【香山リカ】定年後の人生をステキにする「成長戦略」とは

2025年5月26日(月)15時0分 大手小町(読売新聞)

定年退職後の男性が「()れ落ち葉」と呼ばれて揶揄(やゆ)されていた時代もあるが、女性も無縁ではない。「定年退職後に手もちぶさたの生活に陥ってしまった」という女性のトピが発言小町にあって、ドキリとさせられた。私自身、町立診療所に勤務する身なので、定年はそれほど先の話ではないのである。

トピ主さんはシングルだそうだが、未婚や既婚に関係なく、長く続けた仕事は大事な自分のよりどころ。仕事を失った女性のそれからの人生の過ごし方は、これから大きな社会問題になるだろう。「やりたいことがないと退職前に気づかなかったの?」といった厳しいレスも並んだが、日々の仕事に追われているうちはなかなか定年後まで想像できないこともよくわかる。

「パート勤務で復帰しては?」「ぜひ社交ダンスをオススメします」という提案もあった。「残りの人生は世俗を離れた生活を送る」と持論を披露した人もいる。どれも悪くないと思う。要は、トピ主さん本人が「よし、これなら」と思えることが大切だろう。

それでも、私なりの助言をしてみるとする。「自分の中で、これまで目を向けてこなかった部分の開発や成長に取り組んではどうですか?」。例えば、一人の作業が得意だった人は、あえて何かのグループに入ってみる。理屈っぽいタイプの人は音楽や美術を始めてみる。英会話を習ってきた人はアジア系の言語に挑戦——など。いずれも、仕事と同じくらいの熱意を持ってやることが大切なのだ。

人間の体力や記憶力は年齢とともに衰えるが、「心の容積」は何歳になっても増やすことができる。「ああ、自分にもこんな面があったのね」と気付いて成長できるのは、定年後のステキな過ごし方ではないだろうか。そろそろ私自身のことも考えなくては。(精神科医 香山リカ

【紹介したトピ】▽シングル女性の定年後

大手小町(読売新聞)

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