「世界一幸せそうなイタリア人」は食べることへの情熱もけた違い。美味しいものを残さず食べ、後片付けまで楽になる極意「スカルぺッタ」とは?

2025年4月12日(土)12時30分 婦人公論.jp


イタリアの食材といえば…(『イタリア流。』より/撮影:中山久美子)

歴史ある街並みや数々の芸術、食が豊かで、陽気なアモーレの国イタリア。イタリア人はなぜ、あんなに生きていることを謳歌できるのでしょうか?イタリア在住20年、現地で通訳・コーディネーターとして活躍する中山久美子さんによると、彼らは本当にマイペースで、移住した最初の数年は驚きととまどいの連続だったそう。そんな世界一楽しそうに生きているイタリア人の根底にある「流儀」を明かす『イタリア流。』から一部を抜粋して紹介します。

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最後まで美味しく食べ尽くす、保存食とスカルぺッタ


家庭菜園ができなくても、前住人の残した恩恵にあずかっている我が家。初夏はさくらんぼ、収穫量は毎年変わりますが、大豊作はなんと6キロ。

食べても食べても追いつかないのでご近所や夫の同僚に配った後、残りはジャムを作って瓶詰にし、家でタルトにしたりヨーグルトにかけたりして使いました。

秋はオリーブ、過去最高20キロの時は、オリーブ畑を持つ友人に混ぜてもらってオイルにしました。

そこまで採れなかったとしても放置するのは心苦しく、塩水漬けオリーブを作るのが毎年の定番になっています。

そのままおつまみにしたり、果肉をパテにしたり、鶏肉のトマト煮込みやギリシャ風サラダにしたりと、通年かけて楽しませてもらっています。

そしてバジルのペーストや、乾燥させたローズマリーとセージを使ったハーブ塩も、旬の味を加工して長く活用することができる便利な保存食です。

イタリアの保存食といえば


しかしイタリアでの保存食のハイライトは、なんと言ってもトマトでしょう!

旬のトマトは味が濃くて美味しいですが、その味わいを年中味わうことができるのです。家庭菜園をしている家では、晩夏に熟したトマトを一斉に収穫し、まずはしっかり洗います。

それからトマトを湯がき、そのまま瓶に入れるのか、イタリアの家庭には必ずある野菜漉し器具を使ってピューレにするかは家庭それぞれ。

使う時のことも考えて、塩やバジルを入れることもあります。最後は熱湯に瓶を浸し、蓋がペコッと凹んで真空になれば出来上がり。

収穫や量によっては、1日から数日かけて家族みんなで分業して行う一大イベントとなります。

我が家のように家庭菜園を持ってなくても大丈夫。シーズン最後には、どの野菜も値段が下がるので、農家から箱買いすれば同様の保存食を作ることができます。

今までで1番美味しかったのは、地元の自然農法の農家から購入した、プチトマトのパスタ用のソース。

少し時間がかかっても、汗だくだくになろうとも、それから先、冬でも美味しいトマトが食べられるならいくらでも頑張れます!

みんながやっている「スカルぺッタ」とは?


毎日の食事でも、美味しいものを最後まで食べる極意があります。それは「スカルぺッタ」、残ったソースをパンですくって食べることです。

パスタソース、煮込みのソース、夫は火を通したオイルは体に良くない、と言いつつも、肉のオーブン焼きなどでオーブン皿に残った味が染み染みのオイル……これらのソースをキレイにパンで拭きとり、最後まで食べてしまいます。

高級レストランでするのはご法度かもしれませんが、イタリアの家庭ではもちろん、一般的な飲食店ではみんな普通にやっていること。

どころか、それほどソースが美味しい!という意味で喜ばれることもあります。お皿だけでなく、わが姑のスカルペッタはフライパンや鍋まで及びます。

姑宅のダイニングキッチンは彼女の席の後ろがキッチンなのですが、食事中にぬぉ〜っと手を後ろにまわし、コンロ上にあるフライパンに残ったソースもスカルペッタ。

美味しいものを残さず食べられるだけでなく、キレイにスカルペッタしてもらった後のお皿洗いはとっても楽で一石二鳥です。

パンを食べ過ぎてしまうことが問題!


