【お悩み相談】人間関係理由に辞めていく職場の後輩の力になれず無力感
2025年5月7日(水)6時0分 大手小町(読売新聞)
20代の会社員女性です。職場での人間関係に問題があり、後輩たちが辞めてしまう中、私は何もできず無力感を抱いています。
部下との信頼関係の構築を拒否している上司は、「心身の不調による欠勤や休職は仕事で取り戻せ」と言ったり、先輩社員は異性の若手に執着し、断片的な情報を基に的はずれなアドバイスをしたりします。そんな彼らに追い詰められ、若手社員が辞めていきます。
後輩たちがお手洗いで泣いている時に話を聞いてあげることくらいしか、私にできることはありません。
後輩たちを助けたい一方、キャリアを第一に考えている私は仕事に注力したいため、「自分が解決できない問題で悩むのは、あまり得策ではない」という気持ちがあります。
どのような心持ちで職場に行けばいいのか、アドバイスをお願いします。(ハンドルネーム:ことみ)

今の職場に残ろうとしていることみさんと、辞めていく後輩たち。その違いをはっきりと意識することで、きっと答えが見えてくるのではないでしょうか。
職場に求めるものは、人それぞれ異なります。たとえ業務内容や人間関係、長時間勤務が厳しくても、「とにかく高い給与を得たい」という人もいれば、給与や労働環境が良くなくても「キャリア形成のために今は耐える」という人もいます。また、「今、頑張り続ければ、確実に昇進が見込めるから」と努力を続ける人もいれば、仕事内容に魅力を感じなくても「自分の時間や家族との時間を優先したい」と考える人もいます。特に今の若い世代では、給与よりも「自分時間」や「職場の居心地」を重視する人が増えていると言われています。
ことみさんと後輩たちでは、職場に求めるものが根本的に違うように思います。そのため、ことみさんが後輩たちを100%理解しサポートすることは難しく、また逆に、ことみさんに後輩たちが相談するというのも、あまり意味があることとは思えません。
これは、どちらが良い悪いではなく、価値観の違いによるものなので仕方のないことです。
また、ことみさんは、後輩たちが泣きながらつらさを吐露するのを聞くことに、かなりストレスを感じているのではないでしょうか。人の愚痴を聞くのは元々楽しいことではありませんが、今回はそれに加え、「これからも残ろうとしている職場を、好きな後輩たちに否定される」という複雑な思いもあるのではないかと想像します。自分はこの職場で頑張ろうとしているのに、何人もの後輩たちから職場の悪口を聞かされ続けたら、「そこに残ろうとしている自分は一体何なのだろう」と、自信ややる気を失いかねません。時には、そこに残る自分まで悪者のように感じてしまうこともあるでしょう。
正直に申し上げると、後輩たちが悩みの相談相手としてことみさんを選んでいる時点で、少しずれているようにも思えます。うがった見方をすれば、真剣にアドバイスを求めているというよりも、「とにかく誰か、“先輩という立場の人”に愚痴を吐き出してスッキリしたい」だけなのかもしれません。
自分と関係が良好な後輩たちがつらそうにしているのを見て、力になりたいと思うことは素晴らしいです。しかし、ことみさんがあまり負担や責任を抱え込む必要はないと思います。もし、後輩たちがまだ退職を迷っており、ことみさんの言葉次第で気持ちが変わる可能性があるなら、支援も意味を持ちますが、すでに退職をほぼ決めているような後輩に対しては、残念ながらできることはほとんどないでしょう。
これはあくまで個人の価値観の違いによるものです。後輩たちを見下す必要も、冷たく突き放す必要もありません。ただ、一緒にいるその時間だけは
それは決して冷酷なことではありませんし、ことみさんがひどい人間だということでもありません。
つらくても、将来のキャリアを築くために努力しているその姿はとても美しいと、私は感じます。貴重な時間を自分のために使い、胸を張って進んでいってください。心から、応援しています。(産婦人科医、タレント 丸田佳奈)