりも大きく進化し“魔球”候補となる。
後半戦での復帰から逆算した日程で、異例の敵地でのライブBP。デーブ・ロバーツ監督、ベッツらド軍選手に加え、メッツの選手も見守った。打者として出場を続けながら目指す復活登板。「前の(手術の)時もライブBPで調整してきていた。今の形式で球数、強度がしっかり保てるのであれば十分。基本的に週1で投げられれば」と与えられた環境で万全を尽くす。(杉浦 大介通信員)
【大谷に聞く】
——ライブBPを振り返り。
「バッターが立てば(出力が)上がるのは分かっていたけど、あまり上げ過ぎないように。なるべく96〜97(マイル=約154〜156キロ)は投げないようにしたけど最後の方は出てはいた。いいところでもあり、もう少し抑えながらいけばいいのかな」
——ノーワインドアップは。
「(投げ込むゾーンへの)ラインの出し方は変わる。着地するまでの動作はラインが出ているかどうかが一番大事。そこの違いはある」
——今後の調整は。
「(ライブBPは)遠征の兼ね合いや、ホームの時は打者も実戦に近いマイナーリーグの選手が来てくれたりすると思うが、今日みたいに遠征先だとそういうわけにはいかない。そういう難しさもある」
▼ドジャース デーブ・ロバーツ監督 打者として見るのに慣れてしまっていたので、マウンドに立つ姿を見るのは新鮮で我々全員が本当に興奮した。
▼ドジャース マーク・プライアー投手コーチ かなりエグい球を投げていて、打撃コーチも苦笑いしていた(笑い)。ちょっと不公平なくらい良い球だった。
▼ドジャース ラッシング(大谷と対戦し1三振)電撃的だった。スプリットはストライクゾーンから消えた。打席で彼の球を見られたのはクールだった。
▼大リーグ機構コミッショナー特別補佐ジョー・トーリ氏(元ヤンキース監督)偶然にも大谷の投球を生で初めて見ることができた。ウオームアップの段階から自由に解き放たれているように見えた。