鴨なき世界の鴨の味【家そば放浪記】第246束:ツルハドラッグで買った、はくばく(霧しな)『「蕎麦屋」の鴨だしせいろ蕎麦(つゆ付き)』408円(1人前136円)
2024年7月24日(水)18時0分 ロケットニュース24
これまで3店舗ほどで見かけてきたので、けっこう売れ線だったりするのかしら?
それにしても、「つゆ付き」である。過去にも1度だけつゆ付きの干し蕎麦(第205回:小山製麺『もりおかわんこそば そば処 東家(つゆ付)』)をとりあげてきたが、なんと今回は「鴨だし」なのである。
しかもパッケージをひっくり返してビックリ仰天。
販売者「はくばく」製造者「霧しな」のゴールデンコンビやんけ! 当連載において最も早く殿堂入りをキメた『元祖乱れづくり 木曽路御岳そば』のコンビやんけ!
そんな彼らが大事にする「こだわり」が、裏パケには2つ書いてある。
なんでもつゆは、国産合鴨を6時間抽出し、かつお節、さば節、利尻昆布の出汁でブレンド。葱の風味さえ広がる芳醇な味に仕上がってるそうな。
対する麺は、風味あるそば粉を使った、細くてシャッキリ系の蕎麦らしい。
とりあえずは、麺を茹でますか──って
予想以上に細い!
ともかく、デカい鍋に湯を沸かし……
5分ゆでて……
ハイ完成!
して、そのお味は──
まずはそのまま食べるけども……
どうしたんだ。一切の遠慮も忖度もなく言うぞ。
麺を捨てたのか。麺という勝負を捨てたのか。いつものはくばく(霧しな)じゃない感じがする。
なんとなく、うわのそら。つゆに気をとられすぎたか? 柔いというか、パワーが弱いというか。
ものすごく乱暴な例えをすると、食感やコシは、チキンラーメンの麺みたいな感じがする。麺だけなら「家」だ。
だが、この商品は「鴨だしせいろ蕎麦(つゆ付き)」であり、つゆなしで食べるのはフェアではない。
よって、つゆと100mlの熱湯をあわせて作ってみた。それっぽい油が浮いている。
まずはひとくち……
なるほど。
つゆをそのまま飲んだ感想は、まさに「芳醇」。鴨だし感は、ある。
でも……さびしい。イマイチ実体がいない。何かが聞こえたと思ったら、目の前に口を閉じたいっこく堂がいるような。
さらにこれを現実世界にたとえるならば、VRゴーグルをかぶって空中にキスしているみたいな虚しさがある。
この世から鴨がいない世の中になってしまったら、きっと鴨せいろのつゆはこうなるのだろうな……とも思った。
水もガソリンも満足にないマッドマックス的な砂漠の世界で「鴨せいろ」を食べるとしたら、きっと「鴨なしの鴨だし」になるのだろうな……とも。
だが!
こんなことが書いてある。そりゃそうだよ。メーカーとしても、入れてほしいに決まってる。だってそれが鴨南じゃん。
でも安心してほしい。我が家は、いつなんどきでも鴨南蛮そばが作れるよう、常に冷凍鴨肉ならびに冷凍ネギは切らしていない。
ただ、「焼いてから加える」と書いてあるけど、お蕎麦屋さんで修行して調理師免許も取った私としては、そのやり方では納得できない。
「焼いてから(つゆに)加える」のではなく、
こっち(焼いたほう)に、つゆを入れる……。なぜならば、焼いた鴨肉からも良質かつウマミたっぷりの油が出ている。それを完全につゆの中にとりいれたいからにほかならない。
そしてできあがった「鴨せいろのつゆ」がこちらなのだが……
そりゃうまいよ。だって「芳醇スープ」に、「ホンモノ(カモネギ)」が入っちゃってるんだもん。
これを食べてしまったら、なおさら強く感じるけども、もしもホンモノが入っていなかったら、かなりせつない戦いになる気がする。
鳴物入りで完成した商業用の雑居ビルなのに、テナントが1つも入っていない……ってくらい寂しい。
それに対して今回のコレはフルパワー。冷静に考えたら「芳醇スープ」も不要なんじゃないかってくらいのフルパワー。
そりゃ、ここまで作ったら「外」になる。完全にウマイけど、これはフルパワーだからこそなのでは……と思ったりも。
結論。個人的には、やはり麺の弱さが気になった。もうすこしストロングな麺で勝負してもよいのでは……と。
事実、今回の蕎麦以外の蕎麦(しかも太め)を「芳醇フルパワー鴨せいろつゆ」で食べてみたら、けっこう良かった。
あくまで好みの世界だが……ちょっとこの麺と、鴨だしの組み合わせは、私としては、なんとなくチグハグしているような感じがした。
「家そば」なのか、「外そば」なのか。
作り方と食べ方によって変わるこちらの蕎麦。悩み抜いた末の結論は、記事下のランク表にて。
執筆:干し蕎麦評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24
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