介護の助けとなる<老健>の利用方法を専門家が解説。「違いがよくわからない方も多いと思いますが、正確には介護施設ではなく医療施設で…」

2025年5月28日(水)6時30分 婦人公論.jp


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

厚生労働省が公表した「介護職員数の推移」によると、2023年度の要介護(支援)認定者数は705万人で、年々増加傾向にあります。そんななか、「介護者の人生を優先してほしい。そして在宅介護に困ったら、施設に入れることに罪悪感を持たないでほしい、入所をためらわないでほしい」と話すのは、介護老人保健施設に勤める医師・田口真子さん。今回は、田口さんの著書『最高の介護 介護のお医者さんが教える満点介護!』から一部を抜粋しお届けします。

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老健についての基礎知識


老健を利用するためにはどうすれば良いのでしょうか。

【入所条件】要介護1以上

【申請方法】ご家族がその施設に「入所したい」と直接連絡するか、居宅ケアマネージャー(ケアマネ)や病院のソーシャルワーカーを通して申し込むこともできます。

【利用料金】施設の立地や部屋の種類、本人の負担割合などにより異なります。〈1割負担の場合〉多床室利用:月に約13万円 個室:約20万円以上(いずれも医療費、オムツ代含む)

【その他の費用】外出、散髪、洗濯、洋服レンタルなど別料金(施設による)

*入所者本人や世帯収入によって、老健や特別養護老人ホーム(特養)は減免を受けることができるので、金銭的に不安な方は役所で相談してみてください(減免対象であっても、手続きをしないと減免を受けることはできません)。

【内容】入所して最初の3ヵ月は個別リハビリがほぼ毎日あります。以降は週に2回に減ります。

毎日リハビリがあったほうが施設の収入が増えるので、できるだけ3ヵ月以内の入所者が多いほうが経営的に安定します。これが「老健の入所は3ヵ月」とよく言われるゆえんで、必ず3ヵ月で退所しなければいけないということではありません。

入所施設としての老健


老健とほかの介護施設との違いがよくわからないとおっしゃる方も多いと思います。実は老健は、正確には介護施設ではなく医療施設で、常勤の医師がいます。

老人ホームにせよ特養にせよ、医者が来るのは基本2週間に1度程度です。それ以外は、看護師や介護士がケアし、何かあれば医者に電話で相談します。

しかし、老健には常勤医師がいるので、週に4、5日は施設に医者がいて入所者さんたちの日々の体調の変化に対応しています(ただし、薬や医療設備に制限があるので病院と同じ治療ができるわけではありません)。

また、常勤で管理栄養士がおり日々の栄養管理も万全です。ご存じのように高齢者の筋力維持には何より栄養管理が大切です。月に1度体重を測定し、毎日の食事量や水分量をチェックし、嚥下状態に合わせた食事形態を考えてくれます。

老健はそもそもリハビリ施設という位置づけ


老健には専門職によるリハビリもあります。入所から3ヵ月は「短期集中リハビリ」といってほぼ毎日リハビリがあり、3ヵ月を過ぎても、週に2回リハビリがあります。

注意が必要なのは、リハビリ専門職の配置義務はありますが、どのリハビリ職を配置するかは施設の裁量に任されていることです。中には言語聴覚士がいない老健もあるので、認知症や嚥下訓練を希望される時は、言語聴覚士がいるかどうか確認が必要です。


(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

老健はそもそもリハビリ施設という位置づけですから、毎日の生活そのものがリハビリです。病院と違って、立ったり座ったり、トイレに行ったりという日常生活の動作一つひとつが「生活リハビリ」であるという考え方が介護スタッフにも浸透しています。

リハビリ病院に比べてリハビリの総時間数が少ないと不満に感じる方もいますが、リハビリ病院から入所した人でも歩けるようになったりトイレが自立したりしますから、リハビリ時間のリハビリ以上に毎日の積み重ねが本当に大事なのだと思います。

※本稿は、『最高の介護 介護のお医者さんが教える満点介護!』(講談社)の一部を再編集したものです。

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