神奈川のご当地ラーメン「サンマーメン」はなぜ愛されるのか?『サンマー麺の会』代表に歴史や秘密を聞いてみた!

2023年11月27日(月)10時50分 食楽web


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●神奈川県のご当地ラーメンとして知られる「サンマーメン」の歴史とは? 意外と知らない話を、『かながわサンマー麺の会』代表に聞いてみた!

 神奈川県をはじめ関東圏ではよく知られる「サンマーメン」。「秋刀魚(さんま)が乗ったラーメン?」と誤解を受けることが多いですが、実際は醤油ベースのラーメンの上に、シャキシャキの野菜と肉をあんかけにして乗せたもので、これからの寒い季節は特に美味しく感じる神奈川県のご当地ラーメンです。

 しかし、この「サンマーメン」の存在・味は知っていても、どうして神奈川に根付いたのか、そしてその名前の由来など、よくよく考えてみると知らないことが多いです。そこで今回は新川崎にある名店『味の散歩 中華村』(以下、『中華村』)で絶品の「サンマーメン」をいただきつつ、同店オーナーであり、『かながわサンマー麺の会』の代表でもある久保田角男さんに、その秘密を教えていただきました。

『中華村』でも一番人気は「サンマーメン」だった

 絶品の「サンマーメン」をいただくため、そして久保田さんに話を聞くために新川崎の『中華村』へ。店の外には「サンマーメン」のノボリが掲げられ、店内に入っても複数の中華メニューがありながらも「サンマーメン」の激推しが著しく「さすが『かながわサンマー麺の会』代表の店だ」と感激しました。

 久保田さんに話を聞く前に、まずは「サンマーメン」で腹ごしらえ。オーダーから数分で着丼したそれは、まさに「サンマーメンの優等生」とでも言うべき理想的なビジュアルです。


『中華村』の「サンマーメン」880円(ランチ)・980円(夜)

 もやし、白菜、ほうれん草、にんじんなどの野菜類と肉が、麺と合うように細くカットされています。野菜のシャキシャキとした食感、香ばしい味付け、そしてトロトロのあんかけのおかげで、体が芯から温まります。黄色い麺との相性も抜群で、やはり見た目だけでなく、その味わいも「サンマーメンの優等生」。最後のスープまでかなり美味しくいただくことができました。


見た目はもちろん、その味わいも「サンマーメンの優等生」的です

「肉そば」の代替メニューとして誕生した「もやしそば」がルーツ


『かながわサンマー麺の会』代表で、『中華村』のオーナーでもある久保田角男さん

『中華村』の絶品「サンマーメン」でお腹を満たしたところで、同店のオーナーであり、『かながわサンマー麺の会』代表の久保田角男さんに、「サンマーメン」の歴史について話を聞きました。

「『中華村』はもともと新川崎の北加瀬という場所でうちの父がやっていた店がルーツです。1963年に開店しているので、創業60年になります。当時から、今の『サンマーメン』にやや近いメニューは出していて、それが『もやしそば』でした。もともと神奈川には中華料理店が多いのですが、先代やさらに古い日本人が、横浜で修行した職人が各エリアで開業して広まったというものです。『もやしそば』もこの流れで広まっていったんじゃないかと思っています。

 諸説あるのですが、私が参加している組合の前理事長によると、かなり昔から『サンマーメン』というメニューが存在していたそうです。『肉絲麺(ルースーメン)』という『肉そば』が一番人気だったそうですけど、肉という食材を使うことからどうしても高くなってしまう。庶民はなかなか手が出ないメニューでもありました。

 その代替的なメニューとして、中華職人さんたちが賄いで生み出したのが『もやしのあんかけ麺』で、さらに『もやしのあんかけ麺』と肉とを合体させたのが『サンマーメン』だと言われています。この誕生は1947〜1948年頃と言われています」(『中華村』久保田さん)

「サンマー」の語源と定義とは?


ローソンとコラボして生まれた『中華村』の「サンマーメン」

「サンマーメン」の成り立ちがよくわかった一方、さらに気になるのが「サンマー」という名前。このことについても久保田さんに聞きました。

「よく『秋刀魚(さんま)が乗っているラーメンか?』と誤解を受けることがありますが、『サンマー』とは広東語の『生馬』と書きます。その意味『生(サン)』は、新鮮でシャキシャキしているという意味で、『馬(マー)』は上に乗せるという意味です。つまり、新鮮な野菜や肉をサッと炒めてあんにし、醤油ラーメンの上に乗せることから『サンマーメン』と呼ばれるようになりました」(『中華村』久保田さん)

 後に「サンマーメン」は各中華料理店に伝承され、もやし・肉だけでなく他の野菜がふんだんに使われるようになり、進化していったと言います。

「でも、お店によって味はだいぶ異なります。伝承を受けた師匠の味をルーツにしていますし、どのお店の店主も『俺はこれでいく』『俺はこれが一番うまいと思う』といったポリシーのもとで『サンマーメン』を提供していますから。ただし、『かながわサンマー麺の会』で定義づけている『サンマーメン』は、『5色の野菜・肉』を使うというもの。栄養も考え、もやしを含めた『白・黒・赤・黄・青(緑)』を食材とし、組合に加盟する各店の皆さんにがんばって広めていただいているところです」(『中華村』久保田さん)

 ちなみに『かながわサンマー麺の会』の代表でもある久保田さんのお店『中華村』では、その定義にきちんと基づいた「サンマーメン」を提供しており、その信頼感からローソンとのタイアップで、同会名義の監修商品も販売したほど。言い換えれば、定義に忠実な「サンマーメン」を食べたいのであれば、『中華村』に行くと良いとも思いました。

「サンマーメン」は「かっぱ寿司」「ちらし寿司」の親戚的存在

 最後に久保田さんは「サンマーメン」の成り立ちは、「かっぱ寿司」や「ちらし寿司」の成り立ちに近いように思うと結んでくれました。

「海で働く人たちが体をいっぱい動かし魚を捕っても、そんなに頻繁に『にぎり寿司』を食べられるわけではなかったと思います。でも、それに似たものを食べてみたいと。そこで考案されたのが安価で済むきゅうりを巻いた『かっぱ寿司』でした。あるいは、『にぎり寿司』を作る上で出た端々の刺身をシャリの上に散らしてできた『ちらし寿司』も、『お金がなくても美味しい刺身でお腹を満たしたい』という成り立ちがありました。

『サンマーメン』もこれと同じように思っています。前述の通り、当初は中華職人の賄いだったものが、長い時間をかけて一般に広まっていき、今では立派なメニューとして確立されていますから。言わば『かっぱ寿司』と『サンマーメン』は遠い親戚のようなものなんですよ(笑)。まだ神奈川エリアで『サンマーメン』を食べたことがない方はぜひ一度食べていただきたいですね。各店の食べ比べも楽しいと思いますよ」(『中華村』久保田さん)

まとめ

 興味深い話をとてもわかりやすく教えてくれた久保田さん。特にこれからの冬時期に食べれば、体を温めてくれ、野菜たっぷりで健康面でも良く、そして何より美味しいです。ぜひ一度神奈川エリアであなた好みの「サンマーメン」を見つけてみてください!

(取材・文◎松田義人)

●SHOP INFO

店名:味の散歩 中華村

住:神奈川県川崎市幸区南加瀬4-26-1
TEL:044-599-0302
営:11:30〜0:30
休:水曜

『かながわサンマー麺の会』公式サイト
https://sannma-men.com/index.html

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