小惑星「2024 YR4」地球衝突は回避か、しかし月への衝突確率が上昇

2025年3月5日(水)20時0分 tocana


 TOCANAでも度々お伝えしてきた2024年に発見された小惑星「2024 YR4」は、当初地球に衝突する可能性があるとされていたが、最新の観測データにより、その危険性はほぼゼロであることが確認された。しかし、新たなシナリオとして、2032年12月22日に月へ衝突する可能性が浮上している。


地球への脅威は消えたが、月への衝突確率が上昇

 当初、2024 YR4の地球衝突確率は最大3.1%とされ、世界中の天文学者がその軌道を詳しく調査した。ハワイのカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡や、ニューメキシコ州のマグダレナ・リッジ天文台、さらにはチリのヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡などが観測に参加。その結果、地球衝突の可能性は100万分の1以下まで低下した。


 一方で、月への衝突確率はわずかではあるものの上昇し、現在は1〜2%程度と見積もられている。


科学的な大チャンス?

 地球への衝突は大惨事となるが、月への衝突はむしろ貴重な科学的機会を提供するかもしれない。小惑星が月に衝突すれば、天文学者はその破片や月の地下構造について貴重なデータを得ることができる。衝突によって生じる噴出物を分析することで、小惑星の組成や月の地質に関する新たな発見が期待される。


 MITのリチャード・ビンゼル教授は「科学的な成果としては願ってもないチャンスだが、実際に起こる可能性は依然として低い」と指摘している。


月面衝突の影響は?

 もし2024 YR4が月に衝突した場合、クレーターの大きさは小惑星の直径によって大きく変わるとされる。小惑星の直径は40〜90メートルと推定されており、その衝突によって生じるクレーターは400メートルから1.8キロメートルに達する可能性がある。これは米アリゾナ州にある有名な「バリンジャークレーター(隕石クレーター)」よりも大きい。


今後の展望

 今回の発見は、天文学者にとって新たな課題も示している。ビンゼル教授が開発した「トリノスケール」という小惑星衝突リスクの指標では、2024 YR4は一時的に最高レベル3に達した。しかし、その後の観測でリスクが低下し、現在はレベル0(安全)に戻っている。


 今後、新たな望遠鏡の稼働により、小惑星の発見件数は増える見込みだ。そのため、今回のように発見直後に衝突リスクが取り沙汰されるケースは今後も続くだろう。しかし、2024 YR4の観測プロセスは、科学者たちが協力して正確なデータを得る重要性を再認識させた。


「今回の発見に尽力した観測者たちはまさに縁の下の力持ちだ」とビンゼル教授は語る。数多くの観測所が協力し、小惑星の軌道を正確に特定することで、地球の安全が確認された。


 小惑星の月面衝突が実際に起こるかどうかは今後の観測次第だが、天文学者たちは引き続きその動向を注視している。


 地球の危機はひとまず回避。だが、月はどうなるのか? 2032年、月が“宇宙の実験場”になる日が来るのかもしれない。


参考:Sky & Telescope、ほか

tocana

「衝突」をもっと詳しく

「衝突」のニュース

「衝突」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