スカルペッタの発祥は南イタリアらしいですが、私の感覚では今はイタリア全土でやっていて、間違いなくトスカーナ人はスカルペッタが大好き。

塩が入ってないトスカーナパンだからこそ、スカルペッタをしても余分な味がなくて美味しく食べられます。

トスカーナパンには塩が入ってないのは、スカルペッタのためなのか?と思ってしまうほどに……。

面白い響きのこの言葉の語源には諸説ありますが、その一つがScarpe(スカルぺ=靴)に縮小辞の-tta(=小さな靴)がついたもの。

お皿のソースをすくうパンの動きが、地面にすって歩いて土を掃く靴に似ているからだそう。

ソースを残さず最後まで食べることが貧しい人の行いだということで、欠乏を意味するScarsettaが語源である、という説もあります。

しかし、今は後者の「貧しいから仕方なく最後まで食べる」ではありません。スカルペッタは食べ物を無駄にしない、美味しいものは全部食べる、という、人間のモラルにも本能にも叶った素晴らしい習慣だと思います。

問題は、とにかくパンを食べ過ぎてしまうこと、それくらいでしょうか?

賛同していただける皆さんは、イタリアに来たらぜひ、スカルペッタを。最後の最後まで美味しい料理を味わい尽くしましょう!

パスタへのこだわり、週1のピッツァ


イタリア料理と聞いて、何を思い浮かべますか?そう聞かれると、世界中の誰もが「パスタ」か「ピッツァ」と答えるでしょう。

イタリア料理はそれだけじゃないよ!と思うこともありつつも、夫が料理で何か指摘する時は、決まってパスタ。

私の作る料理には何も言わないか、「美味しい」とほめてくれるのに、パスタにだけは厳しいのです。しかもソースの味うんぬんではありません。

それは決まってパスタがアルデンテでないことに対してのクレームです。

50を過ぎて夫は糖質制限ダイエットを始め、パスタは週に2,3回しか食べなくなっても文句は言わないのに、その茹で加減だけは絶対に譲れない……。

来日時には和食を謳歌する夫ですが、シンプルなトマトソースのパスタを無性に食べたくなることが時々あるそうです。

イタリア人にしては珍しくどんな料理も平気な夫でも、その発言にイタリア人のDNAを感じます。


パスタの茹で方には厳しい!(『イタリア流。』より/撮影:中山久美子)

ピッツァについては…


もう一つのピッツァでは、味や質よりも頻度にこだわりを感じます。

わが家では自家製の天然酵母で作った生地を使い、毎週金曜日の晩にピッツァを作るのですが、生地がうまく膨らまずにあまり満足度が高くない時も。

しかしそれに対しては「これはこれで美味しい」と、とても寛容なくせに、生地を仕込むのを忘れたり、時間がなかったりして「今晩はピッツァできないのだけど」と言うと、「じゃあピッツェリアでテイクアウトしよう!」「あ、スーパーで26×38(夫が好きな市販品の冷凍ピッツァ)買ってこようか?」こんなふうに、前のめりでどうにかしてピッツァを食べようとします。

私が作るピッツァを喜んで食べてくれますが、いやはや、ピッツァであれば基本なんでも良い、なんでも良いから週に1回は絶対に食べたいのでしょう。

パスタの回数が減るのは我慢できても、週1のピッツァだけは絶対にやめられそうにありません。

そう考えると、イタリア料理を代表するのはやはり「パスタ」と「ピッツァ」。世界中の皆さんが連想するのは、あながち間違いではないようです。

※本稿は『イタリア流。』(大和出版)の一部を再編集したものです。

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