オリックスは黄金期らしい納得の指名 武内夏暉を引いた西武にはやや疑問も【ドラフト3段階評価/パ・リーグ編】

2023年10月31日(火)7時10分 ココカラネクスト

中嶋監督の意図も滲み出るドラフト補強に成功したオリックス。どこか余裕もある戦略はチームの充実ぶりを感じさせた。(C)Getty Images

 10月26日に行われた今年のドラフト会議。4年ぶりに有観客で開催され、1位指名では7度の抽選が実施された影響もあって大きな盛り上がりを見せた。

 各球団の指名結果については、あらゆる評価や考察があるが、今回は「将来性」、「即戦力」、そして「補強ポイントにマッチしていたか」の3点で分析。A、B、Cの3段階で採点していく。ここではパ・リーグ6球団を見ていく。

【動画】3球団が競合した怪腕サウスポー! 武内夏暉のピッチング

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【オリックス】
将来性:A
即戦力:B
補強ポイント:A

 1位から4位までは高校生、5位以下の3人は社会人の投手と、上位と下位ではっきりと分かれた指名となった。

 1位の横山聖哉(上田西)はスケール抜群の大型ショートで、2019年にドラフト2位で加入した紅林弘太郎の高校時代と比べても総合力は明らかに上だ。2位の河内康介(聖カタリナ)、3位の東松快征(享栄)も高校生ではトップクラスの本格派投手で、若手が少ない捕手にもプロでも上位クラスの強肩を誇る堀柊那(報徳学園)をピックアップ。現戦力の充実もあり、将来を考えて高校生の好素材を見事に揃えた。

 一方でポスティングによるメジャー移籍が有力視されている山本由伸の退団を見越し、下位では、古田島成龍(日本通運)ら比較的に早く戦力になりえる3投手を獲得。来年に向けた備えもできた印象を受ける。リーグ3連覇中と黄金期にあるチームだからこそできる指名だが、総合的に見ても非常に納得感が強い結果となった。

【ロッテ】
将来性:A
即戦力:B
補強ポイント:B

 3度も抽選を外した1位では上田希由翔(明治大)を指名した。昨年に西武が1位指名した蛭間拓哉(早稲田大)と比べても打撃の安定感は上回っており、あらゆるポジションを守った経験もプラスだ。1年目からそれなりに一軍で結果を残す可能性も高い。

 2位の大谷龍輝(富山GRNサンダーバーズ)はリリーフの戦力候補。ただ、スピードはプロでも上位クラスだが、速くても合わせられやすく、変化球も課題は残る。こちらも上田と同様に“準即戦力”と見ておいた方が良いだろう。

 3位以下の指名では素材の良い高校生を揃え、将来性に関してはAと評価した。木村優人(霞ヶ浦)、早坂響(幕張総合)の2人はストレートだけでなく変化球のレベルも高く、身体作りが進めばローテーション候補として期待できる。寺地隆成(明徳義塾)も打撃力は高校生でもトップクラスで、内野手としても面白い。チームに不足している大砲候補を獲得できず、比較的早く使えそうな投手が1人という点はマイナスで、補強ポイントの評価はBとした。

小久保新体制を発足させるソフトバンクは、1位で高卒ながら即戦力になり得る前田を引き抜いたのは評価できる。(C)CoCoKARAnext

【ソフトバンク】
将来性:B
即戦力:B
補強ポイント:A

 3球団による競合で武内夏暉(國學院大)を外したが、続く入札では前田悠伍(大阪桐蔭)を引き当てた。左の先発が完全に不足しているチーム事情を考えると、この選択は妥当に感じる。高校生ながら完成度も高く、体力面さえ強化できれば2年目から一軍のローテーション入りも期待できるだろう。

