樋口恵子 残り少ない人生なのにみんな友達づきあいや親子関係に悩んでいて…人間関係の問題は<棚上げ方式>であの世にもっていこう【2025編集部セレクション】

2025年5月11日(日)12時30分 婦人公論.jp


さまざまな悩みの中でもなかなかスマートに解決しにくいのが、人間関係の問題でーー(写真提供:Photo AC)

2024年上半期(1月〜6月)に『婦人公論.jp』で大きな反響を得た記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年2月21日)
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厚生労働省が公表している「令和4年簡易生命表」によると日本の平均寿命は、男性が約81歳、女性は約87歳だそう。年齢を重ねるごとに「老い」を感じる場面は増えますが、91歳で評論家として活躍している樋口恵子さんは、「せっかくの人生、機嫌よく生きなければもったいない!」と話します。樋口さんいわく、「人間関係はお互いさまと思えば、不思議と気が楽になり、あまりがっかりしない」そうで——。

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人づきあいはさっぱりと


私は長年、新聞や雑誌で人生相談の回答者もしていますが、さまざまな悩みの中でもなかなかスマートに解決しにくいのが、人間関係の問題です。

高齢になっても友達づきあいや夫婦、親子関係に悩む方はたくさんいらっしゃいます。

親しかった人と、何かをきっかけにぎくしゃくしたり、疎遠になることもあるでしょう。

なかには人間関係のストレスで、心身に影響が出る人もいるかもしれません。

お互いさま


家族関係も、なかなかやっかい。

家族だからこそ、ちょっとしたことで行き違って関係がこじれたり、気持ちをわかってもらえず、孤独感を抱いたり。そんな経験は、誰にでもあると思います。

でも私はあまり気に病まず、「きっとなにか事情があるのだろうな」と受け流すようにしています。

人間関係は「お互いさま」と思えば、不思議と気が楽になり、あまりがっかりしないですみます。

人にはそれぞれ事情もあれば、立場も違う。

勝手に相手に期待するのは、ある意味、私の思い上がりかもしれません。

人間関係に失望しそうになったら、にっこり笑って「まっ、いろいろ事情があるのでしょう」と思うようにしています。

そのおかげで、この歳まで「恨みっこなし」でやってこられました。

正直に言います


ここで、ゴメンナサイ。正直に言います。

長い人生の間には、ちょっぴり人を恨んだこともあったし、憎らしいと思った人もいました。

その気持ちが失せたのは、70代で東京都知事選に出馬したのがきっかけでした。まったく準備期間もないのに、82万票近くいただいたのです。

しかも、私が日ごろ少し憎たらしいと思っていた人まで、応援してくれたり、票を入れてくれたりしました。


私が日ごろ少し憎たらしいと思っていた人まで、応援してくれたり、票を入れてくれたりしました(写真提供:Photo AC)

この経験を通じて、私はおおいに反省をし、心を入れ替えました。

棚上げ方式


一時的にすれ違っても、巡り巡ってお互い気持ちが寄り添う日が来ることもある。衝突して距離ができた人とも、再会を感謝できる日が来るかもしれない。

だとしたら、余生も短いのに、人に対してイヤな感情を持ったり、怒ったり恨んだりといったネガティブな感情を持ち続けているのはもったいない。

だから、恨みを忘れなくてもいいけれど、一時棚上げしてほかのことを一所懸命やろう。そう思い、「恨みつらみは棚上げ方式」を採用したのです。

皆さんも、これまで生きてきたなかで、憎たらしい人もいるだろうし、気が合わなかったり過去にトラブルになったりした相手がいるかもしれません。

でも残り少ない人生、マイナスの感情を抱き続けていては自分が損します。この際、恨みつらみはしばらく忘れて、楽しいことだけに目を向けませんか。

それでも気が済まなければ、「死んでから化けてやる」と、お化けになった自分を戯画化して想像してみては。

ちょっぴりふざけた気持ちでいると、そのうちネガティブな気持ちが薄れていきますよ。

※本稿は、『老いの上機嫌-90代! 笑う門には福来る』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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