関東インカレで見えてきた今季の勢力図、充実の青学大、國學院大、創価大、城西大、東洋大ら有力校に新戦力も登場

2024年5月22日(水)8時0分 JBpress

文=酒井政人 

男子2部で圧倒的だった青学大

 毎年、5月に開催される関東インカレ。駅伝シーズンを占う意味でも重要な初夏の総力戦だ。長距離ブロックの選手が絡むのは1500m、5000m、10000m、ハーフマラソン、3000m障害の5種目。今年の箱根駅伝出場校では、城西大、東洋大、法大、早大、大東大、東海大、国士大、中大、日大、日体大、順大、明大、山梨学大が男子1部校となる(※1部は全16校。下位2校と2部の上位2校が入れ替えとなる)。

 男子2部の長距離種目で圧倒的だったのが箱根王者・青学大だ。初日の10000mは箱根駅伝2区で区間賞を獲得した黒田朝日(3年)が関東インカレの日本人最高タイムとなる27分52秒02で価値ある銅メダルに輝いた。

「狙うは優勝だったんですけど、離された後も耐えることができました。タイムは意識していませんでしたが、27分台は今シーズン出したいと思っていた記録。青学大初でもあるので、歴史を塗り替えられたのは自信につながると思います」

 黒田の快走で波に乗った青学大は2日目の1500mで宇田川瞬矢(3年)が2位(3分53秒41)、3日目の3000m障害で本間創(2年)が4位(8分54秒58)。最終日はハーフマラソンで太田蒼生(4年)と塩出翔太(3年)がW入賞(2位/1時間03分04秒、6位/1時間03分56秒)を果たすと、5000mを鶴川正也(4年)が13分36秒41で制している。

 箱根駅伝3区を爆走した太田は左腰(大転子部)を痛めた影響で今季は出遅れていた。練習に復帰したのは「1カ月半前」で、1月2日と比べて状態は、「8割くらい」だったという。それでもハーフマラソンで日本人トップを奪ったが、ラスト勝負でカマウ・パトリック(上武大2)に敗れたことを悔しがった。

「準備していないところで(スパートを)かけられて、うまく反応できませんでした。留学生でも関係ありません。優勝したかったですね。今季こそは三大駅伝にすべて出場して、しっかり優勝を狙っていきたいです」

 太田と黒田のWエースに加えて、ラストイヤーに燃える鶴川も好調。今季の青学大は昨季以上の〝爆発力〟を秘めているようだ。


強さを感じさせた有力校

 男子2部では今年の箱根駅伝で5位に入った國學院大、同8位の創価大も〝強さ〟を感じさせた。

 國學院大はエース平林清澄(4年)のエントリーを見送ったが、そのなかでも存在感を発揮した。10000mは留学生に挑んだ青木瑠郁(3年)が後半も粘って、28分16秒32で8位入賞。上原琉翔(3年)と野中恒亨 (2年)が自己ベストで9位(28分16秒76)、10位(28分17秒98)と続いた。

 1500mは尾熊迅斗が7位(3分54秒37)、3000m障害は桶田一翔が8位(9分01秒18)と1年生も入賞。山本歩夢(4年)らが出場した5000mで入賞を逃したが、ハーフマラソンは高山豪起(3年)が終盤までトップ争いを繰り広げて3位(1時間03分14秒)、辻原輝(2年)も7位(1時間04分17秒)に食い込んだ。高山は青木が日本学生ハーフマラソンを制したことが刺激になったという。

「このままでは青木に勝てないと思ったので、ジョグの量を増やすなどして、関東インカレに合わせてきました。平林さんという大エースがいますが、その下を固めていくのは、自分たち3年生。総合力で勝負できるようにしていきたい」

 創価大は10000mでスティーブン・ムチーニ(2年)が2位(27分41秒52)、吉田響(4年)が7位(28分12秒01)。3000m障害で黒木陽向(3年)が1位(8分41秒24)、齊藤大空(2年)が3位(8分51秒34)。この4人が自己ベストを更新すると、1500mで濱口直人(4年)が3位(3分54秒04)、大激戦の5000mでも小池莉希(2年)が7位(13分55秒48)に入った。

 選手層は厚くエースも健在。「山の神」を目指している吉田が、「三大駅伝のオール区間新を狙って、精一杯取り組んでいきたいです」と言えば、駅伝では〝新戦力〟となる黒木は、「箱根駅伝は10区を走りたい。小さい頃からの夢ですから」と話していた。

