フジテレビ「テラスハウス」炎上で命を落とした木村花さんの母が慟哭の告白「もういまさら、何をどうしても、花がかえってくるわけではありません」

2025年4月25日(金)18時0分 文春オンライン

『テラスハウス』に出演した木村花さんが、自死した事件から約5年。だが、フジテレビの責任を問うた裁判は遅々として進まない。さらに法廷でフジは驚くべき主張を繰り返していた。母・響子さんが明かす慟哭の闘いの記録。



亡くなった木村花さん


◆◆◆


木村響子さんが娘の死を巡り、フジテレビを提訴


 2023年7月12日、東京地方裁判所第530号法廷。


「どうしたら花を苦しみから助けることができたのか、今もずっと考え続けています。夢を持った若い人たちの、夢が搾取され、人がモノのように消費されていくような番組の作り方は、到底許せません」


 法廷に立って意見陳述するのは、原告側の木村響子さん。20年5月23日『テラスハウス』に出演していた娘の木村花さんが22歳の若さで自ら死を選んだ。響子さんは、番組を制作したフジテレビと制作会社に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求めた。その訴訟の第1回口頭弁論で響子さんは涙ながらに、言葉を絞り出していた。


「番組作りや、放送にかかわったすべての人に問いたいです。日本中、世界中から攻撃されたのがあなたの愛する人だったとしたら、出演を続けさせましたか。医師の診断を必要としませんでしたか。炎上は収まりつつあったのに、YouTubeや地上波で放送を続けましたか。木村花という1人の人間の人生について本気で考えてくれたことは、一度でもありましたか」


 最後に裁判官に向かってこう訴え、陳述を終えた。


「裁判官の皆さん、もういまさら、何をどうしても、花がかえってくるわけではありません。せめて、花が生きることができたはずの社会になってほしいと願っています。そのためには、被告らが真摯に問題と向き合い、過ちを認め、改善することが不可欠です。(中略)愛する人の命が理不尽に奪われた時、残されたものに出来ることは、声をあげることだけです。みなさんが私たちの声に耳を傾けてくださることを心から願っています」


若者の恋愛模様を追った人気番組


『テラスハウス』シリーズは、共同生活を送る若者六人の恋愛模様を追ったリアリティ番組である。


「12年に深夜枠で放送開始。ネット上の若者の間で盛り上がり、低迷するフジにとって重要なコンテンツとなった。15年からNetflixで世界190カ国に配信され、第8シーズンまで続いていました」(文化部記者)


 花さんはプロレスラーだった響子さんの影響を受け同じ道を歩んでいた。彼女がオーディションを受け出演したのが、『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』だった。


誹謗中傷後のフジの対応が問題視された


 死へと至る発端は第38話「Case of The Costume Incident」(コスチューム事件)。同居人の男性が共用の洗濯機で花さんのプロレス用コスチュームを誤って洗濯し乾燥。衣装が縮んで着られなくなってしまう。それまでの男性の言動に不満を募らせていた花さんは彼が被っていた帽子をはたき落とす。


 20年3月31日にNetflixで先行配信されると、SNS上で花さんの行為をめぐって炎上。同日、大量の誹謗中傷を受けた花さんはリストカットによる自殺を図ったが一命をとりとめた。


 フジの責任が問われているのはこの後の対応だ。花さんは自傷行為を繰り返し危険な状況に陥っていたにも関わらず、誹謗中傷対策や花さんに精神科を受診させるなどの心のケアを十分に行わなかった。それどころか、5月に「“コスチューム事件”その後」と題した未公開動画を、YouTubeで3本配信し事件を蒸し返す。5月19日に第38話の地上波放送を行い、誹謗中傷が再燃。その4日後、花さんは自死に至った。


 小誌は同年7月9日号から4回にわたり、花さんを追い込んだフジの責任を追及。番組は「台本は一切ございません」「共同生活する様子をただただ記録したもの」と、ことさらに強調していたが、「コスチューム事件」の裏で“やらせ”演出があったことを、響子さんや花さんの友人、共演者たちの証言を基に詳報した。


「ギリギリで生きてます」


 花さんが共演者や友人に送ったLINEは“やらせ”を裏付けていた。


〈スタッフにカメラの前でキレろって言われて〉


〈これも撮る前に●さん(ディレクター)にめちゃ煽られたからね、、〉


〈あれは本当じゃないから〉


花さんが、フジと制作会社と交わした“奴隷契約書”


 さらに、未公開動画の撮影では、花さんが過呼吸になった後も撮影を続行していた。こうした非人道的な制作に花さんが従わざるを得なかったのには“奴隷契約書”の存在がある。


 花さんがフジテレビと制作会社と交わした「同意書兼誓約書」。その中に〈撮影方針(演出、編集を含みます。)及び待遇等本番組を製作及び配信・放送するために必要な一切の事項に関して、全て貴社らの指示・決定に従うことを誓約します〉との1文がある。しかも誓約条項に違反し放送・配信が中止になった場合、1話分の平均制作費を損害の最低額とし〈無条件で賠償する〉とある。フジら制作側と出演者の間で支配・従属性が極めて強い契約が結ばれていたのだ。

〈 「あの人たちは、出演者のことを人間だと思ってない」木村花さんの母が訴えるフジテレビ“隠蔽と責任放棄”の壮絶な実態《テラスハウスとだれかtoなかいは同じプロデューサー》 〉へ続く


(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年2月27日号)

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