フロレスが関東インカレで大活躍、400mの連覇に続き200mも優勝「日本国籍を取得したら日本記録に挑戦したい!」

2025年5月16日(金)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


400mで“日本記録超え”を果たした女子スプリンター

 今年の関東インカレ、女子は日体大が総合5連覇を達成した。トラックでエースの大活躍を見せたのがフロレス・アリエ(3年)だ。

 彼女はペルーと日本、イタリアとペルーにルーツを持つ両親のもと日本で生まれ育った。中学から陸上競技を始めると、静岡・東海大翔洋高2年時のインターハイ400mで6位に入っている。3年時は自分の走りを見失い、体重も増加。スランプに陥った。

 日体大に進学後もしばらくは苦しんだ。入学直後にハムストリングスを肉離れしたこともあり、体重が60kgを超えた時期もあったという。しかし、8kgの減量に成功すると、才能が開花する。

 昨季は自己ベストを56秒20から53秒03まで大幅短縮。関東インカレは400mを制すと、200mでも2位に入った。大ブレイクした一方で、国籍の問題で日本選手権に出られず「悔しさ」を感じたという。

 今季は4月中旬に左ふくらはぎを「肉離れ」した影響で、日本学生個人選手権(100mと200m)と織田記念(100m)を「練習の一環」で出場。そして5月3日の静岡国際400mで“大記録”を叩き出す。

 日本歴代2位のタイムを持つ松本奈菜子(東邦銀行)を最後の直線で抜き去り、51秒71をマーク。丹野麻美(福島大)が保持していた日本学生記録(51秒80)を20年ぶりに塗り替えると、日本記録(51秒75)を上回ったのだ。

 自己ベストを一気に1秒以上も更新したフロレス。「出したというより、出ちゃったみたいな感じです」と自身の記録に驚いていた。この快走で彼女の存在が大きく報じられた。51秒71はペルー記録で、現地の新聞でもフロレスの活躍が伝えられたという。

「多くの方に『凄い』という言葉をいただきました。それをプレッシャーに感じるよりは、『自分の力にしよう』、もっと注目されるような『凄い選手になりたい』と思いました」


400mは52秒82の大会新で連覇

 関東インカレは静岡国際が終わって初のレース。しかも400mは前回覇者としての出場でフロレスは注目の的だった。

 最後の直線が向かい風となる難しいコンディションながらフロレスは準決勝で大会記録(53秒45)を更新する53秒32をマーク。決勝では52秒82までタイムを伸ばして、悠々と連覇を果たした。

 サングラス姿がクールな印象のフロレスだが、レース後は、「とりあえず8点を獲得できて、日体大に貢献できて一安心です」とキュートな笑顔を見せた。優勝タイムの52秒82はセカンドベスト。「決勝はタイムより順位を狙っていました。ラストの向かい風を考えると53秒台後半かなと思っていたので、52秒はビックリしています」と静岡国際に続いて、自身のイメージ以上のタイムを叩き出した。

 なお前年の優勝タイムは54秒07(当時の自己ベスト)。タイムだけでもこの1年間の成長がわかるだろう。走りの部分ではどこが進化したのだろうか。

「去年と体重は変わらないんですけど、20kgも挙がらなかったベンチプレスが40kgまで挙がるようになるなど、特に上半身の筋肉量が増えました。腕振りが大きくなり、ストライドも広がっていると思います。それに昨年よりスピードがついたので、前半からちょっと(スピードに)乗れるようになりました。ラストは動けなくなるところなんですけど、自分はケツワレ(お尻から太腿にかけて、筋肉がひきつるような重い痛みが発生すること)もしたことがなくて。乳酸が溜まりにくい体質みたいで、それを生かせているんじゃないかなと思います」


マイルメンバーのために走った200m

 大会2日目に400mを連覇したフロレスは約3時間後の4×100mリレーにも出場。アンカーを任されると、優勝した青学大を猛追して2位でゴールに飛び込んだ。

 大会3日目は200m予選を全体トップの24秒11(+0.4)で通過した。しかし、日体大はエースを温存した4×400mリレーの予選で敗退。フロレスは「自分が走ってあげられなくて悔しいですし、申し訳ない気持ちです。マイルメンバーの思いを背負って、1点でも多く持ち帰れるように頑張ろうと思いました」と大会最終日の200mに向かった。

 準決勝でセカンドベストの23秒74(−0.1)をマークすると、決勝は追い風参考ながら23秒26(+2.5)で駆け抜けて、スプリント2冠に輝いた。

「200mの練習を積めていなかったので、どうやって走っていたのか不思議な気持ちでしたが、準決勝が流して自己ベスト(23秒73)に近いタイムが出て自信になりました。決勝も新鮮な気持ちで前半から突っ込んでいき、競っていても硬くならず、自分の走りができたと思います。追い風参考でも良い記録だったんじゃないでしょうか。今後の目標ですか? まずはお母さんに母の日おめでとうと伝えたいです」

 すべてのレースを終えたフロレスは穏やかな顔で取材に応じた。次のターゲットは6月上旬の日本インカレだ。そして現在は日本国籍取得の申請中で、7月上旬の日本選手権には「間に合う」見込みだという。

「日本国籍を取得したら日本記録に挑戦してみようと思います。そして日本選手権の優勝と世界陸上の混合マイルを狙いたい!」

 静岡国際では開催国枠エントリー設定記録(51秒74)を上回っており、9月に開催される東京世界陸上の個人出場も十分に狙える位置にいる。フロレスというヒロインが日本女子スプリント界に“新たな可能性”を呼び込みそうだ。

筆者:酒井 政人

JBpress

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