ハワイ観光の新トレンド|ゼロ・ウェイストに注目すると、今のハワイが見えてくる

2022年6月20日(月)16時0分 ソトコト

海洋生物を傷つけるプラスチックゴミと太平洋ゴミベルト





日本を含め、世界で自然環境に放置されたプラスチックゴミのほとんどは、最終的には河川を漂い海に流れ着きます。そして海流に乗り、やがては黒潮、北太平洋海流、カルフォルニア海流、北赤道海流という4大海流の渦の中心に集まります。こうして集まった「海洋プラスチックゴミ」は、島のような固まりとなって漂います。
世界で最も大きな海面浮遊ゴミの渦は、ハワイ州とカルフォルニア州の間にある「太平洋ゴミベルト」です。主にプラスティックゴミで構成される太平洋ゴミベルトの大きさはなんと、日本の国土面積の4倍の約160万平方メートル。そしてこの太平洋ゴミベルトのすぐそばにあるのがハワイ諸島です。
世界の海洋プラスチックゴミは、2015年時点で合計1億5,000万トン(参照出典:Stemming the Tide:
Land-based strategies for a plastic- free ocean)と推計されています。『アメリカ海洋大気庁(NOAA)』によると、そこに毎年800万トンが新たに流入しているとも。単位が大きすぎてピンとこないかもしれませんが、800万トンとは重さにして、ジェット機5万機相当だそうです。
海洋プラスチックゴミの問題は、美しい海やビーチの景観を損なうだけではもちろんありません。ウミガメやイルカなどをはじめとする海洋生物に絡まってケガをさせたり動けなくしたり、クラゲなどと間違えて食べてしまったりすることも大きな問題です。プラスチックは胃腸で分解されないので、うまく排出できなければ死に至ります。


人間にも悪影響を及ぼす可能性 マイクロプラスチックによる海洋汚染





また、マイクロプラスチックの問題も深刻です。マイクロプラスチックとは直径5ミリメートル以下のプラスチックで、捨てられたプラスチックゴミが海岸に漂着し、波や砂にもまれ、強い紫外線にさらされて細かくなります。
プラスチックが分解されるための時間はものすごく長く、たとえばペットボトルは450年、プラスチックバッグ(レジ袋)は10〜20年かかると言われています。微生物等によって分解されないからです。
そのためプラスチックは細かくなってもいつまでも残り、海中のゴミとなります。海の最深部に大量のマイクロプラスチックが積もっているという、近年の研究論文もあります。
海水に混ざったマイクロプラスチックは、海で暮らすあらゆる生物に誤飲のリスクをもたらします。マイクロプラスチックももちろん消化・排泄しづらいため、誤飲すれば胃腸に問題を起こして死に至る可能性が高まります。
プラスチックゴミは人間にも悪影響を及ぼすと考えられています。小さな魚が食べ、その魚をウミドリや大型の魚が食べるといった食物連鎖を通じて、私たちの体内にも蓄積されるリスクが指摘されています。またプラスチックに含有されている有害物質が溶け出したり、マイクロプラスチックに有害物質が付着し運ばれたりすることによる、健康への影響もあると考えられています。


旅行者必見! プラスチックゴミを減らすためのハワイのルール





そんなハワイでは、マイクロプラスチックによる海洋汚染も深刻で、脱プラスチックへの意識が高まっています。使い捨てプラスチックのレジ袋の配布・販売は以前より禁止され、ロコたちはエコバックを携帯するようになり、ますます環境への意識が高まりました。
さらに、レストランなどを含む食品販売業者へ「石油系プラスチック製の使い捨て容器やビニール袋を使用し食品を提供することを禁止」とする条例が施行され、プラスチック製のカトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン、ストローなど)、発泡スチロールが含まれているすべての商品の販売・提供が禁止されているほか、生肉や未調理の農産物などに使用されるプラスチック製の使い捨て容器使用も完全廃止になっています。


カイルア地区|ゼロ・ウェイスト・ショップやエコショップが続々オープン





市民の取り組みについてもご紹介しましょう。ホノルルから車で30分ほどのカイルア地区に、2020年6月にオープンしたのが『Protea Zero Waste Shop(プロテア)』。ハワイ初のゼロ・ウェイスト・ショップとして話題になりました。シャンプーやコンディショナー、ボディソープ、日焼け止めなどのボディケア商品、洗濯用洗剤やキッチン用洗剤、さらには美容液などの化粧品を、量り売りで購入することができます。





