『TieUps』代表取締役・小原史啓さんが選ぶ「自分を見つける本5冊」
2023年1月25日(水)11時0分 ソトコト
*30代の先輩からU30の皆さんへ。今回は先輩たちの選書を通して、U30の皆さんに、自分たちにもこれからやってくる30代をより豊かに、気持ちいい生き方をしてもらえたらと思い、11名の方に本を選んでいただいています。

SNSのリンクをまとめるプロフィール作成ツール「lit.link」をはじめ、10年後には人口の過半数を超えるデジタル・ネイティブに向けた、共感型マーケティング手法の開発と運用を行っています。そのために普段から人口動態などさまざまなデータからこの先の社会を予測しています。
いまの世の中は、SNSを通じて誰もが情報を発信できるようになり、インターネット上には情報があふれていますが、僕たちは「欲望に流されている」と自覚しなければなりません。自分で情報を選んでいるように見えますが、流れてくる情報のほとんどは個人の趣味嗜好に合わせたアルゴリズムによって操作されているものだからです。僕はこれを「欲望アルゴリズム」と呼んでいますが、これからは欲望アルゴリズムで操作されやすい個人の趣味嗜好から、社会的な思想・思考が世の中で重要になっていくと僕は考えています。たとえば、ものづくりの背景に共感した人たちが商品を購入する「共感消費」のように、何かを買ったり、選んだりする際、もっとも大切にされるのは人物や物事のもつストーリーになるでしょう。SNSなどでの発信も「好き・嫌い」よりも、個人のポリシーや価値観を伝えていくものになっていくと思います。
そうした世の中の動きをアメリカの事例を通じて教えてくれるのが、『Weの市民革命』です。タイトルにある「We」とは、環境問題や人種、LGBTQといったあらゆる差別、移民問題などを抱えたアメリカでミレニアル世代を中心に広がった、個人の自由よりも世界全体の人権を重んじる考え方や、それをもとにした消費行動を指します。つまり、社会的平等を追求することが自分たちの共同責任だと考えるようになったのです。この本では著者であるアメリカ在住の文筆家・佐久間裕美子さんが、自らの考察とともに「We」に関連する事象をまとめています。2020年に出版された本ですが、僕はここに書かれているのは日本の未来の姿だと捉えています。これからの社会をつくっていくU30のみなさんにも、ぜひ読んでもらいたいです。
『「物語」のつくり方入門 7つのレッスン』は、「物語の大まかな輪郭をつくる」から始まる7つの章を通じて実際の物語の組み立て方やパターンなどを解説する一冊。これからはストーリーがさらに大事になるという話をしましたが、誰かに教わる機会があまりない「ストーリーの構築の仕方」を楽しみながら知れます。
「ついやってしまう」体験のつくりかた ─人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ
玉樹真一郎著、ダイヤモンド社刊

スローライフでいこう ─ゆったり暮らす8つの方法
エクナット・イーシュワラン著、スタイナー紀美子訳、早川書房刊

竜馬がゆく(一・二)
司馬遼太郎、文藝春秋刊


photographs by Yuichi Maruya text by Ikumi Tsubone
記事は雑誌ソトコト2023年1月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。