夏も注意したい“新型栄養失調”

2023年5月31日(水)11時0分 ココカラネクスト

 日々様々な商品が生まれ、飽食の時代と言われる日本において、まさかと思われる「栄養失調」。

摂取カロリーが足りているにもかかわらず、偏った食生活により、特定の栄養素が摂取できていない状態を「新型栄養失調」と呼んでいます。

これまで栄養失調は、高齢者に多くみられていましたが、食事制限やダイエットが原因で高齢者に限らず女性に多く見られるようになってきています※。

また、近年の外食控え傾向から、テイクアウトやデリバリーなどの中食利用が増加し、それらをよく利用している若い世代、子育てに手のかかる世帯、フルタイム勤務の多い在宅勤務利用者も注意が必要と考えられます。

本記事では、静岡県立総合病院リサーチサポートセンター臨床研究部長の田中清先生に、どのような症状が出てきたら新型栄養失調のサインなのか、食生活でどのようなことに気を付けるべきなのかについて監修いただきました。

新型栄養失調の原因とは

■新型栄養失調の原因と注意すべきタイミング

第2次世界大戦後の食糧難の時代には、食事によるエネルギー摂取量そのものが足りておらず栄養失調になっていました。

しかし、現代の日本において、そのようなことは稀です。

一方で、特定の栄養素が不足することにより、その結果健康障害を起こすことは今でも珍しくはなく、新型栄養失調と呼ばれ近年増えていると言われています。

栄養素というのは、直接的にエネルギーの源となる、たんぱく質・脂質・炭水化物(エネルギー産生栄養素)と、その有効利用を助けるビタミン・ミネラルに分類することができます。ビタミン・ミネラルの中には、様々な食品に含まれているものもあれば、特定の食品に多く含まれるものもありますが、それらを意識して、毎回の食事を摂ることはできません。

しかし、特定の食品ばかり食べる、あるいは特定の食品を避けるのは、ビタミン・ミネラル不足の危険性を増加させてしまいます。

ビタミン・ミネラル不足にならないようにするには、できる限り様々なものを食べることがお勧めです。

外食・中食機会の多い方もいらっしゃると思いますが、好きなものばかりに偏らず、毎回違うメニューを選ぶ、もしくは、単品ではなく一度に多くの種類を食べることができるような定食を選ぶなどの工夫が望ましいです。

これからの季節、冷たいあっさりとした食事をとることが増えてきますが、前述の通り毎食同じものを食べてばかりいると栄養が偏り、体が疲れやすくなるので注意しましょう。

こんな症状の人は気を付けよう!

■「不眠」「めまい」「頭痛」といった体の不調は新型栄養失調が原因かも?

それでは、新型栄養失調の人にはどのような症状が見られるのでしょうか。昔は、非常に重症のビタミン欠乏症が見られました。

例えばビタミンB1欠乏の結果、脚気が起こり、心不全や神経障害のような重大な異常が見られ、日本の国民病といわれるほどの重大な社会問題でもありました。

しかし、新型栄養失調の場合、かつての重症のビタミン欠乏症ほどの欠乏ではないので、典型的な症状は起こりません。

つまり、この症状があれば新型栄養失調だと断定できるような症状はありません。

「不眠」「めまい」「頭痛」「足のむくみ」「疲れやすい」、これらは非常に多くの人に良く見られる症状で、様々な原因によって起こりますが、もしかしたら新型栄養失調が原因かもしれません。

新型栄養失調特有の症状はありませんが、何となく調子が悪いのが、新型栄養失調のせいかもしれません。

繰り返しになりますが、様々な種類の食品をバランスよく食べて、新型栄養失調を予防することが重要です。

※厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

<監修者>静岡県立総合病院リサーチサポートセンター 臨床研究部長 田中清(たなか きよし)先生

【監修者総括】
新型栄養失調は、特徴的な症状がなく、何となく調子が悪いというのがそのせいということは十分あり得ます。
特徴的な症状がないということは、診断が難しいということでもあります。
何となく疲れやすいからといって、病院を受診して、片っ端から血液中ビタミン濃度を測ってもらうというのも、現実的ではありません。
ということは、予防が何より大切です。ビタミンは13種類もありますので、それぞれのビタミンが豊富な食品を意識して食べるというのも、現実的には困難です。

最初にも述べましたが、偏った食事をしない、同じものばかり食べない、できるだけ多様性を持たせて、いろんな種類の食品を食べるというのが、最善の新型栄養失調の予防だと思います。

【監修者プロフィール】
■所属
静岡県⽴総合病院
リサーチサポートセンター 臨床研究部⻑

■所属学会
・日本病態栄養学会(学術評議員)
・日本ビタミン学会(理事)
・脂溶性ビタミン研究委員会(委員)
・ビタミン B 研究委員会(参与)
・日本栄養学教育学会(理事)
・日本栄養改善学会(評議員)
・日本骨粗鬆症学会(評議員)

■主な職歴
・1977 年 :京都大学医学部卒業
・1977〜1979 :天理よろづ相談所病院 内科系研修医
・1983 :京都大学医学部附属病院 医員
・1984 :天理よろづ相談所病院 内分泌内科医員
・1984〜1986 :米国オレゴン大学医学部内分泌内科 Research Associate
・1986〜1990 :静岡県立総合病院 核医学科・内分泌内科 副医長
(1988 医長)
・1990〜2000 :京都大学放射性同位元素総合センター・京大病院 助手
・2000〜2004 :甲子園大学栄養学部 教授
・2004〜2018 :京都女子大学家政学部食物栄養学科 教授
・2018〜 :神戸学院大学栄養学部 教授
・2023〜 :静岡県⽴総合病院リサーチサポートセンター 臨床研究部⻑

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