 また、右の強打者不足を補うべく3位では慶応大の主砲・広瀬隆太を指名。粗さはあるものの、飛ばす力に関してはトップクラスだ。さらに世代交代が必要な投手も積極的に大学生、社会人の実力派を揃えた。2位の岩井俊介(名城大)はリリーフであれば1年目から戦力となる可能性も高い。また4位の村田賢一(明治大)と6位の大山凌(東日本国際大)が最後に少し調子を落としていたのは気がかりだが、好調時の投球ができるのであれば、この順位で指名できたのは大きい。

 全体的に野手が少し少なかったのは気になるが、実力者を多く揃え、補強ポイントにマッチした指名だったと言えそうだ。

【楽天】
将来性:A
即戦力:C
補強ポイント:B

 育成選手を12球団で唯一指名せず、逆に支配下では最多の8人を指名。全体的には将来性に振り切った指名という印象を受けた。1位の古謝樹(桐蔭横浜大)は大学生ではあるものの、調子にムラがあるため、即戦力というよりも2年目以降に期待したい選手である。それ以外である程度の完成度があるのは6位の中島大輔(青山学院大)ぐらい。彼も打撃にはやや不安が残る。

 一方で将来性に関してはAをつけられるだけのスケールの大きい選手を揃えた。とくに期待がかかるのが2位の坂井陽翔(滝川二)と3位の日當直喜(東海大菅生)。いずれも今年の高校生ではトップクラスの右腕で、ストレートだけでなく変化球にも特長があり、将来のエース候補として期待したい。

 中島以外の4位以下の選手も、いずれも大化けが期待できる選手たちで、来年よりもかなり先を見据えた指名という印象だ。下位は、とくに“0か100か”という選手が多く、リスクも高いように感じるものの、今江敏晃新監督の下でチームを作り変えようという意図は感じられた。

西武が1位指名した武内。今ドラフトのナンバーワンサウスポーの呼び声も高い実力派だ。(C)Norifumi NISHIO

【西武】
将来性:B
即戦力:A
補強ポイント:B

 1位で武内夏暉(國學院大)を引き当て、2位でも大学生右腕の上田大河(大阪商業大)を指名に成功。大きな戦力アップに繋げた印象だ。

 武内は大型でも制球力が高く、今年の大学生の中でも即戦力という意味ではトップの存在。大学時代の隅田知一郎と比べても安定感は上。一方の上田も総合力では大学球界で上位であり、試合を作る能力の高さが光る。この2人を獲得できただけで、即戦力についてはかなり高く評価できるだろう。

 将来性という意味で最も期待できそうなのが4位の成田晴風(弘前工)だ。ストレートの勢いは今年の高校生でも1、2を争うレベルで、まだまだ成長が期待できる。時間はかかるタイプだが楽しみな存在だ。

 その他も投手はあらゆるタイプを揃えたが、スケールの大きいタイプは成田だけという点と、野手が村田怜音(皇學館大)1人という点は少し疑問に感じた。とくに野手はあらゆるポジションが弱いだけに、もう少し獲得しても良かったのではないだろうか。

【日本ハム】
将来性:A
即戦力:B
補強ポイント:B

 1位で指名した細野晴希(東洋大)は大学球界を代表する本格派左腕。コントロールには少し不安が残るものの、好調時の投球は圧倒的であり、上手く成長すれば球界を代表する投手となることも期待できる。

 3位の宮崎一樹(山梨学院大)も大学生だが即戦力というよりも将来性に針が振れているタイプ。運動能力の高さは抜群でパワーもあるだけに、打撃の対応力がついてくれば不動の外野手として期待できる。4位の明瀬諒介(鹿児島城西)、5位の星野ひので(前橋工)も飛ばすスキル関しては高校球界でも屈指で、将来性はAと評価した。

 そして「即戦力」として期待できるのが2位の進藤勇也(上武大)だ。守備に関しては全てがハイレベルで、打撃も振る力はある。1年目から正捕手争いに加わる可能性もあるだろう。課題の正捕手候補と右打者というのは補強できたが、投手が細野だけというのは少し疑問。すでにポスティングを公表した上沢直之ら主力投手の穴埋めが急務となる可能性が高いだけに、もう1人くらいは力のある投手を指名したかった。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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