東大卒エリートママが4歳の息子にYouTubeを“卒業”させた理由「たった2分で動画が見たくなるってヤバくない?」
2025年4月23日(水)12時0分 文春オンライン
公立の小学校、中学校、高校を経て、一浪して東京大学理科II類に入学。現在は、9歳、7歳、5歳の男の子たちを育てている中村希さん。長男が生後4ヶ月だった頃に始めた学習塾「みらい塾エイトステップス」の塾長としての顔も持ちます。
ここでは、そんな中村さんが「子育て哲学」について詳しく紹介した 『田舎の公立小中高から東大に入った私の勉強法』 (平凡社新書)より一部を抜粋。東大卒ママがわが子にYouTubeとゲームを“卒業”させた方法とは……。(全3回の1回目/ 続きを読む )
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「こんなに一瞬で動画が見たくなるってヤバくない? 取りつかれてしまっている!」
わが家は基本的には「YouTubeやゲームはやらない」というスタンスです。ゲームはスーパーファミコンのみ家にあり、しかも私もしくは夫が家にいるときしかコードをつなげないので、息子たちはほとんどやりません。仮に息子たちがコードをつなげられたとしても、私たちが小さい頃に流行った「ドンキーコング」や「星のカービィ」しかできないので、すぐに飽きて長時間ゲームしっぱなし、ということはありません。
YouTubeは2020年春、新型コロナウイルス感染症が本格的に蔓延する前、長男が年中さんのときに「卒業」しました。なぜ「卒業」したのかというと、長男の集中力の短さに衝撃を受けたからです。
ある日、長男が切り絵をやりたい、というので紙とハサミを渡してあげました。そのとき、私は長男の近くでパソコンを使って資料づくりをしていました。2分くらい経った頃、長男が突然、「どうが(動画)! どうががみたい! どうが!」と言い始めたのです。その頃はよく、長男に動画を見て静かにしてもらっていたので「あぁ、やっぱりこうなっちゃうか……」と長男の心境は理解しつつも、「でも、こんなに一瞬で動画が見たくなるってヤバくない? 動画に取りつかれてしまっている!」と長男の集中力の短さにショックを受けてしまいました。

この一件があり、長男に動画を見せるのはやめようと決めたのです。ただ、こちらが一方的にスマホを取り上げたら、長男は絶対に納得しないことは目に見えていました。そこで私は長男とじっくり話し合うことにしました。「なぜママはYouTubeをやめてほしいのか」を説明したのです。それでもやはり、好きなものを取り上げられることは長男からしたら悲しいことでしかないので、YouTubeの代わりに長男がやりたいことを始める、という約束をしました。
ちょうどそのとき長男が「やりたい」と興味を示していたのが、ベネッセコーポレーションの「こどもちゃれんじ」。さっそく私は申し込みをしました(ちなみに、私は通信講座なるものは一切やったことがなかったので、教材が届いたときは新鮮な気分でした)。「こどもちゃれんじ」を始めてから、家では動画が見られるすべての機器を使えないようにして動画とは「おさらば」しました。この「こどもちゃれんじ」は今も続けていて、単純な計算問題などはあまり興味を持っていないようですが、理科や社会などの知識については興味津々で、自分なりに楽しんでいるようです。
「ゲームやYouTubeがお母さんのストレスの原因になっている」
ただ、長男が小学校に入学してからは、学校からひとり1台タブレットPCが貸与されました。担任の先生の判断によってはタブレットPCを自宅に持ち帰ることができ、そのタブレットPCではYouTubeも見られる状態になっているので、現在は「完全に」YouTubeを遮断する環境にはならなくなってしまいました。とはいえ、年中さんのときとは違って、自分で動画をみる時間をコントロールできるようになっていますし、動画だけではなくタイピングやプログラミングに興味があるようでそれもやっているので一概にYouTubeはナシ!というわけでもなくなってきています。
YouTubeやゲームとの付き合い方は常に迷い、息子や夫とも話し合いを重ねてきました。今でも私と夫、そして息子の間で「これがいい」と納得する付き合い方は決まっていません。ただ、私が塾長として多くの親御さんたちの話を聞く限りでは、「ゲームやYouTubeが相当多くのお母さんのストレスの原因になっている」というのが正直な感想です。
「うちの子はテスト前でも1日5時間以上ゲームをやらないと気がすまなくて、テストの点数が落ちてしまった」
「ゲームを取り上げたところ、暴れて机を壊されました」
「テスト前は自分でゲームの時間を控えているみたいですが、テストが終わるとほとんど一日中やっています」
「家では帰ってくるとずーっとYouTubeばかり見ています。会話もないので困っています」
YouTubeやゲームさえこの世に存在しなければ、お父さん、お母さんはだいぶストレスから解放されるだろうと思えるほど、YouTubeやゲームが親子間のいさかいの原因になっていました。
「わが子にはゲームをさせない、動画を見せないようにしよう」
その一方、当の本人たちは親御さんの心配は露知らず、という感じです。塾長として生徒たちに「好きなこと、頑張っていること」を聞くと、それも「ゲーム」「YouTube で見ている何か」であることがとても多いのです。
「スマブラ(任天堂のゲームの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのこと)のスコアがこのくらいで、あと少しで神レベルまでいけるのでもっと上げたいと思っています」
「マイクラのウーパールーパー繁殖場を今つくっているんです」
「YouTubeでK-POPアイドルのPVを見て、ダンスを練習しています」
など、彼らは彼らの中でYouTubeやゲームを本気で楽しみ、本気で挑戦しています。そしてYouTubeやゲームに接することで興味の幅が広がるきっかけにもなっているな、と感じます。
ゲームもYouTubeも、それ自体が悪いものでは決してなく、むしろ知らない世界を見せてくれる素晴らしいものです。ただ、だからこそ自分で制御できないときに出会ってしまうと抜け出せなくなってしまいます。逆に、時間を守れる、制御できる状態であればそこまで大きな問題にはならないケースもあると思います。何をよしとするかは、子どもの年齢や成熟度、親子関係、家族関係、どんなルールをつくって実際にそれを守れるかに大きくよると思うのです。
親御さんや生徒さんたちの話を聞き、また、子育てやYouTubeなどとの付き合い方についてまとめた記事や本を読んだ結果、私の出した答えは、「わが子にはゲームをさせない、動画を見せないようにしよう」というものでした。その理由は以下の通りです。ゲーム好きのシッターさんにLINEで送ったものをそのまま転載させていただきます。
〈 東大卒ママが育児中いつもイライラしていた“ストレス”の正体「もうダメだ」「私が育てているからいけないんだ」 〉へ続く
(中村 希/Webオリジナル(外部転載))