 男子1部は箱根駅伝3位の城西大、同4位の東洋大。それから予選会校となる東海大が熱かった。

 城西大は10000mで平林樹(4年)が28分03秒13の自己新で2位。目標は「下位入賞」だったが、徐々に順位を上げていくと、残り250mからの絶妙スパートでヴィクター・キムタイ(3年)にも先着した。キムタイは10000mで3位に終わったが、5000mは13分37秒62で優勝。ハーフマラソンは久保出雄太(4年)が7位(1時間04分04秒)に入った。

 10000mで日本人トップに輝いた平林は今年の箱根駅伝は9区で区間10位だった選手。「順位もタイムも想像していませんでした。うれしいですけど、びっくりしています」と笑顔を見せた。今季は主将としてチームを引っ張っており、駅伝シーズンに向けては、「エース区間で戦いたい」と意気込んでいた。

 東洋大は10000mで石田洸介と小林亮太の4年生コンビが自己新で6位(28分08秒29)と7位(28分12秒77)。ハーフマラソンでも梅崎連(4年)と薄根大河(2年)が2位(1時間03分19秒)と4位(1時間03分49秒)でW入賞を果たした。5000mでは西村真周(3年)が7位(13分54秒18)に入っている。

 梅崎はハーフマラソンで3年連続の表彰台。今回は日本人トップだった。

「初日に石田と小林が入賞したので、自分も負けていられないなと思いました。キャプテンとして自分がチームを引っ張らないといけない。学生駅伝は区間賞を狙って頑張りたい。箱根駅伝は3位以上が目標です」

 東海大は3年生コンビが自己新の激走でインパクトを残した。花岡寿哉が10000mで28分08秒26の5位、兵藤ジュダが5000mで13分49秒98の3位に食い込んだのだ。花岡は日本人のなかで最後までケニア人留学生に食らいつき、インターハイ800m王者の兵藤は持ち味のスピードをラストに爆発させた。

「大学に入ってから思うような結果が出てなかったので、日本人トップは素直にうれしいです。花岡と一緒に練習をしているので、自分もという気持ちになりました。Wエースはなしで、自分がエースになってやるという気持ちで、帰ってからバチバチやってきたい」(兵藤)

 今年の箱根駅伝は兵藤が1区(5位)、花岡が2区(13位)を務めた。東海大は2年連続でシード権を逃しているが、今季は3年生コンビを軸にどこまで上げていけるのか。


ルーキーたちも活躍

 関東インカレは1年生の活躍も話題になった。男子1部は10000mで玉目陸(順大)が自己新の28分13秒67で8位入賞。「3000mまでは力を使わず、5000m近くで日本人トップが見える位置に上がり、後半は粘る走りを想定していました。会心のレースになったかなと思います」と充実の表情を見せた。

 1500mは立迫大徳が5位(3分47秒34=自己新)、吉倉ナヤブ直希が7位(3分48秒11)と早大コンビが活躍。5000mでは松井海斗(東洋大)が自己新の13分51秒77で5位、岡田開成(中大)も自己ベストの13分53秒32で6位に入っている。

「1年生トップは目標にしていました。駅伝はどこの区間を走っても活躍できるような選手になりたいです」(松井)

「松井に負けましたが、入賞できたのは良かった。駅伝は主要区間を走れるように頑張りたい。箱根予選会は狙えるなら日本人トップを目指したい」(岡田)

 男子2部は5000mに出場した黄金ルーキーに注目が集まった。世代ナンバー1の折田壮太(青学大)は予選を悠々と通過したが、他選手と接触した影響で軽度の故障を発生。大事をとって決勝は棄権した。決勝の舞台で粘りの走りを見せたのが桑田駿介(駒大)だ。5位でフィニッシュして、大幅ベストの13分49秒69をマークした。

「折田君と走りたかったんですけど、入賞は自信になりました。2本連続の自己ベストもうれしかったですね。強い先輩たちに近づくためにも、5000mは13分30秒台、10000mは27分台が目標です。三大駅伝はぜんぶ狙っていきたい。箱根はできれば往路で勝負したいです」(桑田)

 学生ランナーたちの次なる戦いは6月23日の全日本大学駅伝関東学推薦校選考会だ。そしてパリ五輪選考会となる日本選手権(6月27〜30日)には関東インカレに姿を見せなかったエースたちも参戦する。

筆者:酒井 政人

JBpress

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