バス用品やキッチン用品、化粧品など、液体のものに限らず「リフィル(詰め替え)」してゴミを減らすことを目的としたお店で、空ビンを持参あるいは購入して、詰めた分を購入します。オーナーはハワイの大学で環境学の学位を取得したローリー・マリーニさん。これまでもさまざまな環境問題組織でボランティア活動を行い、州議会や市議会でハワイの環境問題についての提唱などを行っています。
プロテアの隣のジュエリーブランド直営店『Leinaiʻa(レイナイア)』では、ビーチ・クリーン・アップ活動で集めたマイクロプラスチックを再利用したジュエリーコレクションや、しおれて散った花を拾い、押し花にしてレジンで固めたボタニカルコレクションなど、サスティナブルなシリーズにも力を入れています。





製作しているのは、ワイキキで会社員をしていたマキ・ミナモトさん。趣味で作っていたジュエリーを友人にプレゼントしていたところ評判になり、実店舗を持つまでに。友人と行っていたビーチ・クリーン・アップでマイクロプラスチックジュエリーの制作を思いつき、マキさんの手間と工夫で人気のラインになっています。


カイムキ地区|意識とこだわりをもった オーナーのセンスが光るショップ





ワイキキから車で10分程度、グルメタウンとしても有名なカイムキ地区は、こだわりのあるショップが続々オープンしている最新ホットスポット。そのメインストリートに、オアフ島ではプロテアに続き2軒目となるゼロ・ウェイスト・ショップ『Keep It Simple(キープ・イット・シンプル)』が2020年末にオープン。





プラスチックを使わない商品を探そうとしてもなかなか見つけることのできなかった、オーナーのジルさんとハンターさんが、「それならば」と自分たちで作ったショップです。プロテアでは、洗剤やボディケア商品、キッチン周りにフォーカスしているのに対し、キープ・イット・シンプルではルームスプレーなどに加え、フードの取り扱いもあり、幅広い品揃えによって差別化を図っているそうです。
環境に優しい商品を集めた家庭用品&ギフトショップ『Every Day Better by Green Meadows(エブリデイ・ベター・バイ・グリーン・メドウズ)』はコロナ禍前の2019年にオープン。プラスチック製のパッケージを極力使わない商品、ナチュラルな素材でできた商品が多くあります。





オーナーのケイティーさんは公立学校の教師でしたが 意を決してキャリアをチェンジ。ショップを通じて環境に優しい家庭用品やギフトアイテムを提案し、生まれ育ったカイムキの地域社会に意識の変化を起こしたいとのことです。


エコツアーもいいけれど ロコたちのビーチ・クリーン・アップに参加するも楽しい!





ゼロ・ウェイストに加えてアップサイクルという考え方も、ハワイでは盛んです。ゴミとして捨てられる運命だったものに、新しい息吹を与え、価値を与えて新しい商品として蘇らせる。レイナイアのマイクロプラスチックを使ったジュエリーもアップサイクル品です。
ハワイ島のヒロで生まれたブランド、『Upcycle Hawaii(アップサイクル・ハワイ)』も、ビーチクリーンをして拾ってきた漁業用網やロープ、商品包装用のビニール袋を集めて材料として再利用し、ポーチ、バッグ、ジュエリーなどのハンドメイド商品を作っています。





アウトドアが好きで、海岸線に流れ着くゴミやリーフ(岩礁)の変化など、環境の変化に気づくようになったオーナーのマッティさんは、2014年から徐々にクラフトフェアに出店するようになり、2015年にすべての商品がゴミを再利用してつくられるショップを開始。オンラインショップの他、州内のいくつかの店舗で商品を取り扱っています。
またこれらのオーナーのように、ビーチ・クリーン・アップに参加すると、今のハワイの自然環境の現状を知ることができるうえに、ハワイのコミュニティに触れることもできます。ハワイ各地では定期的に非営利団体などによって、ビーチ・クリーン・アップが行われています。誰でも無料で参加できることが多いので、普段の旅行では味わうことのできない体験をしてみませんか?


※ビーチ・クリーン・アップを行っている団体の情報
https://www.allhawaii.jp/malamahawaii/travelers_can_do/116/


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次回は、地産地消とメイド・イン・ハワイについて。ハワイならではのおみやげをご紹介します。

ソトコト

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